“挑戦”をサポートする、RETO Running Club powered by Runners Pulse 第2回活動レポート。
RETO Running Clubの2回目の練習会が5月末に行われた。今回のメニューは、400mのインターバル。ABCの各コース、設定タイムを設けて10~12本、レストは70秒に設定された。インターバルのトレーニングの目的は、スピードとVO₂MAX(最大酸素摂取量)の向上が主になる。
練習前、神野大地選手が「400mインターバルをやったことのある人?」との問いかけに、手を挙げた人はパラパラという感じで、今回初めてというメンバーが多いようだ。そのせいか、みんなの表情がちょっと硬い。前回と同じく練習場所までジョグで移動して、動的ストレッチで体をほぐす。その後、2キロほどアップで走って、最後は流しを入れていよいよスタートだ。
この日、神野選手はサブ3.5のBチーム、高木聖也コーチはサブ3のAチーム、田村健人コーチはサブ4のCチームを見ることになった。「初めての人はキツく感じるかもしれませんが、自分には早いなと思ったら無理せず、本数を減らしてもかまいません。1本1本しっかりやっていきましょう。」神野選手の声に、サブ3.5のチームメンバーが頷く。何とも言えない緊張感が漂い、1本目がスタートした。出足でグっとスピードが上がり、全体が前にドドッと動く。「やっちゃいましたね。最初、行き過ぎた。」と神野選手は苦笑したが、逆にピリッといい雰囲気になった。2本目以降、神野選手の背後につくランナー、中盤からうしろにつくメンバーに分かれていく。最初は、まだ体が十分に暖まっていないこともあり、息も少し苦しくなるが、不思議なことに回数が増えていくと呼吸が整い、走れてくるのが分かる。
神野選手の後ろを走っていたのは、今川莉玖さん。普段は400m、84秒の設定でインターバルをこなしているので、この日の設定タイムは「少し余裕がありました。」とのこと。高校時代は陸上部で1500m(4分20秒)を中心に走っており、大学1年生の今は部活やサークルには属せず、もっぱら個人練と、このチームでの活動がメイン。マラソンを始めた理由は「長距離はあまり得意じゃないですけど、東京五輪や東京マラソン、駅伝を見て、影響を受けて自分もマラソンを走りたいと思ったからです。」とのことで、初フルでサブ3.5達成を目指す。ターゲットレースはまだ決めていないが、「ビヨンドあたり」を考えており、走りのポテンシャルはかなり高そうに見える。
「久しぶりに早い動きをやって筋肉痛になりました。」と嬉しそうに語った平川淳一さんも中学時代、陸上部で1500m(4分50秒)をメインに走っていた。高校はガチでマジな陸上部、しかも短距離メインだったので、吹奏楽部に入った。ランニングは、1年前テレワークで時間ができて、ストレス解消のために始めた。マラソンは昨年の11月から練習を始め、1ヵ月後に出場した初フルでサブ4(3時間47分)達成。その後、長野マラソンに出場したが、20キロ地点で足が止まり、「残り20キロ、全部歩いて4時間30分くらいかかって・・・、それが本当に悔しくて1から練習し直してサブ3.5を達成したいと思いました。」との決意からチームに入った。ターゲットレースは、当選すれば福岡マラソンを予定しており、「意識が高いメンバーのみなさんと目標を達成したい。」と語る。
4本目、この1本を含めると、あと2本で前半が終わる。とはいえ、メンバーの表情は、少し硬く、次の1本に集中している感じだ。
「20秒・・・残り10秒」
神野選手の声が響き、みんな、2列を作り、スタートの準備をする。
集団の真ん中で走っていたのは飯山恵一郎さん。「400mインターバルはやったことがなくて不安でした。」と語るも、「みんな同じ目標に向かっているので頑張れました。」と最後までやり切った。ランニングは、40歳になり運動不足の解消としてスタートし、もう2年半ほどになる。初フルは昨年末のビヨンドで3時間43分、その後、「かすみがうらマラソン」など2回フルを走ったが3時間45分前後でタイムが伸びず、「ここからどうやったらタイムを縮められるのか。」という思いからこのチームに参加した。仕事が忙しく、週2程度しか走れないが、「メンバーの走りに刺激をもらっています。」とのこと。秋は千葉アクアラインマラソンにエントリーしているが、金沢マラソンが当選したらそれを本命レースにする予定だ。
中村修さんは、神野選手の後方で走り「すごく走りが軽いので、見ているだけで勉強になります。」と刺激を受けたという。20年前のつくばマラソンで3時間19分を出したが、その後仕事が多忙になり、ランニングから離れた。コロナの影響で体重が増してきた時、ジムのダイエットキャンペーンに応募し、2カ月で10キロ落とした。「努力すれば、また変われる。」と思い、そこから皇居や神宮外苑などで走り始めた。神野選手のファンでもあったのでチームに参加したが、初回の1500mTTで「みんな、早くてびっくりしました。これはちゃんと走らないとついていけない。」と感奮興起し、それまで月間走行距離50キロ程度だったが、今月はかなり距離を踏んでいるという。ターゲットレースは「ビヨンドかな。」とのことだが、秋はまだ自信がないので冬のレースも考えている。
5本目が終わり、レスト5分だ。メンバーは、それぞれ歩いたり、話をしたり、動きを確認したりしている。「最初はキツかったかもしれないですが、ここから逆に少しラクになるかもしれません。余裕がある人は、スタートしてから2秒後に出てもいいですよ!」と神野選手は声をかける。全員、持ちタイムはバラバラなので、3時間30分に近い人もいれば、少し離れている人もいる。走力にも個人差があるので、時間差スタートをすることで個々のレベルに合わせたインターバルをこなしてもらうという考えだ。
「じゃ、次いきます」
神野選手が時計のある手を上げて、6本目がスタートした。
浜田享征さんは、「初めての400mインターバルで筋肉がもげそうになりました。」と苦笑した。トレイルランニングのチームに属している浜田さんは、前日に30キロのトレイルを走ったばかりで足に疲労と筋肉痛が残っており、「かなり不安でした。」という中でのポイント練習だったからだ。それでも最後までやり切った。マラソンを始めたのは、学生時代バスケ部に入ったが途中で退部し、中途半端に終わった。そのことを取り返したいとハーフマラソンに挑戦したが、思うような結果が出ず、「これじゃ学生時代と同じ中途半端。だったら目標タイムを考え、フルマラソンに挑戦しよう。」と思ったからだ。ターゲットレースは地元高知の竜馬マラソン。月間走行距離は150キロだが、これからさらに距離を踏んでいくという。
余裕の表情で400mインターバルをこなしていた林慎太郎さんは、トレイルランニングとトライアスロンのチームに属している。「チームでは1キロ、600m、坂のインターバルをしています。」とのことで、後半は2秒レイト、最後は10秒レイトでスタートした。主戦場はトライアスロンのオリンピックディスタンス(水泳1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ)になる。今回のチーム参加はスピードを含めたランの強化のためで、「一番練習をしないといけないのは水泳なのですが、ランは最後の種目でヘロヘロになって走るので、そこを神野選手のチームで強化して、ラストで相手を抜いていきたいんです。」と語る。マラソンの予定はないが、トライアスロンでのターゲットレースは9月18日の九十九里トライアスロンTTになる。
7本目が終わり、走り終えた後の呼吸も少し荒くなっている。ここが踏ん張りどころになる。
「ここが一番きついですけど、乗り越えたらラスト2本になります。頑張っていきましょう!」
神野選手が檄を飛ばす。
その声にメンバーが「はい!!」と反応する。ラストに近づくにつれ、声が出てきているのは、本当にすばらしいこと。チームの一体感が増してくる感じだ。
大きな声でメンバーを鼓舞していたのは、有本周翔さんだ。「自然と声が出た感じでした。」と笑顔だが、練習会ではロングパンツで余裕の走りを見せ、只者ではない雰囲気を醸し出していた。実際、中高で1500mや3000m障害をメインに走っていた陸上経験者。だが、卒業後はこの2月まで約10年間、走ることがほぼなかった。再び走るキッカケになったのは、リモートワークで体重が増えてきたという理由もあるが、母校の陸上部の顧問が退官し競技経験のない同級生の友人が顧問を引き継ぐことになったのが大きいとのこと。トラックシーズンは1500mに取り組み、「4分40秒までいければ。」という目標を掲げているが、秋にはマラソンにも挑戦するという。ラストは10秒レイトでスタートし、一気に前に出るなどスピードはサブ3レベル。月間250キロをこなし、奈良マラソンが当選したらそれが初フルになる予定だ。
9本目、懸命に走っていたのが小山内真紀さん。前々日にスパルタンレースに出場し、足と体の疲労が残った状態でのポイント練習になり、「9本目で完全に足が終わってしまいました。」と、悔しそうな表情を見せた。マラソンを始めたのは、7年前、皇居1周ランのイベントに参加し、その交流会でマラソンに誘われたのがキッカケだ。1年目のタイムは5時間5分、2年目は4時間55分だったが、3年目、パーソナルトレーニングに通い、痩せたのを維持するために毎朝走ったことで走力がつき、3時間47分でサブ4を達成した。そこからサブ3.5を目指したが手の骨折やコロナでレースに出られず、今に至った。「他の練習会は自分で設定を選べるのですが、このチームは、サブ3.5達成のために設定が決まっていて、覚悟を決めて走るのですごく成長できる。」と語る。7月は函館マラソンを駆け、本命レースは来年の名古屋ウイメンズを予定している。
10本目、ラストを上げて終われたメンバーの表情には達成感から喜びの笑みが広がる。個人の力だけど、みんなでやり終えた感はチーム練習ならではの楽しさであり、充実感だ。
アップした地点に戻り、神野選手が「今日はみんな最後までよくがんばりました。ほぼ設定通り、いい練習ができたと思います。最後に誰か一言ありますか?」とメンバーに投げた。返答がないので、神野選手が「じゃ僕の後ろで走っていた金子さんお願いします!」と指名した。
金子一美さんは、神野選手の背後で、いいリズムで走っていた。その理由について、「1本目はうしろにいたのですが、神野選手が自分の後ろが走りやすいよ、と言ってくださったので前に行き、神野選手のリズムで気持ちよく走れたのと、うしろにみなさんがいたことで背中を押してもらったのが最後までしっかり走れた理由です。」と語った。金子さんがマラソンを始めたのは7年前。ご主人にエントリ―をさせられて出走、関門に引っかかり、回収されないように必死に走った。そこから火がつき、走り始めて3年後に名古屋ウイメンズでサブ4を達成。サブ3.5を目指し始めた1年半前からパーソナルトレーナーをつけ、月間250キロから300キロを走ってきた。「4月の長野マラソンでPB(3時間42分)を出せたのですが、まだ(サブ3.5に)届かないので今以上の何かをやらないといけないと思い、神野選手のチームに入りました。」という。故障の経験はなく、強い体は日々の筋トレとランのトレーニングで生まれたものに違いない。ターゲットレースは金沢マラソン、週6回の練習は必ず実を結ぶに違いない。
練習後、神野選手は「Bチーム、明るくいいムードだった。」と笑顔で語った。今は、チーム全員の顔と名前を憶えている最中だが、Bチームはほぼ把握したという。練習終わりには、神野選手と積極的にコミュニケーションを取るメンバーさんもおり、これからさらに密なコミュニティ作りが進んでいきそうだ。
施設協力:ラフィネ ランニングスタイル Otemachi One
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