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COLUMN

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.5

2022.07.07
Shun Sato

雪国ならではの環境に対応した練習があり、「攣り」という大敵が襲ってくる中、杉下さんは如何なる教訓を得て、今後のレースに臨んでいくのだろうか?

杉下智(市民ランナー) 「3度の攣り(つり)、大転倒でサブ3及ばず」  


レース:勝田マラソン(2020年1月26日)
タイム:3時間01分01秒(目標タイム:2時間59分)
自己ベスト:3時間01分01秒(勝田マラソン/2020年1月26日)

■Before the start (スタート前)
勝田マラソンの前は、2019年10月にいわて盛岡シティマラソンを走り、3時間5分28秒の自己ベストを出すことができました。そこから1月の本番でサブ3達成に向けて動き出したのですが、その時期になると弘前は非常に寒くなり、雪がかなり積ってきます。ジョグは、スノーターサーという冬用のシューズがあるので、それを履いてできるのです。でも、雪道ではスピード練習ができないので、青森まで片道1時間半かけて行き、1周543mの室内競技場でインターバルやペース走をしていました。週2回行くのは意外としんどくて、「辛いなぁ。」と言いながらも通いましたね。月間走行距離は300キロくらいで、なんとかサブ3を狙える距離を走り、勝田マラソンに繋いでいった感じです。

■Start line(スタート)
スタートラインに立った時、調子は悪くなかったです。ペース設定は、4分10秒から15秒くらいで、イーブンペースでいこうと考えていました。気温も10度を切っていたので、走るには最高の気候で、逆にいうと言い訳のきかないコンディションでした。

■スタート~25km
スタートしてから25キロまでは、コンディションが良かったですし、東京から2時間50分くらいで走る友人がペーサーについてくれて、かなり気持ちよく走れました。今まで13回フルマラソンを走ったのですが、そのなかで一番ラクに走れていたのです。でも、25キロ地点で懸念していた「攣り」が出ました。その前から太ももの裏にピリピリというのが起きて、そろそろ来そうだなぁという感覚があったのですが、予想通りその数分後に出ましたね。足の攣りはマラソンを走っていて、今まで起きなかったことはないくらい毎回起こります。レース中、2~3回起こり、止まって伸ばすのですが、激しく攣るとかなり痛いですし、伸びないので大変です。対策として芍薬甘草湯を飲んでいるのですが、それでも出てしまう。最近は慣れて、「来たなぁ!」くらいにしか思わないのですが、この時は軽い攣りだったので、すぐに走り始めることができました。

■25km~40km
1回、足が攣り、いきなり元に戻すのは難しいので、だましだまし走っていました。ようやくいい感じで設定ペースに戻れたなと思っていたら35キロ、37キロでまた足が攣ったのです。この時は、首も攣ってしまい、コースの横に外れ、足と首を伸ばしていました。しかも、この時、1分程度、止まっていたので、友人のペーサーが我慢しきれずに先に行ってしまいました。完全には戻らず、半分攣った状態のまま走っていましたが、キロ4分20秒くらいでペースを維持できていたので、目標のサブ3にまだ届くところにいました。

■40km~Finish
足を攣りながらも極端にペースを落とさず、このままいけばサブ3はギリギリで行けそうだなって思っていました。でも、ラスト、まさかの事態が起こりました。ゴールのグラウンドに入る手前が、下りから平地になっているのですが、そこで右足のつま先を擦る感じになり、ゴロゴロと転倒してしまったのです。あまりの大転倒に周囲の人が「大丈夫ですか!」と声をかけてくれたのですが、うまく転んだせいか、幸い怪我はありませんでした。残り80mなので、なんとか体を起こすと、2時間59分55秒というタイム表示が見えたのです。これは立ち上がって走ってももう間に合わない。「ちくしょー!」と叫んで、そのまま大の字になって寝転がっていました。気持ちが落ち着いてから立ち上がり、足をひきずりながらゴールを目指しました。

■Goal(ゴール)
普通に走っていたら私の少し前を走っていた友人をゴール直前で抜こうと思っていました。でも、転けたのでできなかったのですが、その彼が3時間5秒というタイムだったのです。そこで抜いても、たぶん3時間を切ることができなかったでしょう。走っている時は、まだ少し余裕があってサブ3を達成できるかなと思っていたのですが、意外と時間がなかったことに、終わった後気づきました。正直、あとちょっとのところでサブ3を達成できなくて悔しさがあったのですが、いいペースで走っていても足が攣って、転倒して、3時間を切れなかった。これが現在の自分の力なんだというのを受け止めました。

教訓(1)「弱点から目を背けない」
タイム的には失敗だったのですが、同時にあとちょっとでサブ3は行けるな、と感じたレースでもありました。ただ、長年の問題である攣りが出てしまったことやラストで転倒してしまったことは、自分の弱さですし、力のなさだと思いました。同時に、走ることが強化だと思っていて特に筋力強化をしていなかったのですが、その直後から筋力強化に取り組むようになりました。もともと足が細くて、筋力不足が攣りの要因の一つかなと思っていたので、その対策としてランジをかなりやるようになりました。やっぱり目標達成のためには、弱いところをしっかり補う、強化することが大事だなというのは、この時、改めてわかりました。

教訓(2)「経験が冷静な走りを生む」
この時は、フルマラソン13回目のレースだったのですが、上のレベルに行けば行くほどレース経験が大事だなと思いましたね。自分の場合、必ず足が攣るので、最初は戸惑うこともあったのですが、今はそのうち治まるのが分かっているので、慌てることがなくなりました。本来なら起こらないのが理想ですが、ある程度我慢できれば、多少攣りながらでも走れますし、これは回数を重ねるごとにできるようになってきたことです。また、暑い、寒いなどコンディションを見極めて対応していく術やどうすればラクに走れるようになるのかは、場数を踏んでレース経験を積んでいく中で、答えを見つけていけるものだと思います。


〈今後の目標〉
この勝田マラソン以降、コロナ禍の影響でレースがなくなり、仕事も変わったので走る機会が減りました。でも、今はサブ3達成に向けて自重系の筋力トレーニングをしながら走っています。ただ、以前のように月間走行距離300キロには届かないですし、いきなり距離を増やしていくと怪我のリスクもあるので、ゆっくり上げていく感じでいます。

レースは、10月23日のいわて盛岡シティマラソンが久しぶりのマラソンになります。サブ3を狙うところまでは難しいと思うので、まずは3時間10分くらいを目標にしています。それができなければ練習量が足りていないということなので、そこに対してどういうメニューを構成していけばいいのか、改めて考えていこうと思っています。逆に、ここで設定タイムをクリアできれば、サブ3に向けて距離などを増やし、来年1月開催予定の勝田マラソンでサブ3を狙おうと思っています。2年前悔しい思いをしましたし、コースも分かっているので、ぜひリベンジしたいですね。

連載企画 「Unbreaking PB -失敗レースから学ぶ-」 VOL.4

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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