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COLUMN

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

2025.04.30
GO KAKUTANI

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

アメリカ・カリフォルニア州に在住し、同州の高校でクロスカントリー走部のヘッドコーチを務める角谷剛氏による連載コラム。今回は、ランナーにとって重要な膝をどうすれば守ることができるのか、そのための筋トレにフォーカス。よく耳にする大腿四頭筋やハムストリングス、その鍛え方と効果をご紹介します。

膝の痛みはランナーの泣き所です。走力や経験のレベルにかかわらず、膝の関節炎に苦しむランナーは数多くいます。ただ走れなくなるならまだしも、症状が治療困難なレベルにまで悪化して、日常生活に支障をきたすようになると、人工関節に置き換える手術も選択肢に入ってきます。言うまでもないことですが、手術には時間も費用もかかりますので、できれば避けて通りたい選択肢です。

そうならないために予防策のひとつとして、筋トレで脚の筋肉を鍛えることが一般的に奨励されています。筋肉の鎧で関節を守るというわけです。

しかし、脚には多くの筋肉群がありますし、それを鍛える筋トレとひと言で言っても、その種目は多岐に渡ります。脚のどの部分の筋肉を優先的に鍛えるべきか、そしてどのような種目を選択するべきかについては、これまであまり明らかではありませんでした。その点について、2023年11月に行われた北米放射線学会(RSNA)の年次会議において、興味深い研究が報告されました。

膝の変形性関節症を予防するという観点から、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)と後面のそれ(ハムストリングス)のどちらを鍛えることがより効果的であるかを調べたものです。

大腿四頭筋>ハムストリングスが人工膝関節置換手術のリスクを減らす。

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

研究を発表したカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校のウパサナ・ウパディヤイ・バラドワジ医学博士と研究グループは、134人の被験者を対象にして、太ももの筋肉体積を調べました。被験者たちの半数は以前に人工膝関節置換手術を受けたことがあった人たちで、彼らの手術時、2年前、そして4年前における太股のMRIイメージも解析されました。被験者の残り半数はその手術を受けたことがない人たちです。

すると、大腿四頭筋の筋肉体積がハムストリングスのそれより大きい人は、人工膝関節置換手術を必要とするリスクが小さくなることが分かりました。加えて、ハムストリングスと薄筋(太ももの内側にある長くて薄い筋肉)の体積がより大きいことは、人工膝関節置換手術の可能性を高めることも明らかになりました。

「私たちの研究結果は、個々の筋肉を鍛えることに加えて、大腿四頭筋をハムストリングスより大きくすることが、2年から4年までの期間で人工膝関節置換手術のリスクを軽減することに繋がると示唆しています」とバラドワジ医学博士はプレスリリースで述べています。

目的に沿った筋トレの重要性。

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

大腿四頭筋は身体での中で最も大きい筋肉群であり、重力に抵抗して立ったり、歩いたりするときに重要な筋肉です。ハムストリングスは股関節の伸展や膝関節の屈曲などの役割を担います。

大腿四頭筋とハムストリングスは互いの拮抗筋として作用しています。膝を伸ばす時は大腿四頭筋が主動筋となり、ハムストリングスが拮抗筋となります。反対に膝を曲げる時はハムストリングスが主動筋となり、大腿四頭筋が拮抗筋となります。この2つの筋肉群のバランスは、ランニングを始めとする多くの身体動作を可能にすると同時に、膝関節を守る役目もはたしています。

走るという動作から見ると、ハムストリングスは身体を前に進めるためのアクセルに、大腿四頭筋は止まるためのブレーキに、それぞれの役割が例えられることがあります。坂道を登ることが得意なタイプ、たとえば箱根駅伝の往路5区を走るランナーはハムストリングスが強いはずですし、坂道を下ることが得意な復路6区を走るランナーの大腿四頭筋は強いはずです。

単純に短距離を一直線に速く走ることを考えるならば、ハムストリングスをより重点的に鍛えることが有効です。しかしながら、膝関節を故障から守るという目的のためには、大腿四頭筋の優先順位を上位にするべきなのかもしれません。

一般的な筋トレマシンを例にすると、レッグ・エクステンションは大腿四頭筋を主に鍛え、レッグ・カールはハムストリングスを主に鍛えます。フリーウェイト種目では本来の目的は多くの筋肉を同時に鍛えることですが、スクワットは大腿四頭筋を鍛えやすく、デッドリフトはハムストリングスを鍛えやすいという特徴があります。

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

スクワット

ランナーの膝を守る筋トレ種目は?

デッドリフト

つまり、膝を守るためにはレッグ・エクステンションやスクワット、速く走るためにはレッグ・カールやデッドリフトがより効果的だと言えそうです。

それぞれ自分の目的に合わせて、筋トレ種目を選ぶとよいでしょう。ただし、上はあくまで、どの部分の筋肉をより多く使うかという比率の問題であって、どちらかが100でどちらかが0になると言うわけでは勿論ありません。どんな筋トレでもやらないよりはやるほうがよい、が私の信条です。

Go Kakutani
角谷 剛
アメリカ・カリフォルニア州在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持ち、現在はカニリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務めるほか、同州ラグナヒルズ高校で野球部コーチを兼任。また、カリフォルア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に電子書籍『ランニングと科学を斜め読みする: 走りながら学ぶ 学びながら走る』がある。https://www.amazon.co.jp/dp/B08Y7XMD9B 公式Facebook:https://www.facebook.com/WriterKakutani
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