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SPECIAL

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2
ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

2026.03.20
Matteo Challe
MASAHIRO MINAI

ベクティブ ロードモデルの重要な開発拠点となった
フランス南東部アヌシーのAll Trianglesを訪れた!

2021年のデビュー以来、その優れた走行性能により、トレイルランニングシーンにおいて確固たるポジションを築くことに成功してきたザ・ノース・フェイスのVECTIVシリーズ。昨日公開したPart.1でお伝えした通り、同シリーズにオンロードランニングに対応するスペックを有したプロダクトがリリースされるという情報をキャッチした編集部は、重要な開発拠点となったフランス南東部の歴史ある街、アヌシーにあるAll Triangles(オールトライアングルス)へと向かった。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

フランス南東部、アヌシー湖岸に位置する街、アヌシー。アウトドアギアに造詣の深い人は知っているかもしれないが、いくつかのブランドのヘッドクォーターや開発拠点が置かれているアウトドア業界屈指の重要な都市で、ハイテク企業が密集するシリコンバレーや、かつての自動車産業のデトロイトのような存在といっていいかもしれない。

そんなアヌシーにおいて、2018年創業ながら注目を集める集団が、All Trianglesである。彼らはブランドクリエイティブエージェンシーであり、コミュニティハブでもある。彼らが「アヌシーアウトドアスポーツバレー」と呼ぶ、その中心地に拠点を置き、多分野の専門知識を持つチームが創造プロセス全体をリードする。デザイナー、マーケター、エンジニア、パターンメーカー、プロトタイプサンプル製作者、ヒューマンリレーション専門家、データサイエンティストが連携し、クライアントのニーズに基づいた特注ソリューションを提案。最新鋭のフットウェア工房では、アイデアを迅速に試作・検証・確立することが可能で、ザ・ノース・フェイスを筆頭に、スポーツ及びファッション業界のブランドを主な顧客としている。

コミュニティランを通して行われるフィードバック。

彼らのオフィスに向かう前に、アヌシー湖畔の公園に立ち寄って彼らのコミュニティランの様子をチェックした。男女合計10名ほどのローカルランナーが、All Trianglesスタッフとともに集結していたが、彼らのふくらはぎの形状を見れば、どのレベルのランナーであるかは想像に難くない。あいにくの土砂降りのなか、彼らはものすごいスピードで出発。アヌシー湖畔の数キロのコースを走り終え、あっという間に帰ってきた。彼らは開発中のプロトタイプサンプル、もしくはそれに競合するプロダクトを履いており、その走行感のフィードバックをAll Trianglesのスタッフへと真剣に伝えていたように、一般的なコミュニティランとは趣が全く違っていた。メンバー同士が走ることを楽しみつつ、「新たにリリースされるプロダクトの開発に自分も参加している!」というプライドや喜びを垣間見ることができたのである。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

All Trianglesのコミュニティラン参加者は健脚揃い。かなりのペースで走り、プロトタイプサンプルや競合ブランドのシューズのパフォーマンスの良し悪しを的確にフィードバックしてくれる。

自動車で10分ほど走り、我々はAll Trianglesのスタッフ、コミュニティランに参加したメンバーとともに彼らのオフィスへと到着した。そこではコーヒーや、アヌシーの街で一番美味しいというクロワッサンとパン オ ショコラも提供され、コミュニティラン参加者はさらなるフィードバックを提供。それは、対象プロトタイプサンプルの良いところはもちろんのこと、悪いところや競合サンプルのベネフィットも伝えてくれていた。こういった両方の意見が揃う機会は貴重なので、定期的にこうしたランが開催されているのは、製品開発にとって大きな武器となるのは間違いないと思った。ちなみに、オフィスにはクライミングウォールも設置されており、クライマーも頻繁に訪れ、貴重なフィードバックを残してくれるという。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

いずれのランナーも、走り終えた後の充実感のある表情が印象的であった。

 

2018年の創立以来、
THE NORTH FACEとともに発展してきたAll Triangles

All Trianglesは、著名なアウトドアブランドでフットウェアのスペシャリストとして、さまざまなプロダクトを企画開発してきたジュリアン トラヴァース氏を始めとしたプロフェッショナルが集結して設立された、ブランドクリエイティブエージェンシー。All Trianglesがスタートすることになるきっかけと、今回のVECTIVのロードモデルの開発ストーリーを聞いた。

VECTIVのロードモデルの開発に大きく貢献したAllTrianglesは、2018年に設立されたブランドクリエイティブエージェンシー。アウトドアブランドにおいてスノーボードブーツからライフスタイルシューズまで、さまざまなフットウェアの企画開発を担当し、ファッション業界にも太いパイプを持つ共同創業者であるジュリアン・トラヴァース氏を中心にスタートした。大手ブランドに在籍していた彼は、キャリアの途中で分業された現在のシステムではすべてのプロセスに関与することができず、それが大きな不満であった。そしてブランド戦略、デザイン、開発、パターンメイキング、テスティングなど、各専門分野のエキスパートが一箇所に集うことで、その問題点を解決することができるAll Trianglesをスタートさせた。

彼らのアドバンテージは、プロトタイプサンプルの段階まで自らで製作できること。従来はアジアなどにある生産拠点でサンプルも制作していたため、その出来映えやクオリティがどのようなものになるかは不確実であったが、All Trianglesは、プロトタイプサンプル、全てのパーツ、裁断パターン、素材、仕様書を用意して工場へ送るため、目標としているレベルのプロダクトの再現性は飛躍的に向上したという。

現在はフットウェア分野にその業務を集中し、ザ・ノース・フェイスをメインクライアントとしており、同ブランドと競合にならないブランドのフットウェアの企画開発も行っているが、サッカーやバスケットボールといったチームスポーツカテゴリーのフットウェアには参入していないという。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

日本のTHE NORTH FACEのチームスタッフとスペックの細部を確認する。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

All Trianglesには本格的なクライミングウォールも設置されている。

「オンロードモデルは開発の自由度は高く、創造性を発揮できる余地は大きかったです」。(ジュリアン・トラヴァース氏)

今回VECTIVのロードモデルの開発にあたって留意したのは、「ベースとなるVECTIVのトレイルランニングモデルは、地形や路面の変化との対峙、安定性といった課題に対応しなければならず、走行するフィールドは常に進化し、同じ岩でも走っている途中でその種類は異なりますし、路面からの突き上げに対する構造も不可欠になります。トレイルランニングモデルを開発する際には、我々が遵守する明確なルールが存在しているのに対し、オンロードモデルではそういった部分への対応は必要ないので、開発の自由度は高く、創造性を発揮できる余地は大きかったです」とジュリアン・トラヴァース氏は語る。そして、「オンロードを想定すると、地形に対する制約が大幅に軽減されるので、ベースとなったVECTIVの存在を尊重しつつ、軽量化のためにミッドソールの土踏まず部分をくり抜くというようなデザインを採用することができました。その結果、従来のVECTIVシリーズはミッドソールの前足部サイドから3Dプレートが見えるデザインでしたが、今回のロードモデルはVECTIVシリーズで初めて、アウトソール側から3Dプレートが視認できるプロダクトとなりました」と続ける。

さらに、企画開発及びイノベーションを担当するグレゴワール・ラバティ氏は「トレイルモデルからの最も大きな変更点は、フラットで接地面積の大きなアウトソールパターンを採用したことですが、ミッドソールもトレイルランニングモデルのVECTIVとは異なる硬度のDREAMフォームを用いており、より軽量でバウンシーなものです。このようにしてVECTIV Forwardを始めとしたVECTIVのロードモデルが完成したことで、ようやくザ・ノース・フェイスの契約アスリートに自信を持ってオンロードで使用できるハイパフォーマンスシューズを提供することができるようになりました。これまではワークショップでVECTIVのトレイルモデルのアウトソールを剥がして、フラットなアウトソールに貼り替えていたこともありましたので」と教えてくれた。

ジュリアン・トラヴァース氏によると、VECTIVのロードコレクションのメインアイテムとなるVECTIV Forwardは、VECTIVのトレイルモデルに類似したロッカー構造のソールユニットを採用したことにより、走行感覚を継承しているので、本番のトレイルレースにVECTIVシリーズを履いて参戦するランナーの日々のトレーニングモデルとして、もしくはフルマラソンでサブ3からサブ4ほどで走るランナーのレース用シューズとしても最適な1足となっているという。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

All Trianglesの創業者であるジュリアン・トラヴァース氏。前職の大手アウトドアブランド時代からフットウェアの企画開発に長らく携わってきた。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

企画開発及びイノベーションを担当するグレゴワール・ラヴァーティ氏。著名なラケットスポーツブランドで活躍したのちにAll Trianglesに参加した、フットウェアのスペシャリスト。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

プロダクトデザインを担当するシリル・モランジュ氏。ジュリアン・トラヴァース氏とは前職からの繋がりで、その関係は15年以上になる。

 

プロトタイプサンプルやアスリート向けスペシャルプロダクトを製作するワークショップへと案内された!

前述の通り、All Trianglesはフットウェア業界では珍しく、製品企画からデザイン、プロトタイプサンプルの製作までを自らで行うことができる。全てのパーツ、裁断パターン、素材、仕様書、そしてプロトタイプサンプルを製品化する工場へと提供可能で、プロダクトの再現性は他の追随を許さない。その秘密を探るべくワークショップを訪れた。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

フットウェア業界やアパレル業界において、ブランドの製品開発をサポートする企業は決して珍しくない。しかしながら、自らのワークショップで、プロトタイプサンプルを外注先に頼ることなく完成させることができる企業はかなり珍しい。All Trianglesのワークショップは、小規模ながら裁断や縫製、製靴を始めとした設備が備えられており、アイデアやデザインをクイックに具現化することが可能だ。

筆者はこれまでに10を超えるスポーツブランド、アウトドアブランドの開発拠点を訪れた経験があるが、All Trianglesは、そのどれよりもクラフトマンシップ、すなわち職人気質を感じることができた。それを象徴するのが、現在もアスリートのためのスペシャルシューズを作成している点。個人的に特に興味深かったのが、アスリートからソールユニットのクッション性や安定性といった走行感の変更を求められても、それに対応していることである。

ジュリアン・トラヴァース氏によると「アスリートから既存のシューズの調整を求められることがあり、クッション性や安定性、反発性に最も関連するのはミッドソールです。ジオメトリー、すなわち厚さを始めとした形状をそのままに硬度のみ調整する場合は、発泡度を変更した素材をサプライヤーにオーダーします。一方で、クッション性だけでなく、ソールの厚みや踵部分と前足部の高低差であるオフセットの変更依頼を受けることもあります。その際は1足のために金型を起こすことは不可能ですので、既存のミッドソールを削ってアジャストすることもありますし、それだけでは対応できない場合は、シート状のフォームを積み重ねて、アスリートが望む厚さと硬度を追求し、歯科医が使うようなマイクロドリルでソールの形状に削り出すこともあります」とのこと。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

小規模ながら、ここ一か所でプロトタイプサンプルやスペシャルプロダクトを製造できる設備が揃っている。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

ワークショップに集合したAll Trianglesのスタッフ。各分野のスペシャリストが揃ったことにより、業界トップレベルのプロダクトを世に送り出す。

双方向のコミュニケーションを重視する、
最近では珍しくなった職人気質のエージェンシー。

こうして完成したシューズは、アスリートに提供されるだけでなく、彼らからのフィードバックはAll Trianglesに蓄積され、以降の製品開発に活用される。これらの話を聞いて感じたのは、ブランドの開発施設を大別すると革新性を追求した提案型と、アスリートやユーザーからのフィードバックを忠実にかたちにする御用聞き型に大別されると思っていたが、All Trianglesはそのいずれでもない、双方向のコミュニケーションを重視し、最近では珍しくなった職人気質をプラスしているということ。一昔前のスポーツ業界では、個々のアスリートのために1足だけ特別なシューズを製作することは珍しくなかったが、最近では対応するブランドは著しく減った。とくにWA(世界陸連)が管轄する競技では、事前に登録されたシューズ以外は事実上着用が難しくなり、その傾向に拍車がかかったが、トレイルランニングでは適用されないので、All Trianglesのようなクラフトマンシップはいまだに貴重である。

最後に「社名のTrianglesは、友人と会社を立ち上げた頃に生まれました。巨大なビル内のわずか8㎡の小さなオフィスで、ブランド戦略とマーケティングに没頭していた頃、流通の枠組み、消費者プロファイル、ブランドアイデンティティの定義に日々を費やす中で、どこを見渡しても三角形が目に入りました。自然と全てのプロジェクトに三角形が組み込まれていったのです。かつてのパートナーはよく『三角形は最も安定した形であり、常に均衡を保っている』と言い、私たちは『これには何か意味がある』と感じました。『All』の部分は少し後から加わり、私にとっては『あらゆる三角形と取り組んでいる』という現代的な表現のように思えました。後に冗談めかして言う人もいて、山間に住む私が三角形を選んだのは、そこら中に三角形が見えたからだと。まるで山岳景観を詩的に反映したかのようだと。しかしながら私にとって重要なのは、消費者、流通、そしてその間のあらゆる要素を象徴するピラミッドを表現することで、結局のところ、必要なのは名前だったのです。たまたまこの名前が空いていたというだけのことです」とジュリアン・トラヴァース氏が教えてくれた。

VECTIV for ROAD RUNNING Part.2 ベクティブ ロードモデルの開発拠点に潜入

日本ではあまり知られていないが、All Trianglesのあるアヌシーは、アヌシー湖畔に発展した都市で、数々のブランドが拠点を置くアウトドア業界の重要な土地である。

この記事は、Runners Pulse Magazine Vol.12 特別付録を再編集して制作しています。

INFORMATION
ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
TEL:0120-307-560
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Part.1の記事はこちらから。

 

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