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COLUMN

開幕直前! 3つのキーワードで紐解く、第98回箱根駅伝・優勝展開予想。

2021.12.30
Shun Sato

4日後にスタートを控えた12月29日、区間エントリ―が発表され、箱根駅伝はいよいよスタートを待つばかりになる。各大学の区間配置の面子を見ていると、もはや1チームが独走するような展開にはならない。往路は、お互いを叩き合う激しい展開になりそうだ。

では、どこが総合優勝につながる往路を制していくのだろうか。

まず、前回の総合優勝校であり、今シーズン全日本大学駅伝を制した駒澤大学。さらに出雲駅伝2位、全日本大学駅伝2位と安定した力を発揮している青学大の伝統校。そして、昨年9区までトップを快走した創価大。出雲4位、全日本4位とこちらも安定した力を発揮し、総合優勝への機運が高まっている国学大。そして、怪物ヴィンセントを擁し、出雲駅伝初出場初優勝を果たし、全日本5位と日の出の勢いのごとく駅伝シーンの表舞台に躍り出た東京国際大ら新興勢力の3チーム。これら5チームの争いになるとみる。

箱根を制するには「エース」、「山」の要素に、「ミスなし」という条件が必要になる。
5チームの内、「エース」と「山」の条件を満たしているのが、創価大だ。2区にはエースで留学生のフィリップ・ムルワ(3年)がおり、4区に日本人エースの嶋津雄大(3年)、5区は山のスペシャリストの三上雄太(3年)がいる。前回3区3位の葛西潤(3年)は補欠登録だが、11月に1万m28分43秒40を出し上り調子で、おそらく当日変更で3区に入るだろう。前回大会は、4区の嶋津でトップに立ち、9区までトップを維持し、箱根を駆け抜けた。今回は「狙って総合3位内」と嶋津は語るが、往路を制すれば、今年こそはと復路の選手は燃えるはず。選手の質は往路では伝統校&強豪校に劣らない充実度で今回の箱根の主役に踊り出そうだ。

駒大は、大エースに田澤廉(3年)という怪物がおり、日本人エースの鈴木芽吹(2年)、唐澤拓海(2年)に加え、2年生を軸とした選手層の厚さは青学大と双璧を成す。ただ、鈴木は疲労骨折で出雲、全日本を回避しており、今回も補欠に回っている。果たして、往路を走れるまでに状態が上がっているのか? 鈴木が出走する目途がついているのであれば、1区に入った唐澤とともに往路を制する面子が揃うことになる。また、山の候補も大八木監督は「秘密兵器がいる。」と語り、金子伊吹(2年)を投入した。果たして前回4位の鈴木レベルの走りを実現できるかどうか。田澤の2区と5区で相殺されると駒大は往路を制するのは難しくなる。復路も前回は2分21秒差をひっくり返したが、創価大の10区のブレーキに助けられたこともあり、そういう意味では往路で2分以内が駒大の復路逆転劇の目安になるだろう。


青学大もエースに近藤幸太郎(3年)がおり、山も補欠の飯田貴之(4年)が入ればある程度の計算ができる。エントリ―メンバー全員が1万m28分台でバランスが非常に素晴らしいが、大砲といわれるような選手がいない。1区は湯原慶吾(4年)が配置されたが、果たしてこのままでいくのか。出走した時、どんな走りを見せるのか。青学大は、1区がトップと僅差で襷を繋げれば力のある選手がつづくので、ミスがない限り、大きく引き離されることはない。往路で我慢して、復路で逆転という原晋監督のシナリオは現実味を帯びてくる。

国学大は、チーム全体のレベルが高く、山には激坂を学生トップでフィニッシュした殿地琢朗(4年)が配置され、往路は伝統校&強豪校に劣らないオーダーを組んでいる。1区には、過去3大会連続して1区を走った藤木宏太が補欠から当日変更で1区に入るだろう。2区の伊地知賢造(2年)は、「チーム内でもっとも調子がいい。」と前田監督が太鼓判を押しており、ヴィンセントに対して、どのくらい粘れるのか。また、ルーキーながら出雲6区5位、全日本7区3位といずれもエース区間を走った平林清澄(1年)は、補欠にまわったが当日変更で3区に入りそうだ。国学大としてはベストメンバーで臨めるわけだが、唯一の不安は大砲がいないことだ。田澤や三浦龍司(順大)のような爆発的な走りをする選手が不在なので、大きく離されるとゲームをリセットできなくなり、ずるずると後退してしまう可能性がある。国学大が力を発揮するのは、トップに近いところで勝負しつづけ、復路でもアベレージの高い走りで徐々に差を詰めていく展開だ。粘り強いレースを実現することで、勝機が見えてくる。

東京国際大は、大エースにヴィンセント(3年)、日本人エースには丹所健(3年)、山谷昌也(3年)がおり、この3人を往路に並べるだけで、トップ快走を容易に想像ができるほど強力だ。山谷は1区、ヴィンセントは2区に配置され、3区予定の丹所は補欠からのスタートになった。4区には1万mで部内4番目のタイムを持つ堀畑佳吾(2年)が入り、平地の4区間は部内トップの選手が出走することになるだろう。山はルーキーの倉掛響(1年)に託されたが、自ら5区志望で初の箱根に臨む。5区で区間5位内にはいってくれば往路制覇は、ほぼ手中にあると言っても過言ではない。


往路の優勝争いを展開するであろう5チームに食い込んできそうなのが、オリンピアンの三浦龍司(2年)を擁する順天堂大。そして1万m27分台のタイムを持つ中谷雄飛(4年)、太田直希(4年)、井川龍人(3年)が往路に並んだ早稲田大。予選会トップ通過で分厚い選手層を持つ明大も展開次第では、往路の優勝争いに割って入ってきそうだ。

駒大、青学大のプランである復路での逆転優勝を狙うのではあれば6区、7区、8区で追い上げ、9区、10区で勝負という展開になっていくだろう。そうなると、全日本大学駅伝同様、アンカー勝負に成りえる。ただ、2校以外が優勝する場合は、往路優勝からそのまま10区まで行き切る可能性がある。その場合、創価大、国学大、東京国際大にチャンスがある。

その中で勝敗を分けるものがあるとすれば、ミスだ。

以前なら一つのミスがあっても他の区間でリセットして、立て直すこともができたが、今はそのひとつが命取りになる。いかに全区間でミスをなくし、かつ選手の力を100%に近い状態で発揮できるか。些細な隙も不安も見せず、完璧にマネジメントしたチームが最初にフィニッシュラインを切ることになる。伝統校&強豪校が維持を見せるのか。それとも新興勢力が勢いを見せて、箱根の勢力図をぬりかえていくのか。どちらに転んでも史上最高のドラマが見られることになるはずだ。

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著者の「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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