• instagram
  • youtube
  • rss
スタイリッシュに速く走りたい、すべてのランナーへ
  • instagram
  • youtube
  • rss
COLUMN

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.4

2022.06.23
Shun Sato

狙い通り、ハーフでのパーソナルベストを更新したにも関わらず、結果的に目標の達成が叶わなかった渥美さん。その失敗レースで学んだ2つの教訓と最終的な目的とは?

渥美莉紗子(市民ランナー) 「日々、リミットを外す」 


レース:名古屋ウイメンズマラソン(2022年3月13日)
タイム:3時間04分01秒(目標タイム:2時間50分以内)
自己ベスト:2時間54分53秒(大阪国際女子マラソン/2022年1月30日)

■Before the start (スタート前)
名古屋の1ヵ月半前の大阪国際は、2時間54分53秒の自己ベストをマークできました。ただ、本番前に足を痛めてしまい、練習をしなきゃいけないのにあまりできない状態でレース当日になり、それまでの貯金でPBを出せたのですが、すごく悔いが残るレースだったのです。34キロくらいからちょっとペースが落ち始めたのですが、金沢マラソンで後半にタレてしまった記憶が残っていて、このままのペースで行くと残りもたないと思い、自分でブレーキをかけたのです。でも、ラスト2キロで上げられて、「まだいけるじゃん!」と思ったので、ブレーキをかけたことへの後悔がすごく大きくて・・・。名古屋までの1ヵ月半、足は痛かったのですが、PBを出すために練習しなきゃっていう気持ちがすごく強くて、なかなか休めませんでした。かなり追い込んだ状態になり、いつも練習している「庄内RT」のメンバーから「今までしっかり練習して来ているのだから大丈夫。ちゃんと休もう。」と言われて、ちょっと気持ちが楽になりましたね。名古屋の1週間前のポイント練習は1回で、あとはジョグで調整していました。

■Start line(スタート)
レース当日は、足は痛かったのですが、調子自体は良くて、感覚的にはいけそうだなって思っていました。スタートラインには、あらゆるネガティブな要素を排除して立つことにしていますが、この日はすごく暑くて・・・、私は暑さに弱いので、そこはちょっと気になりましたね。レースではサブエガを目標にしていましたが、自分の中で意識していたのは、キロ4分でサブエガができるので、そのペースでどこまで押せるのか。もうひとつは、ハーフを自己ベストで通過することを考えて走ろうと決めていました。

■スタート~5km
私の前にキロ4分よりもちょっと早い集団がいて、ここにつかずにあえてひとつ落とした集団にマイペースでいくようにしました。チームのメンバーが2人いたので、一緒に集団を作って走ったのですが、最初の5キロは19分46秒で、ほぼ設定通りにうまく入れた感じでした。

■5km~10km
10キロまでの5キロも19分49秒で、ほぼ設定通りでした。ただ、大阪国際の時とほぼ同じくらいのペースで走っているのですが、その時よりも「あれ、ちょっときついかも。」という感覚があったのです。9キロ地点で、一緒に走っていたメンバーの一人が前に飛び出したので、「ここで上げるの?」と思うと、さらにキツい感じになって・・・。しかも、急に右アキレス腱に痛みが出たのです。これまで痛みとか出たことがなかった箇所なので、「えぇ?」とちょっと動揺しました。

■10km~15km
10キロからの5キロでちょっと前に出たチームの先輩に追いついたのですが、タイムが少し落ち始めてきて20分10秒かかっています。頑張って前に追いついたのですけど、それで足を使ってしまい、そこで力尽きてしまった感がありました。この区間は上り基調なので、しんどかったのですが、沿道に人がたくさんいて、知り合いもいたので、なんとか頑張って走っていました。

■15km~20km
15キロから20キロは、20分35秒かかっているのですが、ジワジワと落ちてきていましたね。頭の中には、最初に考えた目標である「ハーフで自己ベスト更新」をなんとか達成したかったので、そのためにここは必死になって走っていました。

■20km~25km
ハーフは1時間24分52秒で、5秒でしたが自己ベストを更新できました。なんとか持ちこたえてギリギリでクリアしたのですが、このタイムを見て、計算しちゃったんです。これに×2にして、ギリでサブエガかぁって思いましたし、この足の痛みじゃ正直、途中から歩くことになるかもしれないと思い、心が折れそうになりました。25キロ地点にチームの応援団がいて、そこで足が痛いアピールをして、「もう無理です。」って弱気な発言をしたら監督やコーチに「もう記録出なくてもいいから3時間は切れよ。」と喝を入れてもらったんです。かなりネガティブモードになっていたのですが、その一言でちょっと刺激が入りましたね。

■25km~30km
25キロからの5キロは、アキレス腱の痛みが増して、これは相当にヤバいと思いました。足を引きずるみたいになって、左右のバランスもおかしかったと思います。でも、今シーズン最後のレースですし、最悪怪我してもいいという気持ちで歩かずに走ろうと思っていました。

■30km~35km
30キロは、2時間4分29秒だったのですけど、PBは1時間58分なので、相当に遅いなって思いましたね。ここではタイムを気にするってよりも完走が目標になり始めていて、「なんでこんなに走れないんだろう。」と思うと、涙が出て来て止まらなくなりました。

■35km~40km
35キロから40キロまでは、25分11秒で、ほぼキロ5分ペースにまで落ちました。この時点で、走りながら自分の頭の中で反省会を始めました。今回、ハーフをPBで通過できたことはけっこう大きな収穫だったし、前半攻めたからまぁいいかと思いつつ、準備や練習がきちんとできないとこうなるんだなというのがよく分かりましたね。

■Goal(ゴール)
フィニッシュ近くになるとチームのメンバーが並走してくれて、とにかく早くゴールしようと、そればかり考えていました。ドームに入ってタイムが見えるのですけど、正直タイムはもう追っていなかったので気にならなかったですね。ラストも上げられず、「こんなにキツいマラソンあったっけ!?」と思いながらゴールしました。金沢マラソンや大阪国際ではゴールした時、目標がクリアできて涙が出たのですが、今回はそれとは違って苦しい中でやりきった感がすごく大きかったです。足が痛いのは仕方ないことですし、キロ4分ペースで行くと決めたので、前半攻めることができたのはすごくいい経験になりました。

■大阪国際女子マラソンと名古屋ウイメンズマラソンの比較

   大阪国際   名古屋 
 5㎞   20:00   19:46 
 10㎞   20:04   19:49 
 15㎞   20:07   20:10 
 20㎞   20:20   20:35 
 Half   1:24:54  1:24:52(PB) 
 25㎞   20:07   21:32 
 30㎞   20:37  22:37 
 35㎞   21:21   23:54 
 40㎞   22:38   25:11 
 Finish   9:29   10:02 
 Result   2:54:53   3:04:01 

教訓(1)「練習の年間スケジュールを立て、リミットを越える」
うちのチームでちゃんと結果を出している人は、調子が良くても悪くても、しっかりと1年間の練習計画を守ってやってきています。でも、私は調子が悪くなってジョグになってしまったり、自分で勝手に走り過ぎたりして、あまり計画性がなかったのです。その反省を活かして、今は練習メニューを一言の文句も言わずに、しっかりこなすというのを意識してやっています。ただ、相当にキツいので、1本抜こうかなとか、クラスを下げようかなと葛藤が生まれることがありますけど、どんなにキツくてもやり切ることが大事だと思っています。日々、リミットを外す感じですね。

教訓(2)「自信は準備に比例する」
練習スケジュールにそってメニューをこなしていけているのに、レース中に後半もつかなぁとネガティブになったり、急に不安になってしまうことってあると思うのです。でも、練習をしっかり積んできているならもっと自信を持っていくべきですし、そうしてレースに臨めるくらいの準備が大事なんだということを、改めて思いました。


〈今後の目標〉
今は、2時間45分を切るためのメニューに取り組んでいます。そのひとつとして、主にスピードを磨いていて、5000m、3000m、1500mにトライしています。昨年秋の記録会で、5000mは18分33秒だったのですが、この春は18分9秒のPBが出て、10キロも38分から36分54秒に更新しました。今年中にできれば5000mは17分30秒、10キロは35分台を目指しています。

秋冬のレースでエントリ―しているのが、金沢マラソンと大阪国際女子マラソンです。金沢は、最低サブエガで、大阪国際は2時間45分切りができればと考えています。将来的には、マラソンは2時間38分を切るのが目標です。地元が新潟で、県のマラソン記録が2時間38分47秒なのです。高校大学時代は、競歩をしていて10キロの県記録(47分35秒)を持っているので、マラソンで県記録を更新して、大学の現役時代と今のマラソンで、ふたつ名前を県記録に載せたいなぁと思っています。

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.3

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
RECOMMEND
CATEGORIES