連載第17回「Breaking Limit」 ~3ヶ月の練習note~
第17回 平沢侑花(市民ランナー) 今、走るのは心と体を定位置に戻すため。-サブ3.5達成-
平沢侑花さんにとって大学時代に達成したサブ3.5は、その後の彼女の人生にも大きな意味を持っているようです。どんな思いで走り、達成後に与えた影響とはどんなものだったのだろうか?
平沢侑花
年齢:20代
職業:会社員
ラン歴:10年
フルPB:3時間29秒09秒 (2018年3月18日 板橋マラソン)
3months Challenge—breaking 3’30”
Start(走るキッカケ)
本格的に走り始めたのは、高校で陸上部に入ってからです。小学生の頃は水泳、中学生ではテニス部で、高校でもテニスを継続してやろうと思っていたんです。でもレベルが高くて、入部しても団体戦のメンバーでベンチが私のポジションだなと思いました。そこで、どうしようかなと考えたのですが、走るのは好きだったんです。中学の時に駅伝大会に誘われて走り始めたのですが、それが楽しかったんです(笑)。陸上部を見てみると高校から始められた先輩がいて、すごく尊敬できる方でしたし、環境も良くて、挑戦する価値があるなと思って陸上部に入部しました。部活では800mをメインに1500mも走っていました。2年生の時には新潟県の大会の800mで優勝できましたし、高校生時代の思い出は、全部陸上と部活と言っても過言でないです。
Marathon(マラソン)
大学でも陸上は続けていました。高校から陸上を始めたので、まだ伸びるかなと思っていたのですが、思うように記録が伸びず、辛い日々でした。ただ、うまくいかない中で3年間続けたことは意味があったと思っています。3年の12月に引退をしたのですが、以前からマラソンをやりたいと思っていたんです。それで4年生の10月に富山マラソンを走りました。マラソンは初めてでしたが、そのための練習は特にしなかったですね。子供の頃から周囲の応援で頑張れてしまうタイプでしたし、スピードと体の使い方、肺活量、体力には自信があったので、長い距離を走れる足作りさえすれば行けるんじゃなかって思っていました。でも、いざレースになる35キロ付近で足が動かなくなるし、暴風雨で辛過ぎて、涙が出て来て、もう大変でした。ただ、これで3時間38分が出るなら3時間半は切れる。社会人になったら続けられるかどうかわからないから大学生のうちに切ろうと思い、板橋マラソンに出場しました。
Training Menu(トレーニングメニュー)
★3months(3ヶ月前)/Training Menu Point
(1)jog(ジョグ)
ジョグは、10キロが基本でした。信号がなくて、車にも邪魔されず、夜道も安全なところで、折り返してくるとちょうど10キロのコースがあったんです。この10キロを走る中で、この坂で上げていこうとか、ビルドアップしようとか、バリエーションに富んだ練習ができました。この時期は、まだ陸上部の体力が残っていたので、インターバルなどは入れていません。ジョグで本番の時に走りたいペースを体になじませつつ、体の動かし方、スピードの上げ方の感覚を落とさないようにするために最後は80mぐらい流しを入れて、終えていました。
(2)core training(体幹)
体幹トレーニングは欠かせないものです。高校時代はすごく怪我が多くて、3回疲労骨折しているんです。走れない時期が長かったのですが、その時、ひたすら体幹をやっていました。普通のプランクからサイドなど、全6種類ぐらいですね。競技に復帰した時、顧問の先生に体幹がしっかりしていることを褒められたんです。体がぐらつかずに安定して走れるようになり、それが陸上における私の自信になり、強みにもなりました。この時も走れない時期があったのですが、体幹だけはやっていました。
★2month (2ヶ月前)/Training Menu Point
(1)interval(インターバル)
富山マラソンに出た時、最初飛ばし過ぎて、後半に足が止まってしまったんです。前半に貯金して、後半持ち堪える走りをしないと3時間30分は出ないと思ったので、キロ5分よりも早いペースでインターバルを入れています。レストを500m取っていたので、このメニューはめちゃくちゃ余裕がありました。200mぐらいのジョグですときついのですが、500mあったので肩の力を抜いて腕をぶらぶらさせながら歩かずに体を動かしている状態を作れていましたし、しっかりとやり切ることができました。
(2)long running(20キロ)
いつも10キロのジョグが中心だったので、「この4倍走るときついな、だったら半分ぐらい走ってみよう。」と思って、20キロを入れました。30キロをやらないのは、レースと練習では気持ちの盛り上がりが違いますし、一人で黙々と30キロを走ると、「こんなにつらいんだ。」「マラソンを走り切れないかも。」と思ってしまうことが怖かったからです。30キロ走って内向きになるよりは、20キロを走って、「よし!」と思って切り上げた方が自分には合っていました。5分50秒のペースは、サブ3.5のペースよりも遅いですけど、マラソンで走り始めると私は足が速く動いてしまうんです。キロ5分で走っていれば本番ではそれよりも早いペースで走れる自信があったので、レースペースよりも遅い設定にしています。
(3)The flu(インフルエンザ)
レース3ヶ月前の胃腸炎につづいて、インフルエンザで2回もダウンするってありえないですよね(苦笑)。これは結果論なんですけど、インフルエンザになって休んだ後、あまりペースを上げず、体調を見て、体を動かしていたんです。そのおかげで疲労が少なくて、ふくらはぎも柔らかかったですし、バネもけっこう残っていました。その前の1月、2月は、距離を踏んでいたので、「足がパンパンで硬いなぁ。」って思っていたので、ここで休めたことは結果的に良かったと思います。
★1month (1ヶ月前)/Training Menu Point
(1)build up(ビルドアップ)
インフルエンザから回復後、体力にまだ不安があったので、しばらくは様子を見ながら走っていました。この時も最初はゆっくりでいいので、まずは走ってみようと思ってスタートしました。走っているうちに徐々に気持ちが乗っていくと、レースのペースでいけたので、じゃそのままで行ってみようと走り、最終的にビルドアップになった感じです。でも、ここで最後に上げてやり切れたことはこの先のレースへの自信になりました。
Another Point -1
Q.「レース前は、どんなことをしていますか?」
A. ゆっくりお風呂につかること。前日は、カーボローディングでご飯をしっかり食べること。大学生時代は、お金がなかったので前日に食べて、朝もしっかり食べてエネルギーを蓄えていました。あと、筋肉が張りやすいので、マッサージをしてもらうこと。それに走る時に足のアーチが落ちやすいので、走る時は足底を上げるようなテーピングを入れています。足底が落ちてしまうとフォームにも影響が出てしまうので気をつかっています。あと、普段の練習後、アイシングは必ずしていました。高3の時に腓骨骨折をしたので、膝から下はしっかり冷やしていましたね。
Another Point -2
Q.「今後の目標は?」
A.社会人になって今まで触れてこなかったアニメ、マンガ、ゲームなどのコンテンツを扱うようになって、世の中にこんなに面白いものがあるんだと思いました。そうした楽しいことを追求する一方、自分の心と体を定位置に戻すために今は走っています。走ると「まだちゃんとやれる自分がいた、大丈夫だ!」と思えますし、何か辛いこと、整理しないといけないことがある時は、走って、気持ちをリフレッシュさせます。そうすると明日も元気に働こうという気持ちになるので、自分のコンディショニングみたいなものでもありますね。今後のレースは、まだ白紙です。
大学4年の時、3時間30分を諦めずに切れたことは当時の自分の心の支えになりました。社会に出て、挫折や大変なことがありましたけど、諦めずにサブ3.5を達成できた自分がいたことで救われたことがあったんです。だから、走ることはやめないですし、来年の秋ぐらいには、レースに出ようかなと思ったりもしています。そのために走り出せる状態は作っておきたいと思います。
2018年3月18日 板橋マラソン 3時間29分09秒。
0km -5km 24分59秒
5km-10km 23分22秒
10km-15km 23分10秒
15km-20km 23分17秒
20km-25km 25分15秒
25km-30km 25分35秒
30km-35km 26分15秒
35km-40km 26分06秒
40km-FINISH 11分10秒
この時の板橋マラソンは、インフルエンザから復帰したばかりで両親からは「やめなさい。」と言われていました(苦笑)。私もスタートラインに立った時は、3時間30分切りは諦めモードでした。ただ、大学では調子が良くなくても逃げないでやってみることに価値を見出してやってきました。今日のレースもうまくいかないかもしれないですし、3時間30分は難しいと思うけど、やってみようと出場しました。走ってみると8キロぐらいで体が動くのを実感したんです。これは3時間30分イケると思い、そこからスイッチを切り替えました。35キロまでは攻めましたね。その後、ラストに向けて5分20秒ぐらいまで落ちたところもありましたし、残り1‐2キロはタイムに余裕がなかったので、もう必死でした。腕を懸命に振って走って、スパートしてゴールしたんです。その時、同じぐらいにゴールしたおじさんから「お姉さん、速いね!」と声をかけられたんです。タイムが気になって、「3時間30分切れていますかね?」と聞いたら「大丈夫だよ。」と言われて、ホッとしました。
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