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COLUMN

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.6

2022.07.21
Shun Sato

パーソナルベスト更新を目指して出場した大会で、逆にDNF(Did Not Finish)を経験してしまった伊原さん。このDNF体験により得た3つの教訓を、これからチャレンジする人も胸に刻んでみては。

伊原綾香(市民ランナー) 「DNFのイヤな思いは、二度としたくない」


レース:なにわ淀川マラソン(2022年3月27日)
タイム:DNF(目標タイム:3時間20分以内)
自己ベスト:3時間22分45秒(第44回大阪42.195㎞フルマラソン/2022年3月6日)

■Before the start (スタート前)
なにわ淀川マラソンの3週間前に長居で大阪42.195㎞フルマラソンに出て、3時間22分43秒の自己ベストを出すことができました。ペーサーがついてくれたおかげもあり、途中、トイレにいくハプニングはありましたが、それを踏まえても120点の出来でした。それから3週間空けるというのは、レースを設定する時から考えていました。3月末のレースを本番と考えて、長居はたたき台として考えていたからです。実は、このふたつのレースを設定する前に予定したレースがありました。丹波篠山ABCマラソンと徳島マラソンです。ふたつともコロナ禍の影響で中止になり、同じタイミングでふたつのレースを組み入れました。その最初のレースとなった長居で自己ベストを出せて、淀川に向けて「次は20分を切るぞ。」と気持ちが盛り上がりました。さいわい、レースのダメージは筋肉痛くらいで、内臓疲労が出たらどうなるかなという不安がありましたが、故障とかはなく調子はすごく良かったですね。

■Start line(スタート)
なにわ淀川マラソンのコースは、今までもハーフだったり、10キロを何回か走っているのですが、すべていい結果で終わっていました。今回も根拠のない自信みたいなのがあって、このコースだから行けるみたいな感じでしたね。スタートラインに立った時は、やる気満々で、気合もガチガチにちょっと出すぎている感じでした。

■スタート~5km
気合十分でスタートしたのですが、走ってみると足がちょっとだるくて、一歩一歩がすごく重たく感じられました。どのレースもだいたい前半は調子がいいのですが、この時はスタートから動かないみたいに感じたので、その時点で初めのあの自信が全部どっかに行っちゃって・・・、気持ちがちょっとネガティブになりました。

■5km~10km
私は、途中で内臓疲労が起こって、そこからが勝負みたいなところがあるのですが、この時は5キロくらいからちょっと気持ち悪さが始まって・・・。水分補給をするとすぐにこみ上げてきちゃうんです。むせ返るような感じになり、そうなると呼吸が乱れて走れなくなり、だいたいダメになってしまうのです。この時は、ハイペースで攻めたので、その影響もあったのかもしれないですが、「こんなに早く出たの?」という感じでした。残りの距離が長すぎて、「あと30キロこれを耐えるのか。」って考えると、「もうダメかも。」とその時、思ってしまいました。

■10km~20km
こみ上げてくる感じの気持ち悪さが続いていました。その解消法として、いつも喉の奥に指を突っ込んで走っていました。これで空気が抜けると少し楽になって、走れるのです。この時は10キロ過ぎに、そうしたのですが、治りませんでした。ただ、10キロ過ぎに知り合いで応援してくれていた方が一緒に走ってくれたので、そこで持ち直せるかなと思ったのですけど、気持ちの悪さに気持ちが負けてしまって。そこから10キロを頑張ったけど、ここまで来たからもういいかみたいに思ってしまい・・・、ハーフが限界でしたね。

■20km~30km
足が重いし、気持ちも悪い。いつもはしんどくてももうちょっと粘って走るのですけど、この日はもうひたすら止めることを考えて、走ることがすごく嫌になってしまいました。時計をストップしたのは、30キロです。でも、実際は20キロを超えてから立ち止まって、空気出したりするのをずっと繰り返していましたし、歩いたりしていました。そうなると気持ちが切れてしまいますね。このまま40キロいっても内臓疲労のダメージが大きくなるだけでしたし、引っ張ってくれる人を歩かせるのも申し訳ないと思ったので、「次に切り替えて完走しない。」という選択をしました。

■DNF(途中棄権)
走るのを止めた時は、自分に負けてしまったなと思いました。怪我をしているわけではないので進もうと思えば進めたと思うのです。「次のため」と自分に言い聞かせたけど、やっぱり途中でやめてしまったことは悔しかったですし、悲しかったですね。足を止めた後、レースで頑張っている人の姿がすごく眩しかったです。

教訓(1)「気持ちの余裕を大切に」
今まで上手くいったレースの時は、スタートまでどう過ごすか、とかを特に意識せず、朝起きてから若干ぼーっとしているくらいのテンションでスタートラインに立っていたのです。でも、今回は「20分を絶対に切りたい。」みたいにタイムにこだわり過ぎて、その気持ちの強さが裏目に出てしまいました。自分ではそんなに意識はしなかったのですが、スタート地点で私を見つけてくれた方から「かなりピリピリしているような感じだったから声かけられなかった。」と言われて・・・。タイムに執着し過ぎて、いつの間にか気持ちの余裕を失っていました。その余裕のなさが気持ち悪くなったり、体調の変化に影響を与えたのかなと思います。レースを楽しむ余裕を持つことがいかに大事かよくわかりました。

教訓(2)「テーパリングも走れるカラダを維持する」
自己ベストを更新したレース後、疲労抜きをしっかりしようとし過ぎてしまい、ぜんぜん走らなかったのです。この時もジョグで繋ぎ、一回だけ20キロくらいのトレイルに行ったくらいで、3日前に短い距離のペース走で刺激を入れて終わりでした。ある意味、しっかりと疲労抜きができたのですけど、逆に体がなまってしまったみたいで、それを走り始めに感じました。完全に休むのではなく、ほどほどに体を動かしながら最後に刺激を入れて、自分の体がちゃんと動くことを確認しておくのが自分に合っているやり方だと思いました。

教訓(3)「最後まで諦めない」
DNFをした時は、情けなかったです。他のみなさんは、どんな結果になるにせよ、頑張って走っているわけじゃないですか。途中でやめてしまった自分は駄目だなみたいに感じましたし、同時に途中でやめるのはやっぱりいやだなと思いました。DNFした後、トレイルのレースに出たのですが、苦しくてもDNFだけは絶対にしないという気持ちがすごく強くなりました。諦めない気持ちというか、レースに対する姿勢が変わりましたし、目標達成には改めてその強い気持が大事だなと思いました。


〈今後の目標〉
秋のフルマラソンは、エントリーをしてないのですが、年明けのレースに一つか二つ出ようかなと考えています。そのひとつが泉州国際マラソンです。このレースはコロナ前、最後に出た大会で、調子良く走れましたし、コースも好きなので、そこで20分切りを狙えたらなと思っています。さらにトレイルランニングも継続していくつもりです。ただ、トレイルに重心を置くのではなく、もともとフルマラソンのためにトレイルを始めたので、マラソンでの目標を達成しつつ、トレイルもこなしていく感じです。私の最大の目標は、大阪国際女子マラソンに出場することです。今後、参加タイム(現在3時間07分以内)がどんどん厳しくなっていきそうですが、地元ですし、出場を目指して、諦めずに頑張って行きたいと思います。

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.5

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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