駒沢大学の3冠なるか! 「第99回箱根駅伝」を優勝争いとシード権争いの2つの視点で予想する。
今年の学生3大駅伝のラストを飾る第99回箱根駅伝がいよいよ始まる。今年は、出雲、全日本を制した駒澤大学の強さが目立ち、箱根を制して3冠達成をしそうな勢いにある。おそらく総合優勝争いは、駒澤大を軸に、出雲、全日本でともに2位という成績をのこした国学大、そして箱根に滅法強い青学大の争いになると思われる。
その3校に順天堂大、東京国際大、中央大がつづきそうだが、今回の箱根で一番熱くなりそうなのがシード権確保を巡る争いだ。シード権は10位内に入れば、翌年の箱根駅伝の出場権を獲得できるもので、10月に開催される箱根駅伝予選会に出場する必要がなくなる。予選会に回るとこの時期にハーフをしっかり走れるように強化しなければならないので、仕上げが前倒しになり、スケジュールはタイトになってしまう。そのためにシード権を確保し、できるだけ予選会を回避したいとどこの監督も考えている。
では、どこの大学がシード権を獲得する可能性が高いのだろうか。まず、よほどの大ブレーキがない限り、駒澤大、国学大、青学大はシードを獲得するだろう。それにつづき順天堂大、中央大、創価大も戦力的には10位外に落ちる要素はない。これで6チームになるが、シードの残りは4枠になる。
ここをおそらく昨年4位の東洋大、5位の東京国際大、9位の帝京大、10位の法政大、11位の東海大、13位の早稲田大、14位の明治大、予選会1位の大東文化大、さらに城西大あたりで競う感じになるだろう。
東洋大は、駅伝シーズンに入ってからエースの松山和希(3年)を欠き、出雲9位、全日本8位と低迷した。1区の出遅れが致命傷となり、他区間に影響しての結果だが、それにしても戦力的には箱根でも5位内は十分狙える陣容だ。酒井俊幸監督は、目標を下方修正し、優勝ではなく3位内としたが、選手個々が持っている力を発揮すればシード権の確保はもちろん、3位内も目指せる力はある。前田義弘主将(4年)を軸に、梅崎蓮(2年)、石田洸介(2年)ら主力がどこまで自分の力を発揮できるか。
東京国際大は、今シーズン3本柱のひとりイェゴン・ヴィンセント(4年)の調子がもうひとつで出雲も全日本も出場しなかった。さらに山谷昌也(4年)も夏前から調子を崩し、今年は1度も駅伝を走っていない。丹所健(4年)も万全の状態とはいえず、全日本大学駅伝は2区8位という成績に終わった。チームの軸を担う存在が、総崩れ状態で、それを補うだけの戦力はまだない。箱根では彼らの復活と奮起が求められるが、果たしてどうなるか。
帝京大は、トラックシーズンは目立った活躍をした選手がおらず、全日本大学駅伝の予選会も9位に終わり、本戦への出場を逃した。出雲は11位と惨敗したが、全日本がなかったので、箱根に向けて練習に集中できている。遠藤大地や細谷翔馬が卒業した穴は大きいが、ハーフには強さをみせつける大学でもある。11月の1万m記録会で29分00秒47のタイムを出した柴戸遼太ら力のある1年生が3人エントリ―しているので、彼らの活躍がシード権確保には不可欠だ。
法政大は、今年の出雲駅伝7位ながら箱根が楽しみなチームに仕上がっている。主将の内田隼太(4年)が上尾ハーフで62分12秒の自己ベスト更新、松永伶(3年)は62分03秒で法大タイ記録をマークした。山の区間は前回6区2位の武田和馬(2年)がおり、5区16位とブレーキになった細迫海気(3年)は昨年の借りを返すべく再び5区に挑戦するという。箱根経験者8名を残したチームに中間層も高いレベルで育ってきた。2年連続のシード、目標である5位内はともに達成可能なレベルにある。
東海大は、大きく差を付けられる山の5区の主力である吉田響(2年)の欠場が痛い。4区までは厳しい戦いを強いられても5区で挽回できるチャンスがあったからだ。だが、その作戦ができなくなったことで、他の区間に対する負担は大きくなった。エースの石原翔太郎(3年)が戻ってきたのは朗報だが、彼一人だけでは戦えない。他の中間層の奮起がなければシード圏内に入ることは難しいだろう。
早稲田大は、花田勝彦監督が就任し、チーム内改革を進めてきた。選手との面談とメリハリをつけて負担のない練習に取り組むことで、ケガ人が激減し、主力がスムーズに走れているのが大きい。ただ、中間層がまだまだゆえに復路に課題が残る。そこを我慢して乗り切れるか。
明治大は、戦力はトップ5にも匹敵するほど充実しているが、ここ2年間の箱根は11位、14位と予想外の結果に終わっている。主力のブレーキが最大の要因だが、力を発揮できないのはどこに要因があるのか。序盤にミスのない走りを実現できれば、2020年以来のシードは十分射程圏内にある。
予選会組では、トップ通過した大東文化大。箱根は2019年以来の出場になるが、その前哨戦となる全日本大学駅伝は14位に終わった。1区区間賞を獲ったピーター・ワンジル(2年)が好調だが、大野陽人(4年)、久保田徹(3年)ら主力が箱根の前半区間で10位内のレースができればピーターを復路で起用し、一気にシード権をという展開にもっていけるだろう。
城西大は予選会3位だが、戦力は充実している。大学初の留学生であるヴィクター・キムタイ(1年)は62分21秒で予選会6位と好調を維持。また、シード確保には欠かせない山の区間も2年前に山を駆けた5区山本唯翔(3年)と6区野村颯斗(3年)が控えている。序盤で流れを掴み、山でシード圏内を走れていれば2018年以来のシード権獲得が見えてくるだろう。
今回箱根のシード権を狙う大学は、戦力が拮抗しており、どこがその椅子を獲得するのか予想が難しい。読めないだけに、レース本番は面白さが増す。優勝争いとともにシード権争いは、より白熱しそうだ。