連載第21回「Breaking Limit」 ~3ヶ月の練習note~
第21回 池田慎矢(市民ランナー) 1096日、毎日走り続けて。-Breaking 3.0-
ランニングを始めたキッカケは、憧れの人のブログだった池田さん。多くの紆余曲折を経て達成したサブ3を支えたものとは。
池田慎矢
職業:会社員
年齢:30代
ラン歴:6年
フルPB:2時間59分38秒 (2021年10月31日 金沢マラソン)
3months Challenge—breaking 3’00”
Start(走り始めたキッカケ)
僕は、UVERworldが好きなんです。ボーカルのTAKUYA∞さんのブログを見たら毎日10キロ走っているというのを知って、「すごな!」って思いました。憧れの人だったので、その人がやっているなら自分もやってみようと思って始めたのがスタートです。でもいきなり10キロは無理やなって思って、3キロから始めたのですが、LINEやツイッターに「走ってきます。」って公言することで、引き下がれないようにして毎日走っていました。仕事終わりで走っていたのですが、仕事とは全然汗のかき方が違って、すごくスッキリして、ストレス解消にもなりました。それを継続していたら、当時は今よりも10キロぐらい重かったのですけど、痩せて、体も引き締まって来て、職場の人に「変わったよね。」って言われるようになりました。特に「走っている。」とか言っていなかったのですが、努力していると自然に表に出てくるものだなって思いましたし、「いいね!」と言われることがうれしくて、「またがんばろう。」って継続して走るようになりました。
Marathon(マラソン)
ランニングを始めて2年後に、神戸マラソンに出場しました。走り始めて2年目で、1回くらい記念にフルマラソンを走るのもいいかなって思って出たのですが、長いし、しんどいし、「こんなん、みんな、ようやるな。」って思いました(苦笑)。でも、40キロ付近で、沿道の人から「がんばれ!!」、「君ならできる!」と言われて、グっとくるものがあって・・・、足はつっているけど、がんばって走ろうという気持ちにさせてくれました。マラソンは、運動したことがない人からすると「42キロ走るなんて、罰ゲーム。」みたいに言われますけど、確かにしんどいです。でも、それを走り切った後の達成感がほんまに素晴らしい。マラソンを走り切ったら、たいがいのことを越えられる力がつくんじゃないかなって思いますね。
Record(1096日、連続ランニング)
2017年12月23日から2020年12月23日まで3年間、毎日、10キロを走り続けました。それは、僕が走るキッカケになったTAKUYA∞さんがそうして走り続けていたことが大きいですね。雨の日も雪の日も走りましたが、1度だけやめようかなって思った時がありました。長年付き合ってきた彼女にえぐい振られ方をして、夜10時ぐらいに帰ってきたのです。こんな日やし、今日くらいはいいかなって思ったのですが、今日くらいいいかなっていう気持ちが甘えになるから、それはなしによう。そう思って、着替えて、音楽を聴きながら外に出たのですが、恋愛モノの曲が流れてきた時は泣きそうになりながら走っていました。
Training Menu(トレーニングメニュー)
★3months(3ヶ月前)/Training Menu Point
(1)jog(ジョグ)
ジョグのキロ5分は、自分がリラックスして、集中して走れるペースです。走りながら自分のフォームを鏡でチェックしたり、いろんなことを考えながら走っています。夏の時期は、あえて昼間に走っていました。それまで過去2回フルマラソンのレースに出たのですが、すごく暑かったのです。涼しい時間に走るのもいいけど、僕は暑さになれることも練習の一つやって思っていたので、しんどいですけど、やってよかったですね。普段のジョグはロードですけど、明石海峡大橋の近くなので、足腰を鍛えるために砂浜を走ったりもしています。
(2)long slow distance(LSD)
狙いは、まずフルマラソンのサブ3と同じ3時間、体を動かし続けることです。長時間走っていると、波があるじゃないですか。キロ6分のゆっくりのペースですけど、いい時、悪い時をそれぞれ体感して、いい時はともかく、悪い波の時、何がしんどいのか? 足なのか、心肺なのか、メンタルなのか、を探りながら走っています。僕の場合、22キロから25キロくらいでしんどいのが来るんですよ。これがマラソンやと「あと半分もあるんか!」ってネガティブに振れるのですが、そこで別のことを考えるようにしています。例えば今、腕振りどうかな、足はどんな感じかなとか、切り替えることでひとつ波を乗り越えて、またいい波に乗れるようになります。
★2month (2ヶ月前)/Training Menu Point
(1)interval(インターバル)
3000mを2本のインターバルですが、これはスピード持久力を上げてくれるメニューです。サブ3のペースは4分15秒ですけど、1キロを3分30秒から40秒くらいで走り、どのくらい自分の中で余裕があるのかを見ているのですが、この時は比較的余裕がありました。1本目から2本目までのつなぎは、レストを5分とります。その間、今の走りはどうだったのか、その場で振り返り、2本目に活かすようにしています。前は1000mを10本とかやっていたのですが、なかなか集中力が続かなったのです。それなら最後まで集中力を持続してやれる練習をやって、結果に繋げていく方がいいという判断で、3000m×2本を取り入れています。
(2)half(ハーフ)
一応自己ベストを目標にして走りましたが、達成できなくてもそこに近いタイムが出ればOKという感じです。この時は、2分くらいハーフの自己ベストを更新できたのですが、達成できたことで自信がついて、金沢マラソンに気持ち的な余裕を持って臨むことができました。ちなみにこの時は、単独走です。基本的にいつも練習はひとりですね。トラックでの練習はしたことがないですし、そもそも同じところを何回も回るのが好きじゃなくて(苦笑)。練習会とかに参加したこともないです。ひとりで練習するのが好きなタイプなので、マラソンに向いているのかもしれないです。
★1month (1ヶ月前)/Training Menu Point
(1)injury(故障)
この月は、練習のボリュームを落としているように見えますが、実は右足首の古傷が再発して無理が効かない状態でした。8月から痛みが出ていて、10月に悪化して、痺れや痛みがかなり出ていました。病名は、足根管症候群というのですけど、なぜ、痺れや痛みが出るのか、まったく心当たりがなくて・・・。とにかく右足が痛すぎたので、ジョグも15キロを10キロにしたり、けっこうストレスを抱えながら練習をしていました。精神的にイライラしますし、「この怪我のせいで。」と言い訳をしたくなりそうだったので、痛くなるとすぐに練習をやめていました。
(2)pressure(プレッシャー)
金沢マラソンは、サブ3を目指して3回目の挑戦だったのですが、今回は何がなんでも達成しないといけないと思っていました。自分自身、何回も同じ失敗をするのがいやだったですし、SNSでマラソンについて配信したり、投稿していたりして、みなさんからの期待もありました。ただ、SNSをやっていると、いい声もイヤな声も届くのです。3月に「なにわ淀川マラソン」でサブ3を狙ったのですけど、3時間0分32秒に終わって、悔しいなって思っていたら「3時間32秒? 爆笑。」とか、揶揄するようなコメントが届いたのです。そういうのに対して「見返してやる!」、「バカにすんなよ!」という気持ちもありました。
Another Point -1
Q.「なぜ、ユーチューバーになったのですか?」
A. 2年前にユーチューブを始めました。その頃、自分の人生があまり面白くないなって感じていて、じゃあ、なぜ面白くないのかを考えた時、それは受け身の人生だからって思ったのです。じゃあ、何を始めようかと考えた時、当時はユーチューブがすごく盛り上がっていたんですよ。仕事で出会った人に「表に出ることしてみたら?」と言われたこともあったので、「これや!」と思って翌日ダイソーに行って、三脚を買ってアイフォンで撮影してスタートしました。最初は、誰にも見られないし、「こんなんやってて意味あるのかな?」と思ったのですが、続けていくとみてくれる人が徐々に増えていきました。金沢マラソンでサブ3を達成した後、動画をアップしたのですが、コメント欄は温かいメッセージが多くて、一生分のおめでとうをもらった感じで、ほんまにありがたいと思いました。
Another Point -2
Q.「今後の目標は?」
A. とりあえずサブ3は達成できたのですが、タイム的にはけっこうぎりぎりでした。次のマラソンでは余裕をもってサブ3を達成したいなと思っていますし、もうひとつ先のステージであるサブエガも考えています。ただ、次のレースはまだ決めていません。足の回復を優先しているので、それ次第かなって思っていますが、今シーズンはあと1本走れるといいかなって思っています。サブ3を余裕で出せるようになったら、ウルトラマラソンにも挑戦してみたいですね。
2021年10月31日 金沢マラソン 2時間59分38秒。
0km -5km 21分51秒
5km-10km 21分11秒
10km-15km 20分53秒
15km-20km 21分03秒
20km新規-25km 21分14秒
25km-30km 21分23秒
30km-35km 21分36秒
35km-40km 21分23秒
40km-FINISH 9分04秒
最初は、ペーサーについて行こうと思っていました。でも、自分のスタート位置とペーサーの風船の位置をみると、明らかに遠かったのです。追いついていこうかなって思ったのですが、足の状態と、金沢という初めての地でのレースの緊張感もあったので、追いかけるのはやめました。まずはサブ3のペースである4分15秒で30キロまでいこうと決めました。30キロを越えた時は、「まだ12キロもある。足が限界に近づきつつあり、今勝負しても撃沈する。」と思ってペースを維持しました。でも、33キロから34キロは4分20秒くらいに落ちたのです。これは「ヤバい!」と思って、35キロから1キロは4分5秒に上げました。このペースが今回のレースで一番早かったのですが、「ちょっと待て、残り5キロからなら行けるけど、7キロからは厳しい。」と思い、35キロから39キロまでは、ちょい早のイーブンくらいで行きました。ここまではわりと冷静やったと思います。39キロからは、すべてのエネルギーを出し尽くして、思い切り走りました。フィニッシュした後は、「やればできるやん!」という思いに満たされて、今までない達成感を得られたし、嬉しかったです。よく人生の中で何が一番うれしかった、とよく聞かれるじゃないですか。僕は、この金沢マラソンでサブ3を達成できたことが、今のところ人生で一番うれしいことだと言えますね。
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