連載第35回「Breaking Limit」 ~3ヶ月の練習note~
第35回 小松武司(市民ランナー) 地下室のトレミで気温順化。-Breaking 2’50”-
山岳会で山登りの体力をつけるために走っていた小松さん。山岳会仲間の、「山登りが早くても、マラソンは別」という言葉に発奮して、今ではサブエガを達成した。そのキーワード「気温順化」とは?
小松武司
職業:会社経営
年齢:40代
ラン歴:3年
フルPB:2時間47分09秒 (2021年12月12日 青島太平洋マラソン)
3months Challenge—breaking 2’50”
Start(走り始めたキッカケ)
山岳会に入っていて、もともと山登りの体力をつけるために3~5キロを走っていました。ある時、山岳会の飲み会で、仲間が「3時間45分で走ったので俺はマラソンをやめた。」と言ったのです。「山を登るのは早くてもマラソンは別の次元だ。」とも言われて、マラソンに全然興味がなかったのですが、なんか自分に言われているように思えて、悔しい気持になって・・・。そのタイムを越えてやろうと思って始めたのが本格的なランニング、そしてマラソンを始めようと思ったキッカケですね。マラソンの練習を始めた当初は、もう怪我ばっかりでした。練習方法とかも知らないですし、特にネットで調べることもせず、ジョグをすればいいかなくらいの感じで走っていたのです。でも、距離が増えて、特にケアもせずに走っていたら1ヶ月で怪我をしてしまいました。股関節あたりに痛みが出て、しばらく走らずにいると痛みが消えるのですが、また走り出すと痛みが出ての繰り返し。マラソンの練習をして1年目は、半分くらい走れなかったですね。
First Marathon(初めてのマラソン)
始めて走ったフルマラソンのレースは北海道マラソンで、4時間12分でした。練習不足で走ったので、足全体をつってしまいました。37キロ地点でリタイヤしようと思ったのですが、トボトボ歩いていたら最終ゲートをくぐってしまい、「ここからリタイヤできませんよ。」といわれて、そこから3キロは激痛の足を引きずって死ぬ思いで歩きました。多くのランナーや山岳会の年上のメンバーにも抜かれて、もう「悔しい!」しかなかったですね。それから3ヶ月後の那覇マラソンは0度の北海道から28度の沖縄にいって、暑さにやられて散々でした。それでも3時間55分でサブ4を達成できたのですが、これまで一人で練習をしてきたので、これから先どんな練習をしていいのか分からない。那覇空港で小出(義雄)監督の本を買って、練習メニューとかを読みながら帰ってきました。この那覇マラソンは、いろんな意味でいい経験になりました。
Marathon(マラソンの魅力)
今回の富山マラソンは、那覇マラソン以来の公認レースでしたが、マラソンの面白さは、「簡単ではないこと」でしょうね。42キロを走るための準備がめちゃくちゃ長いわけじゃないですか。24時間のうち、練習する時間は1-2時間なので、あとの時間をどう過ごすのかも大事になってきます。日々の鍛錬とそれを継続していく先にタイムが見えてくる。簡単じゃないですけど、だからこそやり遂げた後の達成感がたまらないのだと思います。あと、これまで南アルプス、北アルプスなど多くの山に登り、いろいろきれいな景色を見てきたのですが、自己ベストが出ると分かった最後の3キロからゴール後の15分くらいの間の景色は、どんな山のきれいな景色よりもキラキラ輝いています。その3キロは、これまで鍛錬してきた日々を振り返りながら走るのですが、本当に感動的です。たぶん、どんな山の景色もマラソンのラストの景色にはかなわないと思いますね。
Training Menu(トレーニングメニュー)
★3months(3ヶ月前)/Training Menu Point
(1)long running(ロング走)
レース3ヶ月前は、距離にこだわりました。40キロを同じペースで走り切るのは、僕の場合は難しいので、35キロまでは自分のペースで行ける体力をつけたいと思っていたからです。33キロ、30キロの2本は札幌がまだ暑かったので、涼しい釧路にいってキャンプをしながら走ったり泳いだりを繰り返しました。札幌に戻って、カレーを食べに40キロを走るチームのイベントに参加し、3日間で100キロ以上を走ったのですが、うちのランニングチームはけっこうそのくらいの距離を走る人が多いので、(走る距離が)多いなって感じはしませんでしたね。その代わりにケアはしっかりやっています。
★2month (2ヶ月前)/Training Menu Point
(1)interval(インターバル)
ポイント練習は、毎週火曜日と木曜日の2回です。トラックではなくて、うちの近所の公園に1周700mのコースがあるので、そこで練習しています。この月で効果的だったのは、500m×12本ですね。500m走って200mをジョグで繋いで走ります。500mをマックスのスピードで走るのですが、最初から力が入り過ぎてしまうと10本以上こなせないので、5‐6本目まで、いかに力を抜いてマックスのスピードで走れるかが重要になります。疲れてくると筋肉の反発がなくなるので、どうしても力が入ってしまう。何本かやっていると平均スピードが上がって、抜いて走るコツみたいなのがつかめてくるので、それはマラソンでいかに力を抜いて走れるかというところに繋がります。
★1month (1ヶ月前)/Training Menu Point
(1)tempo running(ペース走)
10キロのぺーランは、坂道を5キロ下って、また5キロ上がるコースがあるのですが、最初の下りでスピードを出すと、上りも同じスピードでいかないといけないので、かなりキツい。ぺーランはキロ4分にこだわっていたのですが、これも難しかったですね。先輩ランナーはきっちりタイムを合わせられるのですけど、僕は性格的に突っ込むタイプで、なかなか合わせられないんです。ここは、とにかく体にキロ4分を叩きこむみたいな練習でした。
(2)acclimatization.(気温順化)
富山マラソンは、11月ですが現地の気温は、北海道より高いのです。一度、那覇マラソンで北海道から沖縄に行き、気温の違いに体が適応できず、毛穴がふさがった状態で走って厳しいレースになった経験がありました。それ以来、現地の気温に合わせて室温を調整し、地下室にあるトレッドミルで1時間以上走って、体を慣らしていました。日差しが強いのは対処できないですが、気温は合わせられますし、バテない体を作るにはそれが一番いい方法かなと思っています。
Another Point -1
Q.「今後の目標は?」
A.富山マラソンが終わった後、青島太平洋マラソンに出場しました。青太に向けては、富山で後半35キロからラストにかけてタイムが落ちたので、そこをどう走ればいいのか、どう強化すればいいのかを念頭に入れてトレーニングをしました。レースでは22キロで苦しくなったのですが、それでも粘って2時間47分09秒でフィニッシュしPBを更新することができました。今は、キロ3分45秒で走れるようにしたいなと思っています。タイムは、2時間40分を切りたいですね。なかなか難しいと思いますが、限りなく近づけるように練習を積み重ねています。これからのレース予定は、4月にかすみがうらマラソン、5月は黒部名水マラソンにエントリーしています。あと、12月に開催予定の那覇マラソンにも出たいと思っています。サブ4を達成した帰り、絶対にもう1度ここに戻って来てサブ3を達成すると決めたので、サブ3をしに那覇には行く予定です。自分の最大の目標は、別府大分マラソンを走り、そこで自己ベストを出すことです。今年は、エリートだけになり、一般ランナーの参加が中止になったのですが、来年に持ち越しになりました。おそらく来年は、募集がないと思うのでちょっと悔しいのですが、出場できないのであれば、青島太平洋マラソンや防府読売マラソンに出て、目標タイムをクリアしたいですね。
2021年11月6日 富山マラソン 2時間48分33秒。
0km -5km 19分17秒
5km-10km 19分30秒
10km-15km 19分31秒
15km-20km 19分35秒
20km-25km 19分31秒
25km-30km 19分28秒
30km-35km 20分43秒
35km-40km 21分38秒
40km-FINISH 09分22秒
レース当日は、非常に体調が良くて、最初の5キロを19分17秒で入りました。キロ4ペースでと思っていたのですが、突っ込み過ぎるくらい突っ込んでいましたね(苦笑)。この時、初めて集団走を経験したのですが、すごく気持ちよく走れて、突っ込んだ走りでも体はそんなにキツくなかったです。風の影響もなく、吹いてきたら誰かのうしろについていけばいいと冷静に考えられるなど、けっこう余裕もありました。27キロ地点で折り返しがあったのですが、僕はなぜかいつも折り返しをする時に足がつるんです。事前に富山マラソンの折り返しを調べると大きな中央分離帯をぐるりと回る感じだったのですが、当日はちょっと違っていて、その時に足がつったのです。足がつると、だいたい5キロくらいで足が動かなくなるのですが、その時もまさにそうで32キロ地点で、足全部がつり始めて、しかも集団のペースも上がって・・・。その変化に対応が出来なくて、ズルズルと落ちてしまいました。そこからは地獄でしたね。サブエガが目標だったので、なんとか押し切ろうとラスト2キロの時は、想定タイムを頭に描きながら走っていました。達成しても2時間49分30秒以降はギリギリ感があるので、できれば49分を切ろうと思っていたのですが、足が動かず、想定タイムが45分になり、やがて47分になり、これは49分くらいかなぁって思っていたら2時間48分38秒でゴールできました。ゴール後は、コロナ禍でレースがない中、コツコツと一人で走って来たのですが、その時の記憶がよみがえり、感動しましたね。ゴール付近で高校生のボランティアさんが「お疲れさまでした!」と声をかけてくれたのですが、誰もいなかったら泣いていたと思います。
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