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COLUMN

いよいよ大学3大駅伝初戦! 第34回出雲全日本大学選抜駅伝競走、優勝予想。

2022.10.06
Shun Sato

画像:日本陸上競技連盟公式サイトより

いよいよ大学3大駅伝の初戦である出雲駅伝が10日に開催される。全6区間45.1キロに20チームが出走し、優勝が争われるのだが、出雲駅伝の面白さはなんといってもスピードだ。箱根駅伝のように1区間20キロを超えるロング区間はなく、最長でも6区の10.2キロで、最短距離は2区の5.8キロ。まさにスピードがモノをいう駅伝である。果たして、今年の出雲は、どこのチームが制するのか。

エントリ―メンバーを見ると、各チームの充実度が伝わってくる。そのなかで、青学大、駒澤大、順大、国学大、東京国際大が優勝を争うのではないだろうか。出雲を制するには、スピードランナーを抱えているチームが有利だ。もちろんブレーキ区間がないことが大前提に上げられるが、簡単にいうとハーフを走れる選手よりも1500mや5000m、1万mを早く走れる選手に優位性がある。その観点からいうと、2連覇を狙う東京国際大は今年も強い。やはり、イェゴン・ヴィンセント(4年)の存在は大きな武器だ。おそらく今年もアンカー起用になりそうだが、最後に控えていることでの他区間の選手の安心感は非常に大きい。最後にいることで他の選手はリラックスして走れる効果を生み、とりわけ駅伝デビューを果たす選手にとってはプレッシャーをそれほど感じることなく走ることができる。登録メンバーをみても、丹所健(4年)が健在であるし、牛誠偉(2年)は大志田監督が一押ししている選手。7月のホクレンディスタンス千歳大会の5000mで13分50秒28を出し、夏合宿も順調に終え、自信を持ってレースに入れるだろう。ただ、不安もなくはない。エース格の山谷昌也(4年)の姿がない。昨年は1区3位と好スタートを切り、勢いに乗って初制覇を果たしたが、今年は夏に調子を崩して、なかなか上がらず、非常に苦しんでいた。2区3位と快走した佐藤榛紀(2年)も夏前までは故障で出遅れ、今回はメンバーから漏れている。果たして、ヴィンセントにどのくらいのタイム差で襷を渡せるか。トップで襷を渡すことができれば問題ないが、1分間以内であればおそらく逆転し、2連覇が見えてくるだろう。

連覇を阻止する第1候補は、駒澤大か。エースの田澤簾(4年)を始め、主将の山野力(4年)、それに昨年は故障でほとんど走れなかった鈴木芽吹(3年)が登録メンバーに入った。鈴木は、前回の箱根駅伝では万全ではない中、出走して8区18位と大ブレーキになってしまったが、大八木監督は同じ轍は踏まないだろう。復調を見極めてのエントリ―だけに彼が本来の走りを見せれば、区間賞は獲れる。さらに関東インカレハーフ2位で安定感抜群の花尾恭輔(4年)、大物ルーキーのスピードが持ち味の佐藤圭汰(1年)が入っている。佐藤は7月、1500mか5000mか、どちらを主戦場にするのか迷っていた時期もあったが、U20 世界選手権の5000mで13分22秒91の好タイムを出し、自信をつけた。佐藤、鈴木、山野が繋がって快走すれば田澤に繋ぐ前に差を広げ、余裕をもって戦うことが可能になる。そうして昨年の5区のようなブレーキ区間をなくせば、勝利は見えてくる。昨年の田澤とヴィンセントとのタイム差は、21秒。1分あれば逃げ切れるだろう。

順大もスピードランナーを揃えている。エースの三浦龍司(3年)を筆頭に、関東インカレ1万mで優勝し、全カレ1万mでは6位と好調な伊豫田達弥(4年)、全カレ1万m9位の四釜峻佑(4年)がいる。前回、三浦は大事をとって出雲には出場しなかったが、今回は1区か3区で出走するのではないだろうか。昨年は3区、4区が大ブレーキになり、優勝争いから脱落した。その3区でブレーキになった野村優作(4年)が同じ区間で借りを返すような走りができれば、おもしろいレースを実現できるはずだ。

前回の箱根駅伝を制した青学大は、岸本大紀(4年)ら主力を故障上がりで欠いたものの、4年生が5名入り、1年生が一人も入っていない。この編成から本気で出雲を取りに来ているのが見て取れる。先の全カレの1万mで中村唯翔(4年)は4位、横田俊吾(4年)が7位と好走した。また、エースの近藤幸太郎(4年)は、トラックシーズンはもうひとつだったが、全カレ5000mで勝ち切って2連覇を達成し、どこか吹っ切れた感がある。レースが順調に進めばアンカーで東京国際大のヴィンセント、駒澤大の田澤簾(4年)との勝負になるだろうが、スピードは彼らにはまだ及ばない。全区間でブレーキがなく、彼らに先行する展開で近藤が耐える展開になれば、青学大の優勝が見えてくる。

国学大は主将の中西大翔(4年)が今シーズン、非常に調子がいい。3月の学生ハーフで2位、関東インカレ1万mでは5位、全カレ5000mは2位とコンスタントに結果を残している。中西に引っ張られるように平林清澄(2年)も常に先頭集団の前に立つ強気の走りで力をつけてきた。昨年は、この出雲で駅伝デビューを果たし、アンカーで途中失速したが、今年はその悔しさを晴らすだけの力を蓄えている。同期の山本歩夢(2年)もまずまずの調子を維持しており、あとはメンバー登録された青木ら3人の1年生がどれだけ強さを見せつけられるか。昨年の平林並みとは言わずとも、5位内に入る走りができれば昨年の4位という順位を更新し、トップ3、もしくは優勝を争う展開にもっていけたとしても不思議ではない。

東洋大は、昨年、5区区間賞を獲った石田洸介(2年)がおり、関東インカレのハーフ2位の梅崎蓮(2年)がいるが、東洋大は4年生のチーム。キャプテンの前田義弘(4年)と昨年出雲1区7位に終わった児玉悠輔(4年)がどこまで引っ張れるか。

出雲は、トラックシーズンに結果を残してきたチームが優位に働くと言われている。その意味では、関東インカレで長距離種目の全種目で入賞を果たした中央大も非常におもしろい存在だ。全カレ1500m2位でスピードが持ち味の千守倫央(4年)、それに吉居大和(3年)、駿恭(1年)の兄弟、さらに1万m28分00秒86のタイムを持つ中野翔太(3年)ら力のある選手が揃っている。前回の箱根駅伝1区で吉居大和が飛び出して流れを作ったが、今回も攻めの駅伝を展開することができれば優勝争いに絡む可能性は十分にある。

果たして、どの大学が3大駅伝の初戦に勝って、全日本大学駅伝、そして箱根駅伝につなげていくのか。今年のチームの表情が見えてくる貴重なレースになる。

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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