• instagram
  • youtube
  • rss
スタイリッシュに速く走りたい、すべてのランナーへ
  • instagram
  • youtube
  • rss
COLUMN

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ。

2026.03.22
GO KAKUTANI

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

アメリカ・カリフォルニア州に在住し、同州の高校でクロスカントリー走部のヘッドコーチを務める角谷剛氏による連載コラム。今回も、前回に引き続き、日本に一時帰国した際に体験した「旅ラン」の模様をお届けします。真冬でも温暖な沖縄、それも離島での贅沢な時間を堪能します。

前回の続きです。長い間の念願だった「富士山を肉眼で眺めながら走る」を実現したものの、寒風が吹く海岸や雪が薄く積もった山道でいささか寒い思いもしました。

季節は真冬。ちょうど衆議院選挙が公示され、北海道や東北地方で大雪のニュースが繰り返し報じられていたときでした。そんなさなか、私が次に向かったのは南国・沖縄です。同じ時期に沖縄では日中の気温が摂氏20度以上まで上がりました。日本って本当はかなり広い国なのだなってつくづく思うのはこんなときです。

私は沖縄を訪れるのは今回が3回目なのですが、いつも冬です。いくら暖かいとは言え、さすがに海で泳ぐ人はあまりいません。観光の季節としては完全にオフシーズンなのですが、その分、ゆっくりと自然や町並みを見て回ることができます。

なぜ離れ島なのか

今回私たち(私と妻のことです)が向かったのは、沖縄本島の北西約60kmの位置にある粟国島。サンゴ礁に囲まれた小さな南の島です。人口約900人、面積は7.62 km²。リゾート開発があまりというか、ほとんどされておらず、昔ながらの沖縄の雰囲気を味わえる島だと聞いていました。

粟国島への交通アクセスはさほど便利ではありません。というか、かなり不便です。沖縄本島からフェリーで約2時間。それも1日1往復だけの運行です。当然、そのフェリー発着時刻に行動が制限されますし、天候不順で欠航という事態もよく起こるそうです。そうなると天候が回復する日まで待つしかありません。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

粟国港に停泊中の「ニューフェリーあぐに」。

幸いなことに、行きも帰りも、私たちが予定した日にフェリーは予定時間通りに運行してくれました。しかしながら、行きの日は風がやや強く吹き、海は荒れました。そんな大げさな、と地元の人には笑われるかもしれませんが、あまり乗り物に強くない私はしっかり船酔いに苦しみました。

船酔いとはどういうことかと詳しく述べるなら、航海中はずっとトイレに籠ってうずくまり、吐くものが無くなるまで吐き、到着後はフェリーターミナルのベンチで1時間ほど死人のように倒れておりました。

私はフェリーに乗るのも船酔いするのも今回が初めてではありません。これまでに沖縄県内だけでも竹富島、黒島、そして粟国島に船で渡りました。北海道では礼文・利尻の両島を3回ずつ訪れています。短い航路で約30分、長いもので約2時間。毎回必ず船酔いするというわけではありませんが、少しでも波が出る日は大抵今回のような目に遭います。

なぜそんな苦しい思いをしてまで離れ島に行くのかと問われると、自分でもよく分かりません。喉元過ぎれば熱さを忘れる、という一面もあるでしょう。きっとその日は穏やかな天気になって大丈夫だよ、と根拠もなく思い込む性格のせいかもしれません。ただひとつ言えることは、どれだけひどい船酔いをしても、旅を終えた後にやっぱり行くんじゃなかったなと後悔したことはこれまでに一度もありません。

島の隅々まで足跡を残す

粟国島のフェリーターミナルは島の南側にあります。人々が住む集落もそのターミナル付近にかたまっています。北側の大部分は農場地帯です。今回の私たちの行動範囲も島の南半分に限られました。

島には公共交通機関はほぼないに等しいうえ、私たちはレンタカーもレンタサイクルもしませんでした。ただひたすら自分たちの足で歩き回ったわけですけど、これくらいの大きさの島なら道は知らなくても方角に迷うことはありません。いつもどこかに海の気配がしているからです。

おおざっぱに言って、東側にはサンゴ礁の砂浜が広がり、西側は断崖絶壁と磯の海岸だということも分かってきました。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

Garminのデータ。島の東南部分、約9km。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

Garminのデータ。島の西南部分、約10km。

上の写真以外にもやみくもに歩き回り、2日間でおよそ道路があるところはくまなく踏破したと思うのですが、路上で人とすれ違うことは数えるほどしかありませんでした。クルマもほとんど通りません。例外は村役場、小・中学校、農協スーパーなどが集まる一角だけだったでしょう。

離れ島は人が少ない。当然と言えば当然なのですが、観光地化されていない粟国島はとくにそうでした。沖縄本島はむろんのこと、同じく冬に訪れた竹富島や黒島と比べても、その特徴は際立っていました。

そんなわけで、島内の道路は物理的には狭いのですが、主観的には伸び伸びと歩いたり、走ったりができます。ヒトには会わなくても、野生(?)の山羊やニワトリとは何度もすれ違いました。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

大人しい山羊たち。ヒトが通っても逃げずにじっと見つめてくる。

もう少し島の人たちと会話や交流がしたかったなとは思いますが、美しい風景をひとり(ふたり)占めできたわけですので、この人口過密の日本ではなかなか得難い経験だったのではないでしょうか。

今回は妻と2人連れだったこともあり、走るよりは歩くことの方が多かったのですが、この季節の沖縄はランナーにとっても最適だと思います。海に飛び込みたくなるほどの暑さではないけど、日中はTシャツ・ショートパンツ姿でいられます。冬に屋外を走るというのに、ウィンドブレーカーも手袋も帽子もフェイスマスクも要らないのです。

もっとも、地元の人たちにとっては冬には違いないみたいで、そんな薄着で歩いているのは観光客だけのようでもあります。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

島の東側にある長浜ビーチ(ウーグ浜)。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

島の西側。別名「ソテツの島」と呼ばれるほど、この植物が多い。

プライスレスの日常

離れ島は四方を海に囲まれていますので、朝陽は海から上り、夕陽は海に沈みます。粟国島のように小さな島だと、それぞれを見るための最高のスポットが互いにごく近くにあります。これもまた、とてつもなく贅沢な話なのです。

たとえば、村上春樹さんの初期の短編、『ファミリー・アフェア』にこんな場面があります。

「実は夕陽を見るのにうってつけの良いバーがあるんだ。午後の三時には行ってないと良い席がとれない」
「気障な人ね」と彼女は言った。

都会に住んでいると、海に沈む夕陽を眺めたいと思い立っても、かくも面倒な手続きとそれなりのカネとヒマが必要になるわけですね。それだけ苦労して、やっとのことでバーに席を確保しても、両脇には他人がぎゅうぎゅうに座っていて、落ち着いて恋を語ることもできなかったよ、なんてこともあるかもしれません。

それに比べると、粟国島きっての夕陽スポット「マハナ展望台」はサッカー場くらいの広いスペースがあるのですが、私たちが夕方に訪れたときは数人しかヒトを見ませんでした。やや雲が多い日だったせいか、夕陽が沈む時刻まで待っていたのは私たちだけです。

やがてやってきたサンセットの美しさには言葉もありませんでした。その前に帰ってしまった人は勿体なかったなと思いますが、島の人たちはその気になればいつでも見られるわけですね。これを贅沢と言わずに何と言うべきなのでしょうか。

離れ島ランのオススメ。オフシーズンの沖縄はランナーの天国だと思うワケ

マハナ展望台から眺めた夕陽。

沖縄県には約160の島があり、そのうち47島に人が住んでいると聞きました。私が訪れたことがあるのは5島だけ。沖縄本島、石垣島、竹富島、黒島、そして粟国島です。

だから粟国島がもっとも素晴らしい島だと断言するわけにはいきません。ひょっとしたら、もっともっと美しい、天国のような島が他にあるかもしれないからです。それでも、粟国島は訪れてきっと後悔しませんよとだけは自信をもってオススメします。

Go Kakutani
角谷 剛
アメリカ・カリフォルニア州在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持ち、現在はカニリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務めるほか、同州ラグナヒルズ高校で野球部コーチを兼任。また、カリフォルア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に電子書籍『ランニングと科学を斜め読みする: 走りながら学ぶ 学びながら走る』がある。https://www.amazon.co.jp/dp/B08Y7XMD9B 公式Facebook:https://www.facebook.com/WriterKakutani
RECOMMEND
CATEGORIES