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COLUMN

「戦国」箱根駅伝、注目のポイントとは?

2019.12.23
Shun Sato
Shun Sato

今年の箱根駅伝は、「戦国駅伝」と言われている。

各大学の実力が伯仲し、格差がかなり薄まりつつあることからそう言われているわけだが、実際、出雲駅伝では国学大が大学3強と言われた東海大、青学大、東洋大に走り勝ち、初優勝を果たした。全日本大学駅伝は地力を見せた東海大が青学大に競り勝ったが、ミスがなければどこの大学が勝ってもおかしくはない展開だった。

では、箱根は、どこが制するのか。
その上で注目するポイントは3つある。

まず、往路区間である。
国学大は「往路優勝、総合3位」を目標にしている。土方英和、浦野雄平のダブルエースを擁し、往路に出雲優勝を果たしたメンバーを惜しみなくつぎ込み、爪痕を残す戦略だ。往路で多くの貯金を作ることができれば復路は余裕を持って戦える。国学大の場合、復路は往路に比べて選手層が薄くなるので、往路だけの「片道切符」になる可能性もあるが、そういう戦い方は潤沢な戦力がないチームにとって決してネガティブではない。むしろ「攻めの駅伝」で「もしかすると」という展開を生むかもしれない。

東洋大も昨年、往路優勝を果たすなど往路に強い。また、エースの伊藤達彦と留学生のヴィンセントという2枚の大砲を持つ東京国際大も往路で暴れ回り、8位シード権獲得を目指している。例年1区はお互い様子見でスローペースになるが、東京国際大など往路優勝を狙うチームが1区からハイスピードで展開していくと、例年にない荒れた駅伝が見られることになり、めまぐるしく順位が変わる可能性が出てくる。国学大や東京国際大に引っ張られる今年の往路は目が離せない。

もうひとつは、エースの走りだ。
今年は大砲と称されるエースがいくつかの大学に存在する。
東京国際大の伊藤達彦、国学大の土方英和、浦野雄平に加え、東洋大の相澤晃は日本の陸上界を代表するエースに成長しつつある。チームは彼らを軸に区間配置を行うが、彼らを活かすために、どんな配置をしてくるのか。エースを最大限に生かす区間配置ができれば、相手との差をさらに広げ、逆に離された距離を一気に詰めることができる。エースの称号を得た選手たちの走りはチームの成績に直結するので、注目だ。

3つ目のポイントは、復路の8区である。
昨年、東海大が優勝した時、東洋大を逆転したのが8区だった。今年も東海大は往路については我慢の駅伝をして、復路に攻めに転じるという戦略を描いている。青学大も往路は我慢し、復路での逆転優勝を狙っている。もともと青学大は往路よりも復路に強い大学で、3連覇、4連覇した時に8区に下田裕太を置き、盤石の走りで優勝を確実にしている。

今年は往路区間がかなりもつれる気配だが、復路では選手層の厚いチームが実力を発揮するだろう。特に8区は選手が薄くなるところだが優勝を狙う大学はここにエース級の選手を置いてくる。昨年同様に、東海大がここでトップに立つことができるのか。それとも他校が粘りのレースを見せて9区10区にもつれるレース展開を見せるのか。8区までに上位にいた大学が優勝を争うのは間違いないだろうし、8区は優勝を左右する区間になるだろう。

注目すべきポイントを挙げたが、最終的に優勝に届くチームは、戦力的には東海大、青学大、東洋大、駒沢大の4校だろう。東洋大には大エースの相澤がおり、彼を軸に戦略を立てられるので、区間配置がある意味非常にやりやすい。

一方、東海大、青学大、駒沢大にはエースレベルの選手はいるが、まだ大エースと呼ばれる選手がいない。飛び抜けた選手がいない分、16名の全選手の質が非常に高いので穴がないのだ。選手たちはエースに頼らず、自立した走りを目指して練習を積んでくるので力をつけて成長することができる。東海大の2、3年生が今年、力をつけてきたのは、そういう理由からだ。箱根駅伝のように10区間となると、どこかの区間で力的に厳しい選手を置かざるおえない場合がある。だが、東海大を含む4校は全区間で高いレベルの選手を配置できる。最終的にはそうしたチームが駅伝で本当の強さを発揮する。

今年の箱根駅伝は、競り合うシーンが多いレースになるだろう。その中で総合力に勝るチーム、ミスがないチームがトップで大手町に駆け込んでくるだろう。

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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