連載第25回「Breaking Limit」 ~3ヶ月の練習note~
第25回 平田ひより(市民ランナー) 走るのは、いつも誰かのために。-Breaking 3’15”-
2021年最後に登場するのは、ランニングシューズブランドのお店で働く平田さん。元々走るのが大好きで全国大会にも出場するほどの実力をもっていた彼女が、大学で走るのを止めてから、マラソンを再び走り始めたモチベーションとは?
平田ひより
職業:BROOKS shop clerk
年齢:20代
ラン歴:15年
フルPB:3時間13分37秒 (2021年11月28日 富士山マラソン2021)
3months Challenge—breaking 3’15”
Start(走り始めたキッカケ)
私は地元が青梅で、小4の時に青梅マラソンの小学生の部に出ました。その時、たまたま優勝したのですが、それがすごくうれしくて楽しかったので走り始めました。それから小5、小6でも優勝して、中学に入ったら「陸上をやる!」と心に決めていました。中学では一人で黙々と練習し、高校に入ると駅伝をメインに走っていました。その時、力が一気に伸びて、全国高校駅伝にも出場させてもらいました。大学は推薦で入り、走り続けていたのですが、3年になって監督の指導や練習が合わなくて、精神的にも肉体的にもボロボロになってやめたのです。就活もスポーツの世界に戻りたくなかったので、違う業種を選びました。大学3年の時に陸上を離れ、再び走り始めたのは、それから3年後、今の会社に転職してからです。
Marathon(マラソン)
マラソンを走るキッカケになったのは、お店でのお客さんとの対話です。私は、小田急ハルクでブルックスの販売の仕事をしているのですが、お客さんから「お姉さん、マラソンどのくらいで走るの?」とよく聞かれたのです。でも、昔、陸上をやっていた頃の事しか話ができなかったですし、マラソンはやったことがありませんでした。マラソンを走るお客さんの気持ちが分からないので、自信を持ってアドバイスをしたり、シューズを勧めることができなかったのです。それが悔しくて、自分がマラソンを走って、その情報を仕事に反映できるようにしよう、ということで再び走り始めました。最初はキロ6分でもきつくて、月に2‐3回走る程度でしたけど、今は月間で250キロ程度走っています。自分のために、というよりもシューズの良さをみなさんに伝えるために必要なことだと思って、地道に走っています。
Training Menu(トレーニングメニュー)
★3months(3ヶ月前)/Training Menu Point
(1)interval(インターバル)
400m×15本は、長く体を動かすことをメインにしています。設定タイムの95秒は余裕がありますが、これを1キロ換算すると4分10秒くらいです。その頃は、そのくらいのペースで長い距離を走れていなかったので、リカバリーも含めて4分15秒になるように設定しています。ポイントは、リカバリー200mを62秒にして、早めに設定しているところです。62秒はけっこう早いので、逆に400mの方がゆっくりと感じます。富士山マラソンに向けて、長い距離に対して体を動かし続け練習を始めたのは、ここからになります。
(2)long running(30キロ走)
練習を始めた当初、富士山マラソンの目標はサブ4でした。でも、この時サブ4のぺースよりも早く、サブ3.5に近いキロ5分の設定にしていました。キロ5分で足作りも兼ねて、どこまで動かし続けられるのかというのを見たかったからです。暑さもあって、20キロくらいから足がめちゃくちゃキツくなりましたが、なんとか走れたので「サブ3.5行けるかも。」ってちょっと自信がつきました。この後に目標をサブ3.5に切り替えました。この練習は皇居でやったのですが、坂と下りがありますし、本当にいい練習ができますね。
★2month (2ヶ月前)/Training Menu Point
(1)jog(ジョグ)
朝12キロを走った後、午後も12キロを走っているのですが、この時は10キロまではキロ4分20秒ペースで、少し早めの設定にしています。もともとジョグは、早めに設定しています。心肺に刺激を入れるのと接地の感触を早いペースのままキープするためです。ラストの2キロは、4分に上げています。きついですけど、しっかりと追い込めたのはすごく自信になりました。
(2)interval(インターバル)
1000m×5本のインターバルです。この時は、知り合いの男性が3分50秒でぺーランをする予定だったので、つかせてもらいました。1000mついて走り、1000mを休んで、また1000mつくというインターバルです。ただ、いざうしろについて走るとかなり早く感じたので、「あれ、早くないですか?」というと3分30秒ペースになっていて(苦笑)。ペースが早かったですけど、レストをしっかりとって1本1本を大切に走ったので、5本とも3分30秒ペースで走り切ることができたので、すごくいい練習になりました。
★1month (1ヶ月前)/Training Menu Point
(1)5000m time trial(5000mTT)
これは、練習というよりもラボですね。太ももと腰にセンサーをつけて動きを分析するプロジェクトが、この時スタートしました。最初に5000mのTTをやって、自分に何が足りないのかを見つけ、今後に向けてのメニューを作っていくのですが、「えっ!」という結果が出ました。私は、フォアフットだと思っていたのですが、左足はヒールで右足がフォアだと言われたのです。その理由は、昔の股関節などの故障やケガでそうなっていると指摘されました。普段は一人で走っているので、自分の動きが分からなかったのです。仕事では人にいろいろ言うのに、自分のことを分かっていなかったので、自分の動きを客観視できたのは、すごくありがたかったですね。
(2)sprint(1000m)
レース本番の9日前にハイペリオンカップで1000m×1本を走ったのですが、これはすごく自信になりました。この時のタイムが3分13秒ですが、ちょうど2ヶ月前に1000mで刺激を入れた時は3分35秒だったのです。その1ヶ月後、リレーマラソンでは3分24秒で走れて、今回、レース前に11秒もつめることができました。短い距離をかなり早く走れるようになったという手応えを感じました。レースがある時は、2日前あたりに1000mを入れて、体に「これから早い動きが入りますよ。」と声を掛けてあげると、当日スムーズに走ることができます。
Another Point -1
Q.「今後の目標は?」
A. ブルックスの一員として、速いに越したことはないので、自分のタイムを胸を張っていえるようになること。そして、よりいろんなシューズを試して、それぞれのレベルの方に最適なアプローチをしていけるように知識を身に付けていきたいと思っています。タイムは来年3月、東京マラソンを走るので、そこで3時間10分を切りたいですね。サブ3は、高校の先輩とかもクリアしているので挑戦したいですけど、今はまだそこまでエンジンがかかっていないので、まずは10分切りを目指して、みなさんに良い結果をご報告できたらと思っています。
2021年11月28日 富士山マラソン2021 3時間13分37秒。
0km -5km 22分27秒
5km-10km 22分14秒
10km-15km 22分14秒
15km-20km 22分21秒
20km-25km 23分23秒
25km-30km 23分01秒
30km-35km 23分01秒
35km-40km 23分19秒
40km-FINISH 10分39秒
レースは、最初は4分30秒から45秒で刻んでいこうと思っていました。でも、入りの1キロが4分17秒だったのです。「やっちまった!」と思いましたけど、リズムが良かったので、「リズム、リズム。」と意識して走ると、そのままのペースで押せました。よく初マラソンは30キロが壁と言われますが、そういうのは感じませんでした。当日の朝ごはんはエネ餅だけでしたし、給水も20キロ地点までしませんでしたが、エネルギー切れも足の痛みもなく、楽しく走れましたね。35キロを越えた時くらいにいい感じと思って、4分25秒から10秒まで上げたのです。そうしたら残り2キロで足が急に止まりました。まさかの展開で、地獄の2キロでしたね(苦笑)。でも、最後までいけたのはシューズと気持ちかなぁと思っています。
レースには、母と祖父母が応援に来てくれました。
母は私が大学で表情が変わるくらい苦しんで、走ることをやめたのをすぐそばで見ていたので、心配していたと思うのです。私も母と祖父母に元気な姿を見せたいという気持ちがすごくありました。終わった後、母が「久しぶりに沿道で走る姿を見られて良かったよ。」とすごく喜んでくれたのでうれしかったですね。あと、お客様がSNSで繋がっているのですが、みなさんに「沿道で見ていたよ。」とか、「頑張ったね!」とか投稿やツイートがあったのもとても励みになり、うれしかったです。
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