• instagram
  • youtube
  • rss
スタイリッシュに速く走りたい、すべてのランナーへ
  • instagram
  • youtube
  • rss
COLUMN

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ。

2024.12.29
GO KAKUTANI

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ

アメリカ・カリフォルニア州に在住し、同州の高校でクロスカントリー走部のヘッドコーチを務める角谷剛氏による連載コラム。今回は、ロサンゼルス南部の海岸線を走る、鉄道を使った旅ランをご紹介します。アメリカの鉄道は日本人にとってあまり馴染みのないものですが、ランニングと組み合わせることで、これが魅力的なプランへと様変わり。ローカルがオススメする、鉄道旅&ランに出かけてみるのもおもしろそうです。

ロサンゼルスの南側に位置するオレンジ郡南部(テレビドラマ『The O.C.』の舞台です)からサンディエゴ北部にかけての海岸線には鉄道が走っています。全米にネットワークをもつ長距離鉄道の「Amtrak」とロサンゼルス近辺の地域鉄道「Metro Link」が同じ線路を使ってそれぞれの便を運用しています。

ところどころでは、太平洋が文字通り目の前に広がっている駅もいくつかあります。列車から降りると、すぐそこがビーチです。そのなかのひとつ、ロサンゼルスとサンディエゴのほぼ中間地点にあたるサンクレメンテ(San Clemente)付近は、ランニング愛好家と鉄道ファンを同時に満足させてくれる穴場かもしれません。

近くで汽笛を聞きながら。

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ

San Clemente State Beach

このあたりの線路は単線です。南へ向かう列車と北へ向かう列車が交互に行き来します。もっとも、便数は1時間に1本もあれば多いくらいですので、しょっちゅう汽笛を聞くと言うわけではありません。

線路のすぐ脇をトレイルが通っていて、そこを歩いたり走ったりできるのですが、場所によっては柵さえありません。列車は人の数メートル横を、轟音を立てながら走っていきます。映画「スタンド・バイ・ミー」のシーンを思い出したりもします。現実に事故もあるでしょうし、危ないだろう、とは思うのですが、とにかくそうなっているのです。

何はともあれ、線路の西側には海、東側には崖が迫った、サンクレメンテあたりのトレイルがとくに私のお気に入りです。路面はよく整備されたダートで、海に面した平坦な道です。時々、列車が通り過ぎる以外は、波の音と潮風だけを感じて走ることができます。

このあたりは自動車では近づくことはできません。列車の車窓から景色を眺めるか、あるいは自分の足か自転車を使ってやって来るしかないのです。私はどれもやったことがありますが、やはり走るのが一番好きです。走り疲れたときは、ひょいと線路をまたいで、砂浜に寝転ぶことも、海に入って体を冷やすなんてこともできるのです。

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ

駅の近くではトレイルは海側を走る。

山中を走るトレイルランと違い、海岸線に沿って走る限りは道に迷う心配はありません。心身共にリラックスして、いかにも南カリフォルニアらしい海岸の景色を眺めながら走り、好きなところで鉄道に乗って戻るといった片道旅行だって可能です。

サンクレメンテの駅があるピア(桟橋)付近はやや賑やかです。レストランやコーヒーショップもありますので、旅ランの起点あるいは終点にするには十分でしょう。1泊したい人は、駅の向こう側にはホテルもあります。

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ

San Clemente Pier

無人駅を通る列車に乗るには。

ところで、駅と言っても、そこには改札もなければプラットフォームもありません。地面と同じレベルで線路が走っています。駅員の姿も見えません。自動販売機で切符を購入できますが、それすらもないこともあります。

サンクレメンテに限ったわけではなく、アメリカの鉄道にはそんな無人駅は珍しくありません。というか、むしろそちらの方が多いのではないでしょうか。

南カリフォルニアの海岸線を走る、鉄道旅&ランのススメ

Encinitas駅。サンクレメンテから南へ約50km。

自動販売機がない場合、乗客はあらかじめオンラインで切符を購入しておくこともできますが、大抵の場合は停まった列車にそのまま手ぶらで乗り込みます。しばらくすると車掌さんが車内を巡回してきますので、そのときに事前購入したスマホの切符を見せるか、あるいはクレジットカードで新たに購入するというわけです。

仕組みはそうなっているはずなのですが、実際には列車に乗り込んでから目的の駅で降りるまでとうとう車掌さんがやって来なかったなんてことを何回も経験しています。降りた駅にも改札はありませんので、誰にも見咎められることはありません。心ならずも無賃乗車してしまったというわけです。

そんなことではいかんじゃろと言われるかもしれませんが、けっしておカネを払いたくなかったのではなく、払う方法がなかったのだとご理解ください。

大らかと言うべきか、いい加減と言うべきか、アメリカの鉄道システムは日本のように緻密ではありません。多分、世界中を見渡してみても、日本が例外的に優秀なのではないかと思いますけど。

「Amtrak」も「Metro Link」も、便数は少ないうえに、しょっちゅう遅れます。新幹線のように速くもありません。それでいて、運賃は他の交通手段と比べて安いわけでもありません。便利か不便かという角度で比較すると、日本の鉄道の足元にも及ばないでしょう。

その分、アメリカの鉄道利用者は少なく、席に座れないなんてことは滅多にありません。ゆったりとした気分で旅をするにはうってつけだと思います。アメリカにはそんな鉄道&旅ランができる場所は他にもたくさんありますけど、日本から訪れやすいという意味で、サンクレメンテ付近はオススメです。

Go Kakutani
角谷 剛
アメリカ・カリフォルニア州在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持ち、現在はカニリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務めるほか、同州ラグナヒルズ高校で野球部コーチを兼任。また、カリフォルア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に電子書籍『ランニングと科学を斜め読みする: 走りながら学ぶ 学びながら走る』がある。https://www.amazon.co.jp/dp/B08Y7XMD9B 公式Facebook:https://www.facebook.com/WriterKakutani
RECOMMEND
CATEGORIES