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COLUMN

“挑戦”をサポートする、RETO Running Club powered by Runners Pulse 第9回活動レポート。

2022.09.26
Shun Sato

R.R.C.の第2回、富士見合宿が9月9日から11日までの3日間行われた。今回は、前回(6月)を大きく上回る31名のメンバーが参加。チームの6割の人数が参加するのは、メンバーのやる気と意識の高さがうかがえる。神野大地選手、高木聖也コーチ、田村健人コーチのスタッフは合宿前日から現地入りして事前準備を行い、サウナで調子を整えてメンバーを迎えた。

神野選手は、今回の合宿のテーマについて、こう語る。「前回の合宿は、チームができたばかりで、個々の練習量や実力にバラつきがあり、踏み込んで練習するというよりも、みんな顔を合わせて頑張っていきましょうという合宿でした。今回は、もちろん、楽しくはあるのですが、これからマラソンシーズンに入るので、個々の目標を達成するために強度の高い練習をする予定です。それをみんなで切磋琢磨しながら乗り越えていけたらいいかなと思っています。」

9日の金曜日の午後、メンバーが車や電車で現地入りした。午後4時、午後練がスタートした。5キロほどジョグをしながらゴルフ場近くの坂道に到着。ストレッチを全員でおこない、練習が始まった。

●200m×10本 坂ダッシュ
これを全員でこなす。道が少し狭いので、2人組でスタートしていく。ラスト50mがかなりきつい。メンバーも「きっつい!」といいながらも下りで呼吸を整えて、淡々とこなしていく。コーンを置いたり、メンバーの水を高木コーチと一緒に運んでくれたのは、ミワちゃんだ。大腿骨の疲労骨折で現在、走れない状況だが、合宿に参加し、マネージャーとしてサポートしてくれている。普通は、走れないなら参加を諦めてしまいがちだが、それでも参加する姿勢には、チームのためにという意欲と愛情とメンバーとの絆の深さが見て取れる。ちなみにミワちゃん、土曜日の朝、結婚式で一度、都内に戻り、また合宿に戻ってきた。「チームに愛があるね!」と神野選手は言っていたが、彼女を含めて、このチームのメンバーはチームやメンバーに対する愛情が深い。

翌10日は、朝6時30分から10キロのジョグ。天気はいいが、さすがに山の朝は少し肌寒い。それでも涼しい気候で質の高い睡眠が取れるので、みんな朝から調子がよさそうだ。

●10Kジョグ 
Aチーム:5km/h/Bチーム:5:45km/h/Cチーム:6km/h
高木コーチからペース設定が説明され、チームごとにスタートした。朝、何も入っていない状態で、かつ準高地での朝ジョグは平地のジョグと比較しても質の高いジョグに入る。脂肪をエネルギーに転化するのにもよく、メンバーは汗をかきながら黙々と走っていた。

10時からは、ジュネス八ヶ岳のトレーニング場で神野選手のコアトレ。仰向けになり、背中の下に手を入れて、走っている時の呼吸をする。「横隔膜を下げて、肛門に力入れてみましょう。」と神野選手がいうが、なかなかうまくいかず、結局、ひとりひとりを見て回っていた。その中で、うまく出来ていたのが永田さんだ。「でも、この状態のままフルを走るのは厳しいですね。」と、うっすらかいた汗を拭った。走るだけではなく、こうしたトレーニングも走ることの可能性を広げるためには必要なこと。その場でできなくてもやったことが大事で、レベルが上がれば意識から取り出せることもある。

午後3時からは、インターバルのポイント練習だ。
●1000m×5本(Cチームは4本)、2セット。
 Aチーム:3’45″~3’50″
 Bチーム:4’20″~4’25″
 Cチーム:4’50″~4’55″
Aチームはよしきさんが引っ張り、Bチームはタムケン、Cチームは高木コーチが先頭に立った。準高地ゆえに、どうしても最初、呼吸が荒くなり、キツくなりがちだ。その中で、どれだけ最後まで粘れるか。神野選手はBチームやCチームについて離れそうになるメンバーに声をかける。星さんが呼吸を荒げながらも懸命に腕を振り、最後まで走り切った。全力を出し切った星さんはゴールした後涙していたが、その姿を見た神野選手にも熱いものがこみ上げてきた。「星さんは、本当にギリギリのところで粘って、耐えてというのを何十回も繰り返していたのです。最後の10本目は、集団から5‐6秒離れてしまったのですけど、設定内の4分25秒で来た。9本目で出し切って、10本目も設定通りに走ったので、相当追い込んだのだと思います。星さん、ゴールして泣いていて、僕もその姿を見て、もらい泣きしてしまったのですが、ここまでやれるのは本当に凄いなって思いました。」

チームは、全員が同じレベルではなく、強度の高い練習をすれば、差がどうしても出てくる。それでも個々で諦めずに走る姿勢は、本番のレースにも通じることで、この日全員がしっかりとこのメニューをやり切ったのは、大きな収穫だったのではないだろうか。

練習後は、200mチーム対抗リレーが行われた。
★神野選手+よしきさんチーム
今井さん、井倉さん、鈴木さん、新沼さん、西尾さん、野崎さん、野崎七菜子さん、平野さん、星さん
★高木コーチチーム
有本さん、片山さん、加藤さん、金子さん、金さん、小池さん、桜井さん、島田さん、中村さん、平川さん
★タムケンチーム
小山内さん、唐津さん、熊田さん、小坂さん、永田さん、高橋さん、町田さん、三宅さん、浜田さん

レースは、神野チームのアンカーのよしきさん、タムケンチームの永田さんの優勝争いになり、高木コーチが追う展開になったが、よしきさんが逃げ切った。白熱したレースに、優勝した神野選手&よしきさんのチームの全員がガッツポーズをして、喜びを爆発させた。一方、あと一歩及ばなかったタムケンと高木コーチのチームのメンバーは悔しそうな表情を見せる。遊びだが、本気になったレースでしか得られない感情だ。優勝チームは記念撮影をし、RETOのソックスを手にした。こうした賞品があるとレースは、かなり盛り上がる。チーム対抗リレーは、合宿の名物企画になっていきそうだ。

夜は食事の後、懇親会という名の飲み会が行なわれた。前回はテーブルごとにざっくばらんに飲んでいた。今回は、自己紹介とニックネームを自ら発表してもらった後、AからEまで5つのチームに分かれてトロッコアドベンチャー的なクイズ大会が催された。タムケンが中心になって考えたスタッフにまつわるクイズを出し、一番ポイントが高いチームに神野選手のアフリカ土産が提供されることになった。クイズはプライベートあり、彼女系あり、下ネタもありで盛り上がった。最終的に、Aチームが優勝。レアな栓抜きは、片山絵さんがゲットして、ナイスな笑みを見せてくれた。その後、オールウエイズに場所を移して、2次会へ。メンバーの多くが参加し、深夜3時前まで宴はつづいた。翌日の朝練習はないが、朝食は7時半。それでも翌日、みんな眠そうな表情を見せず、すっきりした顔で楽しく食事を摂る姿には、驚くしかなかった。みんな、どれだけタフなのだろうか?

最終日は恒例の林道コース17キロのトレランだ。AチームとBチームには、それに5キロのクロカンコースが追加される。3日間天候にも恵まれ、この日も快晴の中でスタートした。給水にはロンドン五輪のマラソン男子代表でスズキのコーチである藤原新さんとミワちゃんがついて、サポートしてくれた。AとBは、順調に進んでいていく中、Cチームは上りになって小池さんと金さんが少し離れた。小池さんは、「上りがダメ、きつすぎる!」と絶叫しながら走っていたが、金さんは離れても終始、笑顔で走っていた。周囲に動じることなく、自分のペースで走る姿勢は、胆が据わっていないとできないこと。金さんのメンタル的な強さが垣間見えた。

全員、無事に走り終えたかと思ったが、到着地点で鈴木さんが滑り止めに引っかかり、まさかの転倒。膝や手に擦り傷を負って、痛々しかった。前回、筆者も無様に転倒し、足を血だらけにしながら走ったが、今回も犠牲者が出てしまった。次回はないように、おはらいでもしよう。

全員が芝のグラウンドに集合し、写真を撮って解散。よく走り、食べ、飲み、笑った合宿だった。終わった後、神野選手は「最高に楽しかったね。」と笑顔だった。「今回も前回同様に、きつい練習をみんなで乗り越えようという姿勢で臨んでくれましたし、それを実際に見せてもらいました。これからみんなのレースでの結果が楽しみになるような合宿になったと思います。」神野選手自身もメンバーに溶け込み、合宿を楽しんでいるのが印象的だった。前日の練習では星さんの走りにもらい泣きしたというが、神野選手が各チームでそれぞれMVPを上げるとすれば誰になるのだろうか。「Aチームは、有本さん。前回はBチームでしたがAに上がって、ポイント練習を完璧にやり切った。林道コースも前回はAで行ったのですが、途中で離れてしまったので、今回はBで行ったのです。でも、すごく余裕をもって走っていたので成長を感じました。Bチームは、西尾さん。8本目くらいの時にギリギリな感じだったけど、結局10本をやり切った。西尾さんもゴールして涙していたけど、その姿にグっときました。Cチームは金さん。ポイント練習では最初の1本で5分25秒くらいかかって厳しいかなと思ったので『本数調整してもいいですよ。』って声掛けしたのです。でも、5分15秒から20秒くらいのペースで8本やりきったのです。自分はこのくらいで攻めるというのが分かっていて、人に惑わされずに練習していた姿がすごく印象的でした。そして、全体を通してのMVPは、星さん。インターバルでの走りは、本当に熱いものを感じましたし、あそこまで追い込める星さんに僕は本当に感動しました。」




神野選手が選んだMVPを始め、他のメンバーも着実にレベルアップしている。近くで見続けている高木コーチも「全体のレベルアップがすごい。これから本格化するマラソンシーズンが楽しみ。」と笑顔だった。タムケンも「前回よりも濃い合宿でしたね(笑)。メンバー間の雰囲気もチームらしくなってきた感があります。」と、チームになってきた手応えを感じている。神野選手は、このチームが今や生きがいと語る。「昨日、MGCで2位内に入ると宣言したのは、みんなにがんばれと言っているだけじゃなく、現役選手として僕が結果を出すことで、さらにチームが良くなると思ったからです。みんなの自主練や、レースをFacebookグループで見るのが楽しいですし、メンバーの成長が僕の生きがいにもなっています。これからレースが始まっていきますが、これで結果が出ないとあんなに頑張ったのにと思ってしまうので、レースまでの過ごし方とか、そういうこともこれからアドバイスして、メンバーの走りを後押ししたいですし、メンバーの走りにも期待したいです。」

メンバーと神野選手、スタッフの距離感もいい感じになってきている。秋、冬を実りのシーズンとすべく、チーム活動は、練習会、自主練とこれからさらに活発化していく――。



 

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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