旅ランのすすめ
~WE RUN THE WORLD, AROUND THE WORLD~
ランニング、特にオンロードランニングは、基本的に同じ動作の繰り返しになるので、どちらかというと単調に感じる人は少なくありません。この単調さゆえに、走ることに飽きてしまうという話をよく聞きます。ランニングを続けるには何らかのモチベーションが必要で、時々走るコースを変えることは効果的で、新鮮な気持ちで走ることができるでしょう。このコラムは、海外渡航300回以上、43都道府県を訪れた南井編集長による「旅ランのすすめ」。南井編集長が実際に走ったお気に入りの旅ランコースを紹介します。
これまで世界中の街を走ってきたので、「コラムの第1回はどこにしようかな?」と悩みましたが、つい最近走ったばかりで、記憶が鮮明な函館を紹介することにします。今回、函館の街を走ったのは、7月7日に開催されるゴールドコーストマラソンのために走り込みがしたかったから。「東京は梅雨に入っているだろう!?」という考えから、梅雨のない北海道の函館で観光を兼ねて走ることにしたのです。
まず、到着した日の夕方から10kmを目安に走ります。滞在先の松風町から函館の観光名所である五稜郭を目指し、1周1,815mの五稜郭公園の外周を走り、函館駅経由で松風町へ戻るというコース。五稜郭公園では何人かのランナーを見かけましたが、当地の人気ランニングコースと聞いていただけのことがあります。函館の街は信号の変わるタイミングは悪くなく、走っていてストレスになりません。同じ北海道でも、札幌は信号の変わるタイミングがランナーフレンドリーでなく、少し走っては停まるの繰り返しなので。走った後はホテルのサウナで汗を流し、地元のランナーのみなさんと杯を交わしました。
2日目は、6kmを目安に走るべくスタート。コースは、こちらも観光名所の赤レンガ倉庫を目的地に設定します。赤レンガ倉庫は、イベント、グルメ、ショッピングを楽しむことができる函館ベイエリアのランドマークとしてポピュラーなスポットだけに、国内外の観光客でごった返していましたが、走りにくいということは全くなく、ちょうど入港した大型クルーズ船を遠くに眺めながら、ゆっくりペースのランを楽しむことができました。
3日目は今回のメイン、25kmランです。松風町から立待岬を目指し、松風町に戻ったあとは、五稜郭公園を25kmになるまで周回を重ねるというコース設定。まず立待岬を目指しますが、途中に地蔵堂や石川啄木一族の墓を通ります。後者は石川啄木の遺志により、遺骨は病死した東京から函館に運ばれ、函館滞在中に愛していた大森浜を望む場所に葬られました。この墓地がある道は勾配が厳しく、歩きたくなりますが、トレ―ニングだと思って数百メートルの急坂を走り続けると立待岬に到着します。ここは函館山の南東に突き出ている津軽海峡に面した岬で、断崖絶壁で周りを海で囲まれており、快晴の日には絶景となります。当日は曇りで眺望はいまいちでしたが、訪れて損のないスポットだと思います。立待岬は北海道を代表する花、ハマナスの公園があることでも知られており、この日は日本人観光客だけでなく、海外からの観光客も数多く見られました。
立待岬を後にし、2日前に訪れた五稜郭公園を目指します。再び訪れようと思ったのは、最初に訪れたときに初めて知ったのですが、ただ走るだけでは、その独特の形状を視認することはできず、隣接して建てられている五稜郭タワーの展望台に登って初めて星形の城跡を確認することができると分かったから。15km手前で五稜郭公園に到着。それからは外周だけでなく、お堀の内側もぐるぐる走り、箱館奉行所の前も通り、さらに外周を数周して目標距離である25kmを走破。ゆっくりペースでしたが、レース以外で久しぶりに長距離を走ったので、満足感と心地よい疲労感を同時に感じることができました。走り終わったあとにストレッチをして、汗拭きシートで身体を拭いたあとに五稜郭タワーへ。展望台から眺められる風景は「素晴らしい!」のひと言。テレビでは何度も見たことのある五稜郭独自の五角形は本当に美しい。函館を訪れたら絶対に行ってほしいスポットです。函館山の展望台からの100万ドルの夜景も素晴らしいですが、個人的には五稜郭タワーから眺める五稜郭の景色のほうに軍配を上げます。
函館の街は東京、札幌あたりと比較するとコンパクトで、ほとんどのスポットへはランで行くことが可能です。また空港から市街地の距離も8kmほどと近いので、2泊のような短い旅程でも時間を有効活用できます。そして旅ランの魅力として忘れられないグルメも、「ラッキーピエロ」のチャイニーズチキンバーガーや「ハセガワストア」のやきとり弁当、「滋養軒」の塩ラーメンetc.安くて美味しいメニューも充実。走った後のB級グルメは本当に最高です。函館の街は初めてでしたが、本当に気に入ったので、秋に再度訪れようと思っています。もちろん旅ラン&B級グルメを目的に!
今回の旅ランで活躍したランニングギア
HOKA
SKYWARD X
25kmを走った際のシューズは、<ホカ>のスカイワードXをセレクト。超厚底のカーボンプレート内蔵シューズですが、ゆっくりペースだけでなく、速めのペースにも充分対応してくれるのが有難い。その抜群の推進力は、25km地点のラップが最も速く5分52秒だったことでも証明されています。自然とストライドが伸びる感覚は、このシューズならではですね。
MIZUNO
NEO VISTA
正式リリースの前に、先行でトライさせていただいていた<ミズノ>の最新シューズを11kmランと6kmランで着用しました。「ジョグこそがスピードを生み出す」をコンセプトに開発されたシューズは、特許取得のスムーズスピードアシストを搭載しており、柔軟で反発性に優れたMIZUNO ENERZY NXTをミッドソールに用いたことで、足裏にスーパーボールが付いているかのような跳ねる感覚。フィット感に優れたニットアッパー、ミッドカットデザインもあいまって、ランナーの脚力を無駄なくシューズ、そして路面へと連動することで、無理なくペースアップすることができました。
OAKLEY
SPHAERA
世界の舞台で活躍するトップアスリートから着想を得て、すべてのニーズに応えデザインされたサングラス。これまでは同ブランドのレーダーが最高の掛け心地だと思っていましたが、このスフィエラがその考えを覆しました。フィット感が本当に秀逸で、25kmの走行中に掛けていることを忘れてしまうほど快適な着用感で、パリ五輪でもこのプロダクトを使用するアスリートの活躍を確認することができそうです。
Ciele ATHLETICS
GO Cap Elite
従来の同ブランドのキャップもフィット感や通気性、吸汗速乾性は高いレベルにありましたが、今回着用したこちらはすべての機能性がワンランク上。被らないときはコンパクトに畳むことができ、ショーツなどのポケットに収納できるのも嬉しいですね。