連載第7回「Breaking Limit」 ~3ヶ月の練習note~
第7回 芦野さやか(市民ランナー) 楽しく、できっこないをやりきる -サブ3.10突破-。
100m走で20秒切れずに、「運動音痴」を心配した芦野さん。しかし、彼女は3時間10分を切るランナーに成長しました。その間、どのようにスピードを身に付け、どんなメニューをこなしてきたのでしょうか。彼女のランニングスタイルの根底にあるものとは?
芦野さやか
職業:アパレル
ラン歴:6年
フルPB:3時間09分58秒(2020年2月7日 別府大分毎日マラソン)
3months Challenge—breaking 3’10”
Start(走ることのキッカケ)
会社にランナーの方がいて、「東京マラソンに出ようよ!」と誘われ、「何それ、楽しそう。」と思ったのが走るキッカケです。2015年6月17日がランニングを始めた日なのですが、その翌週に、「皇居一周してみようよ。5キロってどのくらいかなぁ?」と女の子ふたりで走りました。1周を楽しく走れた後、有楽町のガード下の店でビールケースの椅子に座って飲んでというセットがすごく楽しくて(笑)。「何これ、走るのってちょー楽しい。」と思って、そこから一気にランニングにハマりました。
Challenge to marathon(マラソン挑戦)
ランニングを始めた翌年に地元の北海道マラソンに出たんです。フルマラソンて走れる人しか出られないイメージがあったんですけど、出るなら完走したいですし、4時間半から5時間ぐらいで走りたいと思っていました。そうしたら4時間17分02秒(ネットタイム:4時間08分37秒)で走れたんです。しかも沿道の方が見知らぬ私に「がんばれ!」って応援してくれたのが本当にうれしくて(笑)。レース後はそのまま大通り公園でご飯を食べて、インスタ繋がりの友人と会って話をして・・・。部活経験がなく、大会の空気感とかも知らなかったので、すべてが新鮮で大会を走るのってこんなに楽しいんだって思いましたね(笑)。それから今もずっとつづいています。
Motivation(モチベーション)
ひとつは、私なりの親孝行かなって思っています。マラソンを始めた頃、両親から「さやかが、こんなに走るようになるなんて!」と驚かれたのですが、私が夢中になってマラソンに打ち込んでいる姿を見て、喜んでくれているのがすごくうれしいです(笑)。最近はレースになると応援ナビで見てくれて、LINEで「すごいね!」って送ってくれたりして、両親が喜んでくれるのがモチベーションになっています。もうひとつは走ることで自分の世界が広がって、人生を豊かにしてくれるからです。私の周囲にいる友人たちは年齢も職業もバラバラで走っていなかったら仲良くさせてもらうことができなかった人たちです。そういう人たちと出会って、自分の知らない世界を経験できることもモチベーションになるし、それが走ることの魅力だと思っています。
Coach(パーソナルコーチ)
コーチの森田光希ちゃんにメニューをお願いしたのは、ちょうどパーソナルを始めた頃でした。それまで私は、何も考えないで走っていたんです。好きな時に、好きな距離を走って週末にロングをやろうというぐらいで、あとは帰宅ランするぐらいでした。メニューを組んだこともインターバルをやったこともなかったです。そんな時、光希ちゃんから「やってみない?」といわれて、友人だし、光希ちゃんなら信じられると思い、お願いしました。「3時間15分切りを目指そう。」ということでメニューを組んでもらったのですが、ガチガチのメニューではなかったです。「かっちり全部を決めていくと、あんたダメになる。週の中でこれだけをやってというメニューを伝えるので、それを自分のタイミングでやって。」と言われたのですが、「さすがに私の性格を分かっているなぁ!」って思いましたね(笑)。基本的に私は、遊びたいし、ファンランを入れたいのでかっちり決められるのがすごく苦手でした。できる時にやるというスタンスが、私には合っていましたし、だからこそ最後までやり切れたんだと思います。
Training Menu(トレーニングメニュー)
★3months(3ヶ月前)/Training Menu Point
(1)windsprint(流し)
メニューをもらう前の段階で、帰宅ランが好きっていう話をコーチにした時、「最後の1キロだけ流しをしな。」って言われました。その時、「流し」って知らなくて、「何やねん、それ?」という感じで、実際、やってみたらすごく遅くて100mで20秒を切れなかったんです。そのタイムを検索すると運動音痴とあって、「私、運動音痴なんだ!」って笑えました(苦笑)。流しはダッシュをするので、ダイナミックで大きな動きをするじゃないですか。今まで知らなかった体の動きを知ることができましたし、徐々に早く走れるようになって「私も早く走れるんだ。」というマインドになれました。それは、練習を続けていく上で大きな自信になりましたね。
★2month (2ヶ月前)/Training Menu Point
(1)marathon(マラソン)
3ヶ月前に神戸マラソン、2ヶ月前に青島太平洋マラソンに出場しました。コーチには、「神戸は3時間20分切り、青島は本命の別大マラソンに向けてチャレンジレースにしよう! 4分30秒でどこまでいけるか、押せるだけ押していけ。」と言われました。私は、青島は景色がキレイなので走るのを楽しみにしていたため、「えー!」と思ったのですが、コーチを信じてそのペースでいこうと覚悟を決めました。最初はオーバーペース気味で入りましたが、気持ちよく走れて、楽しかったです。でも、23キロ越えると足が重くなって、その後はペースを維持できなくて何度も止まりました。それでも不思議なことに、この2レースのタイム(3時間19分48秒)がまったく同じだったのです。この2つのレースは大きかったですね。足と心肺が鍛えられましたし、「23キロまで4分30秒でいけた。別大いける!」って自信が膨らみましたから(笑)。
(2)bad health condition(体調不良)
風邪を引いて、寝込みました。この2日前に寒い中での撮影があり、マラソンの疲れもあったのかもしれないですけど、熱が出てしまい、11日間まったく走れませんでした。コーチに連絡をしたら「走らなくてもいいよ。」と言われましたが、レースの1ヶ月ちょっと前で、さすがにこれだけ長い間走らないのは「大丈夫かな?」って、少し焦りみたいのもありました。でも、コーチが「大丈夫だから。」と声掛けしてくれたおかげで乗り切ることができて、本当にいてくれてよかったなと思いました。
(3)funrun(ファンラン)
私はファンランが大好きで、とくにパンランが一番のお気に入りです。もともとパンが好きで、いろんなパン屋さんを巡るのが好きでした。でも、おいしいパン屋さんって意外と駅が遠くて行きにくいところにあるじゃないですか。電車で行くと遠回りで時間がかかるけど、家からだと直線距離で7キロぐらいなので、「じゃー走っていけばいいんじゃん!」と思って3、4年前に始めました。往復14キロを走ってパン食べて、もう自分の好きなことしかない。しかも、数軒いくと20キロぐらいになるんです。普通に走ると1時間半ぐらいで終わるけど、パン屋さんを回って食べて走ると4‐5時間かかるんですよ。距離走になるし、食べて体を動かすのはウルトラマラソンの練習にもなって、めちゃくちゃいいんです。距離とかペースを気にせず、目的を持って楽しみながら体を動かすのは、すごく私に合っていて、今や欠かせないものになりました。
★1month (1ヶ月前)/Training Menu Point
(1)half marathon(赤羽ハーフマラソン)
正直、ハーフって好きじゃないんです。私のフルのタイム(3時間9分)と同レベルの方はハーフですと90分を切ると思うんですけど、私は92分。フルならそこまで苦しくないペースで走りますけど、ハーフではしんどいペースなので苦手です。でも、この時はまさにその苦しい走りをやろうということで「4分20秒で押し切れ。」とコーチに言われました。でも、走ると6キロですでに苦しくて・・・。それでも、なんとか4分21秒ペースでいけて自己ベストを更新できたので、これはやってよかったなと思いました。自分だけなら4分30秒の安全なペースだったと思うので、92分は出せなかったと思います。この時、別大用のシューズとしてヴェイパーネクスト%を履いたのですが、スピードに乗って心地よく走ることができ、これでいこうと決めることができました。
(2)interval(インターバル)
この時期一番効果があった練習は、インターバルです。これはトラックではなく、二重橋でやりました。この頃、トラックは早い人が多いので、私がいくと邪魔になるし、怖いなって思っていたので行きませんでした。ロードでの練習でしたが、あとでいろんな人から「60秒のレストはきついね。」と言われました。私は、そういうもんだと思っていたので、「きつい練習だなぁ。」ぐらいしか思っていなかったです(笑)。1000mを10本で、設定が4分10秒ぐらいだったのですが、4分6‐7秒と徐々に上げていき、最後は3分50秒ぐらいまで上げてやり切りました。インターバルは自分の走りの領域を広げてくれたので、今後もレース前にやりたいなと思っています。
Another Point -1
Q.「今後の目標は。」
A. 今、目指しているのはサブ3です。ウルトラマラソンも好きなので、サブ10を達成したいと思っています。サブ3達成のため、あと10分削るには1キロ15秒短くしないといけないので、かなり大変です。ただ、今、自分たちで考えたインターバルを始めたのですが、そうした新しいチャレンジを楽しみながらキロ4分で走ることに体が慣れていけば無理な目標ではないと思っています。言葉にするのは大事なことなので、サブ3を狙います(笑)。このレースでというのは、まだ決めていませんが、コロナ禍で、レースが中止になることが多いこともあり、この1年ぐらいの中で自分のタイミングとレースが合えば挑戦しよう、そんな感じで狙ってもいいかなと思っています。ウルトラに関しては、今はサブ3よりも達成したい気持ちが強いですね。攻略方法も少し見えてきましたし、2年前のサロマ湖100キロで10時間23分だったこともあり、次はサブ10を狙います。
Another Point-2
Q.「自分のランニングスタイルは、どういうものですか。」
A.私のスタイルは、「楽しい」がベースになっています。ランニングが仕事ですと真剣に取り組まないといけないですが、趣味ですからね。強制的に何かをしなきゃって思うことはないです。走ることは、今の私の生活のルーティンになっていて、走れないとしんどいなって思えるぐらい大切なものになっています。だからこそ、やっぱり楽しいがないと私はダメですね。
今までレースやSNSでたくさん応援の声をいただいて、すごく力になりました。これからは、私自身が走ることで誰かの力になれたらと思っています。私は「走るのって何が楽しいの?」って思っていた側なので、「そんな人でも走る楽しみを見つけられる、ランニングは苦しいだけじゃなくて、すごく素敵な趣味だよ!」って、みなさんに伝えていきたいですね。
2020年2月17日 別府大分毎日マラソン 3時間09分58秒。(1kmの平均ラップタイム)
0km -5km 22分30秒(4’30”)
5km-10km 22分17秒(4’27”)
10km-15km 22分17秒(4’27”)
15km-20km 22分21秒(4’28”)
20km-25km 22分40秒(4’32”)
25km-30km 22分26秒(4’29”)
30km-35km 22分45秒(4’33”)
35km-40km 22分57秒(4’35”)
40km-FINISH 10分02秒(4’34”)
元々は3時間15分カットが目標でした。コーチからは「ハーフまで4分30秒のペースを守っていけばいける。いけるところまでいこう。」と言われましたが、実際、ハーフまでキレイに4分30分を切るタイムを刻むことができました。37キロから足が重くなったのですが、「残り5キロだし、皇居一周だよ!」と自分に言い聞かせて、40キロを越えて時計を見ると、もう自己ベストが確実。それから楽しくてなって、あとはゴールするだけだって。最後、トラックに入る手前は、たくさんの人がいて、「がんばれ、最後だぞ!」って声かけられて、「あれ? 私、スター? みんな、私のこと見ている。」みたいな気持ちになって、かなりテンションが上がりましたね(笑)。
トラックに入ると、友人が大声で応援してくれて、手を振っていたら「手なんか振ってないで早くいけ!」って(笑)。2年連続でこのレースに応援しに来ていて、まさか自分が出られると思っていなかった夢の舞台で、しかも10分をカットできたので、終わったら涙、なみだ(笑)。いろんな方のおかげで、達成できたので、本当に感謝の気持ちでいっぱいでした。
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