大学陸上部の夏合宿。
8月、大学陸上部は夏合宿、真っ盛りです。
「夏を制する者が箱根を制する」とは、昔からよく言われていますが、春のトラックシーズンから秋の駅伝シーズンに向けて8月から9月までの夏休み期間、個人とともにチームを強化するのが、夏合宿の基本コンセプトになります。
基本的な1日の流れは各大学ともそんなに大きな違いがありません。簡単に追っていきますと、朝5時ぐらいから朝練習から始まります。全体で準備体操をして、それぞれ30分から1時間弱程度、ジョグして、朝食をとります。その後、多くの選手は寝たり、休んでいますが、青学大では学年ミーティングなどを行ったりしています。
午前練習は10時ぐらいから始まり、2時間ほどで終わります。メニューは、集団走だったり、筋トレだったり、それほどハードに練習する感じではありません。どちらかというと各自ジョグなど、自分のペースで練習しているケースが多いと思います。
昼食を食べて、午後練習は3時か4時ぐらいからスタートします。ポイント練習をしたり、30キロ走をしたり、午後練習はかなりハードになります。練習後、クールダウンして宿舎に戻り、お風呂に入って7時過ぎから夕食になります。
基本的に朝、午前、午後と3部練習で選手は練習漬けです。これだけ練習しているのですから、午後練習の終わりはハーハーゼーゼー息も絶え絶えかなと思いきや、意外と笑顔でクールダウンしています。1日の練習をやりきった充実感が選手の表情からうかがえます。
練習の消化率が高い場合、午前練習がオフになったり、午後練習がオフになったりします。しかし、オフになったからといって、特別な息抜きはできません。夏合宿はたいてい高山や高原で行われていることが多く、場所によってはコンビニなど車で30分ぐらい走らないと見えてこない場合もあります。もちろん近くに遊ぶところもありません。そういう場合、選手は『寝る』そうです。練習で疲れた体を休め、ひたすら寝ています。選手に聞くと、いくらでも寝れるそうです。俗世間から離れ、走って、食べて、寝る。それが大学陸上部の夏合宿なのです。
合宿で選手の唯一の楽しみが食事です。地場の食材をいかしたものを含め、栄養面が考慮され、食事は私たちが民宿で食べるものとはちょっと違います。親やOBなどから頻繁に差し入れが入るところは、食後にフルーツや甘いものが出ます。「それが唯一の楽しみなんですよね」と彼らは言いますが、今どきの学生にしてはちょっとかわいらしいですよね。
ホテルでの合宿の場合は、ビュッフェを利用しています。和洋中といろんなものが取れるので選手にはなかなか好評です。デザートも自分で考え、ゼリーの上にソフトクリームを載せたり、逆にソフトの上にチョコとかをトッピングしたり、選手たちは自分で「作る食」を楽しんでいます。ただ、ビュッフェの場合、食べ過ぎてしまうこともあり、選手たちは自己管理もしっかりしないといけません。体重増は、走りに大きく影響するので毎朝、体重計に乗って計測し、数日置きに血液検査をしています。
食事して、ケアして10時過ぎには就寝します。ちなみの東海大の一部の主力選手は低酸素テントに入って寝ています。慣れないと寝苦しいようですが、テント内を標高3000mと同じ環境に出来るので高地順応力の向上が期待できるそうです。
1次合宿が終わると帰省期間になります。大学によって異なりますが、だいたい1週間程度。それが終わると、夏合宿の後半戦に入ります。2次合宿では全日本インカレが9月頭にあるので、出場する選手は、その大会に向けた調整をしていますが、それ以外の選手は9月の選抜合宿に生き残るためのアピールの場にもなります。4月からのトラックシーズンに思うような結果が出せず、苦しんでいた選手にとっては、巻き返すラストチャンスでもあるのです。
9月の3次合宿となる選抜合宿に生き残った選手は、故障している選手を除いて駅伝シーズンの主力になります。だいたい、9月の選抜合宿のメンバーをみれば出雲駅伝、全日本大学駅伝までは走る選手が見えてきます。
「夏の甲子園」が終わると、次は「箱根駅伝」が大きくクローズアップされていきます。今年の主役たちがどのくらい夏合宿で成長してくるのか、楽しみでなりません。
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