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SPECIAL

日本の凄さを再発見! DISCOVER JAPAN TECHNOLOGY. Part.3 DESCENTE

2021.04.20
EIKI HOSOMI
MASAHIRO MINAI

日本ブランドの研究開発施設探訪、第3弾。

日本のスポーツブランドの研究開発施設に潜入する「DISCOVER JAPAN TECHNOLOGY.」企画第3弾。今回はデサント社にフォーカス。

コンセプトは「世界一、速いウエアを創る」。

日本のスポーツシーン、特にスポーツウェアの分野でデサントというブランドは、いつの時代も存在感を示してきた。

創業者の石本他家男氏がデサントの前身であるツルヤを創業したのは1935年のこと。運動用衣料に強みを発揮し、1957年よりデサントブランドの展開をスタートする。1958年には株式会社石本商店に改組し、さらに1961年になると株式会社デサントに社名変更された。

デサントはスポーツウェア全般を展開したが、個人的には、特にスキーウェアや野球ユニフォームの分野では圧倒的な強さを発揮していたブランドという印象が強い。1970年代後期のことだが、阪急ブレーブスを除くプロ野球11球団のユニフォームがデサント製だと知って、「デサントというのは凄い会社だなぁ…」と子供心に思ったし、バブル期のスキーブームにおいてもスキーウェアで高いシェアを獲得していたことはハッキリと覚えている。そして、ある著名な陸上選手と話した際に「これまでにいろいろなブランドのランニングシャツを着てきたけど、デサントのランニングシャツほど走りやすくて着用感の快適なランシャツは知らない。腕が振りやすいカッティングや縫い目が肌にあたりにくくしてあって、不快感を与えないようにいろいろな工夫が随所に施されているんだよ! 表からわかる部分にこだわるブランドはたくさんあったけど、あの当時に着る人のことを考えて裏側にまでこだわっていたのはデサントぐらいじゃないかな」と言っていたのは印象的で、この話はデサントというブランドの技術力の高さ、そして機能性への飽くなき追求を証明する一例だと思う。

そんなデサントが競争力の源泉である「モノを作る力」を強化すること、研究結果やアイディアから製品サンプルとして形にし、性能を検証するという一連の工程を施設内で完結できるようにすることで、商品開発の“スピード”“ボリューム”“質”を高めることを目的に、新たな研究施設を2018年、大阪府茨木市に建設した。それがDESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX、通称DISC OSAKAである。DISC OSAKAは「世界一、速いウェアを創る」をコンセプトとしているが、「世界一、速い」には2つの意味があるという。1つ目は、競技で勝つための「スピード」を追求するということ。もう1つは、開発するウェアをグローバルマーケットで他社に「先駆け」世に出していくという意味である。

デサントはDISCを開設したことで、社内で立てた仮説を製品サンプルの形にし、性能を検証するという一連の工程を施設内で完結できるようになり、商品開発の“スピード”“ボリューム”“質”を高めることが可能となった。ちなみに茨木市のDISCは基本的にスポーツウェアの研究開発を担当し、最近デサントが注力しているスポーツシューズの研究開発は、同じく2018年に大韓民国の釜山広域市に開設されたもうひとつの研究開発施設であるDISC BUSANが担当する。

100mの直線を含む一周250mの陸上トラックも備える。ちなみにトラックの表面はリオデジャネイロオリンピックで実際に使用されたものと同じだ。

 

アスリートが本当に必要とする製品開発を行うために!

DISC OSAKAには、アスリートが本当に必要とするプロダクトやテクノロジー、マテリアルを開発するために、様々な最新機器が備えられている。一例を挙げると、スキーなどの冬場のスポーツや夏場の暑い時期の着用シーンを想定し、表面温度の変化を調べることができるデサント独自のサーマル発汗マネキン、-30℃~60℃、湿度10%~95%まで設定が可能で、様々な気象条件を再現することができるクライマート(人工気象室)、実際の雨の降り方に近づけるために高い位置から雨を降らすことができる人工降雨室、実際の競技シーンに近い形で検証を行うためにサーフェスをリオデジャネイロオリンピックで実際に使用されたものと同じマテリアルとした100mの直線を含む一周250mの全天候型トラック。プロダクションスタジオ(型紙作成から縫製まで、サンプル作成の全工程を行うスペース)などだ。その他にもモーションキャプチャーやフォースプレートを用いて、トップアスリートの動作解析を行い、製品開発のためのデータ収集も可能で、これら研究機材をDISC OSAKAに集中的に設置することで、これまで大阪市天王寺区の大阪オフィス内で行っていた研究開発の機能をさらに強化。機能の開発、製品化、開発した製品の評価検証という一連の工程をDISC OSAKA内で完結できることにより、高機能・高品質な商品を、スピード感を持って生み出すことを目指している。これにより、産学連携や異業種との共同開発の拠点としても活用することで商品開発力の幅を広げ、「モノ創りの力」強化による市場競争力強化や、企業価値の向上を目指すという。

DISCの人工降雨機は、本当の雨の降り方に近づけるために、かなり高い位置から水を降らす。

サーマル発汗マネキンを用いることで、冬場のスポーツや夏場の暑い時期の着用シーンを想定した製品開発が可能に。

また、DISC OSAKAの建屋の特徴として、様々な人や情報が交じり合い、クリエイティブな発想のもとで社内外の人と協業ができるよう、“ワイガヤスペース”を設置した他、柱や壁を減らし、ほぼ全ての実験室が施設内のどこからでも見えるようなオープンな造りにしている。屋外の歩道には、通水性に優れており、水はけを良くする一方で、内側に保水することでクーリング機能も発揮する土壌再生タイルを敷くなど、環境にも配慮しているという。

今回DISC OSAKAを案内してくれたR&D・生産部門 機能開発部スポーツパフォーマンス研究開発課の戸床文彦氏。

そして、他ブランドの研究開発施設と比較して、DISC OSAKAが特に充実していたと思われる機材群が、製品や素材の品質や耐久性を検査するカテゴリー。よいものを長く使うことは最終的に地球環境にも優しいはずだ。今回、DISC OSAKAの施設を案内してくれたR&D・生産部門 機能開発部スポーツパフォーマンス研究開発課の戸床文彦氏は、「今後もDISC OSAKAはユニークな発想や独自に研究開発した理論からアスリートのパフォーマンスを向上させるウェアを提案していき、またウェアの快適性を追究し、スポーツシーンから一般生活におけるアーバンスタイルにおいても魅力のある新しい機能性を提案していきます」とコメント。「世界一、速いウェアを創る」を目指すDISC OSAKAのチャレンジはまだ始まったばかりだ。

摩擦堅ろう度試験機。生地が擦れて淡色のものに汚染する場合を想定、及びウェアの内衿に髭との擦れによる毛羽立ちを想定して評価。

撥水度試験機を始めとして、ユーザーが購入した製品を長く使ってもらうために、他ブランド以上に耐久性へのこだわりが強く感じられた。

※本企画は、Runners Pulse Vol.07の記事を再編集してお届けしています。

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