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BLOG

サイパンマラソン2015(後編)

2015.05.06
Issey Enomoto
榎本 一生
1976年千葉県生まれ。フリーランスのエディター、ライター。シューズ・マスター編集長、ランナーズパルス副編集長、フイナム ランニング クラブ♡部長。フル自己ベスト:3時間16分40秒(東京マラソン2018)、ハーフ自己ベスト:1時間35分16秒(ブルックリンハーフ2016) http://www.shoesmaster.jp http://hrc.blog.houyhnhnm.jp

前編からの続き)

■20km〜30km
サイパンマラソン50kmの部も中盤に突入。ちょうど中間地点となる25kmあたりにフルの部と50kmの部の分岐点があり、50kmの部は左へ折れてキャピトルヒルという丘のほうへ向かう。

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このガソリンスタンドがあるあたりが分岐点。

そしてこの先に待ち受けているのが、例の「アヘアヘ坂」。往復約6kmあり、かなり勾配がキツイらしく、多くのランナーがここで脚を消耗してしまうらしい。

で、これがそのアヘアヘ坂。

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写真ではあまり伝わらないかもしれないけれど、予想以上に勾配がキツイ! ほんとにこれを登るのか? あまりの急坂っぷりに愕然としてしまった。しかもつづら折りになっているので先が見えない。寛平さん、とんでもないところをコースにしてくれたものです。

スタートから2時間50分、アヘアヘ坂の途中で28km地点を通過。

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急坂はまだまだ続く。

その直後、空が雨雲に覆われて、突然のスコールが!

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かなり大粒の雨。風も強く、まるで嵐のよう。

■30km〜40km
強烈なスコールで全身ずぶ濡れになりながら、アヘアヘ坂の途中で30km地点を通過。

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この時点のタイムは3時間4分。しばらくは順調にキロ6分ペースを維持してきたけれど、アヘアヘ坂に入ってからはガクンとペースが落ちてしまった。ここから先、ペースを上げていかないと、目標の5時間切りは厳しいかも。

アヘアヘ坂の途中にはエイドステーションがあり、そこではなんと間寛平さん自身がおにぎりを振る舞ってくれるというスペシャルなサービスが。塩気が利いたおにぎり、めちゃうまかったです。

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坂を下った先には海が見える。そして登ってくるランナーたちはほとんどみな肩を落として歩いていた。

長くツラかったアヘアヘ坂を終えて再びミドルロードに合流し、そこから南へ下ってスタート地点のガラパンへと戻る。

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36km地点を通過。雨はすっかりあがって太陽が再び顔を出す。

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サイパンのゆるキャラ「サイパンダ」も沿道から応援してくれた。中の人、暑いだろうな・・・。

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スタート地点のガラパンをいったん通過し、ふたつめの折り返し地点に向けてミドルロードの海沿いの道をひたすら南下していく。右手には美しいビーチが広がるが、アヘアヘ坂で受けたダメージが想像以上に大きく、景色を味わう余裕はなかった。

■40km〜FINISH(50km)

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40km地点を通過し、レースもいよいよ終盤戦。この時点のタイムは4時間12分。キロ6分のペースは完全に乱れていた。サブ5を達成するには残り10kmを48分以内で走らなきゃいけない。残された体力を考えると、もはや絶望的。

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そしてついに、フルマラソンの距離である42.195kmに到達。ここから先は自分にとって未体験ゾーンになる。

村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』に、村上さんが「サロマ湖100kmウルトラマラソン」に出たときのことが綴られていて、そのなかに次の一節がある。

42キロの地点に「ここまでがフル・マラソンの距離です」という表示がある。コンクリートの上に白いラインが一本くっきりと引いてある。そのラインをまたいで越えたときには、大げさに言えば軽い身震いを感じた。42キロより長い距離を走ることは、生まれて初めての体験である。つまりそこが僕にとってのジブラルタル海峡なのだ。

この一文が妙に頭にこびりついていたので、自分が今回サイパンマラソンで50kmを走るにあたって、42.195kmを超えたらいったいどうなるんだろう? とおそれおののいていたけれど、実際に42.195kmを通過しても身震いすることはなかったし、特に何も感じるものはなかった。肉体的にも精神的にも疲弊していて、何かを考えたり感じたりする余裕がなかった、、というのが正直なところかも。

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50kmの部、最後の折り返し地点。あとはひたすらゴールに向けて突き進むのみ。

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地元のボランティアの女の子たちが給水所で振る舞ってくれたオレンジがやたら美味かった。

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45km地点に到達。長かった50kmの旅も残り5kmに。フルマラソンではよく「30kmの壁」「35kmの壁」とか言うけれど、今回自分が走った50kmの部に関しては45kmあたりで壁がやってきた。急に脚が鉛のように重くなり、ここから先の5kmが永遠に続くんじゃないかと思うほど長く感じた。45kmの通過タイムは4時間43分。もうここまで来るとタイムなんてどうでもよくて、一刻も早くゴールにたどり着きたいという思いしかなかった。

あと4km、3km、2km・・・。「時計をなるべく見ないようにする」という当初の決意はすっかりどこかにいってしまい、最後のほうはツラさをごまかすためについつい手元の時計ばかり見てしまう。

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再びサイパン中心部ガラパンに戻ってきた。ゴール地点のアメリカンメモリアルパークまであとすこし。ほとんど残っていない最後の力を振り絞る。

アメリカンメモリアルパークの角を左に曲がると、ようやくフィニッシュラインが見えた!

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そしてフィニッシュ!

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(photo by 南井さん)

タイムは5時間14分46秒。いやあ、長かった・・・。

途中でペースがガクンと落ちてしまい、目標としていたサブ5には届かず、自分としては不甲斐ない内容ではあったものの、記録証を受け取ってみると・・・

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50kmの部・男性部門で総合17位、年代別(30-39歳)ではなんと3位! 意外と悪くない。

完走後はホテルへ戻ってシャワーを浴びて、スーパーでビールを調達してからまた例の「JHEMS」へ。さすがに50km走った後のビールは破滅的に美味い。五臓六腑にしみわたるとはまさにこのこと。そして肉料理でタンパク質を摂取し、断裂した筋繊維を修復することも忘れずに。

午後はビーチやプールでのんびりと過ごす。

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ビーチで寝そべりながらサイパンの美しい海を眺めていると、さっきまで50kmも走っていたことが夢か幻だったんじゃないか、という気がしてくる。

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そして夕方から夜にかけて、ビーチにて表彰式と完走パーティ、そして吉本芸人によるお笑いライブがあり、長かった一日は終了。

■サイパンマラソン2015を振り返って
走っている最中は強烈な陽射しと蒸し暑さでウンザリしたし、スコールや給水で全身はおろかシューズの中までビショビショだし、アヘアヘ坂は半端じゃなくキツイし、、なぜ自分は50kmの部なんかにエントリーしたんだろう? という後悔の念とともに、マラソンはもう当分いいや、とさえ思った。でも、完走から2週間近く経ったいま、あの暑さやキツさが思い出として美化されつつあり、なんなら恋しくなりつつさえあるから、マラソンというのはほんとに不思議なスポーツだとつくづく思う。
もし来年以降もこの大会に出る機会があったら、なんだかんだで結局また50kmの部を選んでしまう気がする。次こそサブ5を狙って、とか懲りずに言いながら。

■関連リンク
・サイパンマラソン2015(前編) | 榎本一生 Runners Pulse Blog
・サイパンマラソン2014 | 榎本一生 Runners Pulse Blog
・サイパンマラソン2014 | Runners Pulse_special
・サイパンマラソン | マリアナ政府観光局公式サイト

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