• instagram
  • youtube
  • rss
スタイリッシュに速く走りたい、すべてのランナーへ
  • instagram
  • youtube
  • rss
COLUMN

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.10(最終回)

2022.09.29
Shun Sato

プロランナー神野大地選手に始まり、これまで9回にわたり市民ランナーの失敗レースを取り上げてきた本企画だが、どれも次につながる教訓があった。最終回となる上田さんは、いったいどんな失敗をして、どんな教訓があったのだろうか? 読者の皆さまのランニングライフの一助になれば幸いです。

上田早智子(市民ランナー) 「継続は力なり」   


レース:大阪国際女子マラソン(2020年1月26日)
タイム:3時間01分15秒(目標タイム:2時間59分00秒(サブ3))
自己ベスト:2時間59分20秒(大阪国際女子マラソン/2022年1月30日)

■Before the start (スタート前)
2020年の大阪国際女子マラソンでサブ3に挑戦したのですが、この2年前の大阪女子マラソンで3時間6分というタイムを出すことができたのです。それまでのマラソンの持ちタイムが3時間25分だったので、19分タイムを短縮できたのですが、正直驚きでした。私は、6年前、失恋からラニングを始めました。毎日悲しくて、何も手につかないし、そんな自分が大嫌いで、こんな毎日を過ごしていたらダメになると思っていた時、徳島マラソンのポスターを見て、やってみようと思いました。これを完走できたら自分に自信を持てるのかなと思って、半年間、サブ4を目指して頑張ったらサブ4を達成できたのです。その時から、ひとりで練習していて、インスタやネットから速いランナーの練習方法とかを見て練習を組み立ててやっていたのですが、インターバルとかはしていなかったのです。それを取り入れて練習したら一気に走力が上がりましたし、体重を4キロ落としたのも大きいかなと思います。サブ3まで残り6分のところまで一気に上がったので、すぐにでも(サブ3は)行けるんじゃないって周囲の人にも言われましたし、私自身も余裕だねって調子に乗っていました(笑)。

■Start line(スタート)
スタート地点に立った時は、自信満々ではなく、もうやるしかないって感じでした。実は、レース前のハーフではサブ3の目安となる90分を一度も切れていなかったのです。ペース走もキロ4分25秒では30キロはいけるのですが、レースペースの4分15秒では15キロしか走れていませんでした。距離もスピードが足りないなという感覚があったのですが、それでも本番は何とかなると思ってスタートラインに立ちました。

■スタート~30km
スタートから30キロまではめちゃくちゃ順調でした。アドレナリンが出ていたせいもあって、ほとんど疲れも感じず、30キロまでは余裕のサブ3ペースでいけました。レース前はMペースでのペース走を十分にできていなかったのですが、「あれ、このままいけるんじゃない?」というくらい走っていて楽しかったですね。

■30km~35km
30キロを超えたら、ピタっと足が止まりました。よく言われる足が売り切れの状態で、何かが切れてしまった感覚でした。ここまでサブ3のペースギリギリで貯金のない状態で来ていたのですが、31キロからのペースを見たら4分25秒まで落ちていました。Mペースの4分15秒をキープできなくなってきたので、このままだとサブ3できないかもしれない。そんな諦めがちょっとよぎりましたが、ペースを落とすのではなく、今できる最大のペースを維持していこうと切り替えて走りました。

■35km~40km
35キロからは、自分のことよりも私を応援してくれる仲間の顔が思い浮かんで、「ごめんね!」っていう気持ちで走っていました。サブ3をするって宣言していたので、みんな、追跡ナビで追ってくれていたのです。そこで、私のラップが落ちているのを見て、難しいなと思っていたと思うのですが、みんなをがっがりさせてしまったことが悲しくて・・・。ここからキロ4を切るくらいでいけばサブ3の可能性はあるけど、足は重くなるばかりで、「諦め」の2文字との戦いでした。

■40km~Finish
大阪国際女子マラソンは、最後、ヤンマースタジアム長居に入ってゴールなのですが、スタジアムの入り口のところに時計があるんですよ。ちょうどスタジアムに入る時に見たら2時間59分10秒だったのです。「あれ、このままスタジアムに入ればサブ3できるよ。ガーミン間違えてるじゃん。」と思ってスタジアムに入ったら、まだ400mあって(苦笑)。以前、走った徳島マラソンはトラックに入ってすぐにゴールだったので、同じだと勘違いしてしまったのです。ラスト400mを走っていたら、その途中で競技場の時計が3時間を超えたのです。その時、応援してくれた人たちから「あぁー」っていう声が聞こえてきました。大阪国際女子マラソンはサブ3を狙うランナーが多いので、応援している人たちも同じ気持ちになったのだと思いますが、私はつらかったですね。最後は、泣きながらゴールしました。

■大阪国際女子マラソン2020と大阪国際女子マラソン2022の比較

  大阪国際女子マラソン2020 大阪国際女子マラソン2022
 5㎞  21:36 21:03
 10㎞  21:02 20:52
 15㎞  21:01 21:02
 20㎞  21:05 21:17
 ハーフ  1:29:20 1:28:49
 25㎞  21:05 21:11
 30㎞  21:17 21:14
 35㎞  21:48 21:28
 40㎞  22:29 21:49
 Finish  09:52 09:24
Result 3:01:15 2:59:20

教訓(1)「レースは甘くない」
レースの前の練習ではサブ3のペースで15キロしか走れていなかったのに、いけるでしょうって楽観的に考え、挑戦しました。やっぱりサブ3は甘くなかったです。すべてに最善を尽くして準備しないとマラソンで結果を出すのは難しいと実感しました。実際、3時間6分を出した時は、体重が42キロで、この時は45キロになり、体を絞り切れていなかったのです。根本的にロング走も足りなかったですね。3時間6分を出した時、ハーフはかなりの本数をこなしたのですけど、30キロ走は1度しかやらなかったのです。それでも19分もタイムを縮められたので、それで十分だと思い、この時も30キロ走は一度しかしませんでした。マラソンを甘くみたら痛い目にあうというのをこの時、実感しました。

教訓(2)「継続は力なり」
ランニングを始めた頃から毎日、コツコツと走ってきました。本当に小さなことの積み重ねですが、何年もつづけていくと大きな力に成ると思いましたね。私は、特にチームには入っていなくて、マラソンを始めた時からずっとひとりで練習をしてきました。周囲の人からは「ひとりで大変!」「速くなるにはチーム練をした方がいいよ。」と言われるのですが、マラソンを始めた時からひとりで、つらいポイント練習もゼーハーしながらこなしてきたので、特にチームでやる必要性を感じなかったのです。この2年後の今年1月に大阪国際女子マラソンでサブ3を達成できたのですが、この時もひとりで練習していました。レースの2週間前まで10週連続で仕事前にハーフを走るというかなりしんどい練習もしましたし、体重を落として、相当に追い込みました(笑)。そうしてサブ3を達成できたので、継続は力なりを体現できたと思います。

〈今後の目標〉
まず、11月の神戸マラソンに出場します。その後、来年1月に大阪国際女子マラソン、3月に地元の徳島マラソンを走る予定です。大阪は、3時間6分を出せましたし、今年はサブ3を達成できたので、縁起がいいなって思って。それに友人も多いので、毎年出たいなって思っています。徳島は地元ですし、10位内に入ると新聞に大きく掲載されるんですよ。前に走った時は、掲載されたいと思ってタイムよりも順位を重視して走りました。9位になったので、掲載されて嬉しかったですね。レースは、出る以上はすべてでサブ3を達成したいと思っています。

次の目標ですがサブエガは、まだ遠いなって思っています。これからサブ3をコンスタントに出して、2時間55分とかになれば目指せるのかなぁ。2年後には、挑戦できるくらいになっていればいいかなって思っています。

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.9

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
RECOMMEND
CATEGORIES