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SPECIAL

日本の凄さを再発見! DISCOVER JAPAN TECHNOLOGY. Part.4 YONEX

2021.04.30
DAIKI SUZUKI
MASAHIRO MINAI

日本ブランドの研究開発施設を探訪する「日本の凄さを再発見!」、第4弾。

日本のスポーツブランドの研究開発施設に潜入する「DISCOVER JAPAN TECHNOLOGY.」企画第4弾。今回は、カーボンファイバーを活用してきた先駆者、ヨネックス社を探訪する。

カーボンファイバーを活用してきた先駆者として!

ヨネックスの原点は、1946年に創業者の米山稔氏が、新潟県三島郡(現長岡市)で木製品の製造販売を開始したことから。当初の生産品目は木製ウキなどであった。1957年よりバドミントンラケットの生産を開始したことが、スポーツ用品参入の第一歩であった。1969年にはテニスラケットの製造も開始。1973年には、カーボンファイバーを使用したバドミントンラケットであるT-8200、ソフトテニスラケットのTS-7100を発表。他に先駆けてこの素材を採用したことで、これ以降、ヨネックスにはカーボンファイバーを使用したスポーツ用品の開発、及び製造ノウハウが蓄積されていった。

この当時、スポーツシューズとカーボンファイバーは全く無縁だったことを考えると、このことは後々で大きなアドバンテージとなる。それ以降もヨネックスはスノーボード、ゴルフetc.といったカテゴリーでカーボンファイバーを使用したプロダクトをリリースし、ユーザーから高い評価を得ることとなる。

‘90年代に入るといくつかのスポーツシューズブランドが、土踏まず部分のサポート性を確保するためにカーボンファイバーを使用するようになる。しかしながら、現在のように素材特有のしなりを求めたことではなく、前述のアーチ部分のサポート性強化と軽量性確保の意味合いが大きかった。1997年、スポーツ業界におけるカーボンファイバーを活用する先駆者として、ヨネックスもテニスシューズ(SHT-290)とバドミントンシューズ(SHB-80)に初めてカーボンファイバープレートを採用し、アスリートから高評価を得ることに成功。そして2019年、セーフラン100でフルレングスのカーボンファイバープレートを採用。翌2020年には、安定性を重視するためにプレートを調整したセーフラン200もリリース。2021年には、サブ4を目指すランナーのために推進力を向上させるセッティングのカーボンファイバープレート内蔵のセーフランエアラスを発売する。

ヨネックスのラケット工場。ご存じの通り、大坂なおみ選手が使用するカーボンファイバー製ラケットもヨネックス製だ。

桃田賢斗選手を始めとして、バドミントンの世界ではトップ選手の多くがヨネックス製のカーボンファイバーラケットを使用している。

 

スポーツシューズにもカーボンファイバーを応用!

テニスやバドミントンにおけるトップブランドというイメージに加え、セーフラン100、セーフラン200といったカーボンファイバープレート内蔵モデルのリリースにより、最近はランニングカテゴリーにおいても高評価を獲得しつつあるヨネックス。メインの研究開発施設は新潟県に置かれているが、スポーツシューズに関しては東京本社からさほど遠くない埼玉県にも研究開発施設がある。それがヨネックス シューズ研究所。2016年から稼働しているこの施設では、スポーツシューズに関する基礎研究やプロトタイプの製作が行われている。

製品開発部でランニングシューズの企画・設計・デザインを担当する横山雄樹氏に、この施設を案内してもらった。「こちらの施設では、スポーツシューズ関連の基礎研究を行っています。新たに開発するプロダクトの試作品を製作したり、素材の開発、テストetc.を行っています。これまでに衝撃吸収反発素材のパワークッションプラス、ミッドソール素材のフェザーバウンスフォーム、新製品のセーフラン エアラスに採用されるミッドソール素材のフェザーライトXは、こちらのシューズ研究所で開発されました」という。

 

ランニングシューズの企画・設計・デザインを担当する横山雄樹氏。

また、最近のヨネックスのランニングシューズの大きな特徴となっているカーボンファイバープレートに関しても「新潟の開発拠点にはカーボン成型のプロフェッショナルが揃っているので、そちらとの連携でカーボンファイバープレートの試作も繰り返しました。カーボンファイバープレート内蔵の3種類のランニングシューズは、それぞれ異なった形状のプレートが内蔵されています。セーフラン100には、ヒール着地に対応した安定性を高める形状とし、硬度を上げ過ぎると下腿筋を痛めるので、ある程度のしなり感を持たせています。セーフラン200は、ゆっくり走るランナーをターゲットとし、最も安定性を重視。中足部は曲がらない構造ですが前足部はしなりやすくなっています。セーフラン エアラスは、中足部着地を促す構造で、転がり感を重視。それに伴いカーボンファイバープレートも弧を描く形状で、親指側のプレートを延長することで蹴りだしをスムーズにしました」というように、この施設を拠点にトライ&エラーが行われ、最終的なスペックが決定したという。

シューズに内蔵されるカーボンファイバープレート。右からエアラス用、セーフラン100用、セーフラン200用。

最終的に形状や硬度が決定されるまでにいくつものカーボンファイバープレートのプロトタイプが製作された。

他のスポーツカテゴリーで培ったカーボンファイバーに関するノウハウを、スポーツシューズに活用することに成功。

そして、このシューズ研究所の自慢のひとつといえる機材が、衝撃吸収性反発性評価試験機である。「この試験機は一からヨネックスが開発したオリジナル。衝撃吸収性と反発性を同時に計測することができる点が画期的です。どれくらいの高さまで跳ね上がったかをレーザー計測することで反発性を数値化。衝撃吸収性は加速度センサーを活用することで計測します。素材の試験片だけでなく、シューズの状態でも衝撃吸収反発性が測れる点も、他ブランドが使用する一般的な試験機より優れていると思います」とのこと。この試験機を活用した新たなクッショニングマテリアルの登場にも期待したいところだ。

素材の衝撃吸収性と反発性を同時に測定できるオリジナルマシン。測定されているのはヨネックスが誇る衝撃吸収反発素材であるパワークッションだ。

※本企画は、Runners Pulse Vol.07の記事を再編集してお届けしています。

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