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スタイリッシュに速く走りたい、すべてのランナーへ
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SPECIAL

DESCENTE TRIATHLON SERIES NEW RUNNING SHOES “DELTA LD” FOR 42.195km

2021.03.05
Masataka Nakada(STUH)
Shin Kawase, Masahiro Minami(Runners Pulse)

デサントトライアスロン シリーズからフルマラソン用のランニングシューズが誕生した。デサントトライアスロンといえば2020年1月、トライアスロンの強豪として知られるスイスチームと正式契約し、ブランド初となるトライアスロン専用シューズを開発。コロナ渦でも話題を集め、早くも世界から注目を浴びる存在になっている。我々編集部が昨年、大阪・茨木にある研究開発拠点“DISC”(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)を訪れ、取材した開発過程から振り返ってみよう。

look back over the past
DESCENTE GLOBAL FOOTWEAR
“Triathlon Shoes PROJECT” 2020





ご覧の通り、2020年1月にリリースされたトライアスロン専門シューズは、10キロを速く走るためだけの前提で開発された究極のシューズ。今回発表されたのは、そのトライアスロンシューズをベースにした42.195キロを走れるフルマラソン用のランニングシューズ。その全貌を知るため、ランナーズパルスの南井正弘編集長と共に企画開発担当の林 亮誠氏(工学博士)を再び訪ねた。

About “DELTA LD” FOR 42.195km
Ryoma Hayashi(DESCENTE Supervisor)
Interview


–––まず、42.195キロに対応するランニングシューズ“DELTA LD”(デルタ エルディー)の開発コンセプトを教えてください
今回開発したデルタシリーズは、2020年1月に発売した“DELTA TRI OP”(デルタ ティーアールアイ オーピー)という、10 キロを走るためのシューズのアップデートバージョンという形で、新たに開発しました。トライアスロン用シューズは、10 キロを1秒でも速く走るということだけを突き詰めたシューズになっているのですが、今回新しく開発したのは42.195キロ、26マイルをより快適に速く走るということだけを目指して開発した商品になっています。42.195キロになると、10キロに比べてとても長い距離を走ることになるので、少しの違和感とか少しの不快感というのが、選手にとっては非常に大きなダメージを負ったり、大きな不快につながっていくことになります。ですので、速く走ることを継承しながら、より快適に、より速く、より長く走ることを大きなコンセプトに掲げて、開発しているというのが大きな特徴です。


–––それぞれのパーツで特に工夫した点を教えてください
まずアッパー部分では、前作は裸足で履くことを想定していたモデルなので(トライアスロンでの使用のため)、通常は靴の内側にある縫い目や段差を極力排除して、デサントの技術を使ってより快適に履くことを目指しました。今回の42.195キロは、トライアスロンの世界で言うとアイアンマンですし、通常のフルマラソンに対応していくという形なので、まずはサポート性という部分に大きく注力しています。通常、外側にいろいろなパーツを付けてサポート性を出しますが、我々はアッパーと内装材の内側にサポート材を使用しています。ですので、直接足に触れることもなく、手を入れて触ってみると分かると思うのですが、内側に縫い目が一切ありません。つまり、内側にサポート機能を閉じ込めることによって、少しの段差やさまざまな不快要素を取り除いているのがひとつ目の大きなポイントになっています。2つ目はミッドソールで、前作と比べて接地面を非常に大きくしています。これは、長い距離を走ることによって身体の上下がふらつくため、接地の安定性を出すという点からです。3つ目は、少し触ると分かるのですが、かかとの部分と前足部のEVAで硬度を少し変えています。


–––なるほど。後ろが硬いですね。
そうです、硬くしています。これは着地時の安定性と蹴り出し時の反発性をいかに効率よくするかということを、我々が考えた結果です。ひとつのEVAの中で素材と硬度を変えることによって、推進性を出すという部分にフォーカスして開発を行いました。我々が独自で開発した、DELTAシステムというテキスタイルで作った特殊プレートを、この上にインサートすることによって、前足部に体重がかかったときにより反発性を出していくということが大きな特徴になります。


アウトソールについては、より長く走るために何をする必要があるのか。やはり、スタビリティ、安定性、強さ的なところが長い距離を走るうえでは非常に重要なので、かかとの巻き上げを前作と比べてかなり大きくしています。さらに、外側を極端に巻き上げていますが、これはどうしても疲れてくるとヒールストライクが入り、その時かかとの外側をつく傾向にあるランナーが非常に多いので、より滑らかにヒールコンタクトができる形状にしています。厚みも微妙に調整して、左右のバランスを見ながら開発しています。


–––ミッドソールの硬度は、外側と内側で変えていますか?
両サイドの外側は同じにしています。真ん中はそれよりは少し柔らかくしていて、前にいけばいくほど柔らかくなっています。他のブランドさんですと敢えて色を変えて、違うものですよって見せているのですが、デサントはいわゆる機能美を目指したいので、見えないラインを入れながら、硬度や素材を変えています。その点は履いていただくと分かると思います。

–––無駄な装飾は入れないという感じですね
デサントとしては、基本的には一切入れないので、ランナーが履いてみたときに、初めて気づいてもらえるかと思います。


–––ちなみに推奨する着地の位置は決まっていますか?
ヒール、ミッドフット、フォアと全接地でいける対応をしています。前作も全ての走法に対応できることを大きなコンセプトにしていたので、我々としてはトライアスリートからファンランナーまで、幅広く履いていただきたいというのもあり、どの接地方法でもきちっと対応できるようにしています。

–––このプロダクトを開発するにあたって苦労した点は?
実はこのモデルもトライアスロンシューズとほぼ同時に開発をスタートして、1年プラスアルファで開発に時間をかけているという経緯があります。一番難しかったのは、先ほどの“dual density”(二重記録密度機構)という、いわゆる前後で硬度を変えるときのバランスです。テスターの方が4~5人いるのですが、その方たちに最低でも5回ぐらいは200~300キロ走ってもらった状態で、どこに柔らかい素材、どこに反発性のある素材を配置するべきなのか、どこを安定させるべきなのか、ということに試行錯誤しました。パーツを変えてしまえば非常に楽にそれができるのですが、ひとつの中でそれをやるのはかなり苦労して、そこには時間をかけて開発しました。もう1点が、アッパーの硬さと安定性のバランスをどう取るのかというところです。前作は単純に、軽く速く走れればいいというところで1枚の素材だったのですが、今回は3枚の構造の中で、どこにシートを入れてどこにフィルムを入れるべきか、どこに伸ばす部分を作るべきかを、何度も何度も繰り返しました。やはり痛がる選手もいれば緩すぎるという選手もいますので、そこの対応にかなり苦慮しましたが、かなり満足度の高い仕上がりになっています。

–––ターゲットとするアスリートのプロフィール、レベルなどがあれば教えてください
実は当初は、コナの世界選手権で優勝する(アイアンマン)、というターゲットを掲げていたのですが、いろいろな要素を抽出していく中で、結局、求められているところは、疲れた時に足が前に進むことであったり、不快なものを取り除いて欲しいっていうことであったり。それはマラソンのトップレベルのランナーであれ、マラソンを楽しむファンランナーであれ変わらない要望ということです。私たちとしては、ランニングを主たる競技としているトップアスリートから、これからマラソンにチャレンジしていくランナーまで、すべてのランナーに対して提供できればと考えています。トップレベルの選手が満足する機能性をそのままボトムのユーザーに落としていくイメージで開発すれば、結果としてマラソンというレースのカテゴリーにおいて全包囲網となっているのかなと。2時間30分台の選手にも満足いただけていますし、長い距離をゆっくり走るランナーにも満足いただけていますので、総合力、バランスのいいシューズに仕上がったなと思います。

–––分かりました。では、ウェアリングテストでアスリートから特に評価の高かった所は?
アスリートの方からの一番多かった声としては、総合力の高いシューズという評価をいただきました。どちらかというと前作は、本当に針の穴を通すような小さなエリアを狙っていましたが、今作ではそこから少し広げて、トータルにバランスのいいモデルを作りたいと思っていたので、まさに総合力の高い靴という我々が考えていた通りの評価に手応えを感じています。特に多かったのが、例えばスロージョグの時に履くと、クッション性と安定性を非常に感じますと。そこから、例えばポイント練習のようにクッと走力を上げた時に、自分への足の追随性がいい、ついてくる感覚がすごくあると。いわゆる反発性という言葉になるのかなと思いますが、そういった部分で反発性がありながらクッション性があるので、この靴一足である程度のトレーニングも試合前の対応もできる、という声をいただいています。我々としては3時間ぐらいのところも狙っていたんですけど、評価としてはそこもいけるし、もっと速いところもいけるとのことなので、今後は実業団の選手にもテストをお願いしていこうと思っています。

–––選手のフィードバックから戻ってきたサンプルから見て、シューズの寿命はどれくらいですか?
距離で言うと500~600キロくらいかと思います。ただ、一番走り込んだ選手は700キロほどですが、全く問題ありませんでした。走り方がきれいな方ということもあると思いますが。

–––そうですよね。ミッドソールもアウトソールも、だいぶ長持ちしそうだなと
剛性が落ちてくるかなと心配していたんですけど、全然問題ないとの回答をいただきました。コスパの高い靴ですねって言われたのですが、そういう意味ではしっかりとした作りなのだと思います。

–––ミッドソールはEVA系ですよね
EVAです。前足部は少し特殊な独自のEVAの配合にして、それによって軽くて反発性が出るようになっています。機能って、足していく感じでいろいろプラスできるのですが、そうすると、つなぎ目つなぎ目で違和感が出てしまいますよね。基本これはEVAとEVAだから、シームレスに機能させられる気がしますね。デサントのアパレルでも、ひとつの中でどう表現するか、単純につなぎ目がないところなどは、僕らにとっても目指すべきところだと思っています。それを靴でどう表現するかという点では、前作も今作もデザインなどかなり考えてやっています。

–––他ブランドのレース向けシューズと比較して自信がある所を教えてください
通常、ランニングシューズに求めるものは反発性があるとか、フィット感が高いってことだと思いますが、今回この靴で一番大事にしていたのは「不快をいかに出さないか」ということでした。意外とそうしたランニングシューズはないと思いますし、デサントのものづくりのアイデンティティーの中にも、アスリートが着るものには必ず不快要素を取り除くということもあるので。今回の商品が、他社さんに比べてどれだけお客さまにヒットするかは分かりませんが、我々が自信を持っているのは、不快を極限まで小さくしたことによって、選手はただただ走ることにフォーカスできる。そういうところが、ポイントになると考えていますし、そこを目指して作り込んだことによって、選手からもそういったフィードバックが聞けていると思います。

–––最後に今後のデサントのランニングシューズのプロダクト戦略を教えてください
今回DELTAシリーズの第2弾という形で、中国も含めて発売していく中で、大きく3つのキーワードがあります。ひとつ目が速く走るためにどうするのか。2つ目が、今はまだデサントでは提案できていないのですが、楽しく走る、健康に走るためにはどういう靴を提供していけばいいのか。そして3つ目が、スタイリングの中で、ひとつのカルチャーのような形で提案するにはどうすればいいのか。この3つの方向性で、デサントのシューズを中長期で開発を進めています。その中でも重要なのは、契約を交わしたトップ選手であるスイスのアドリアン選手(トライアスロン・スイス代表)が、延期になった東京オリンピックにデサントのシューズを着用して出場することです。次に我々デサントグループが目指すべき方向としては、オリンピックで勝つための靴です。それがあって初めて、より広いユーザーに対してシューズを提供できるという方向で、中長期のキーとして既に開発を進めています。近い将来、デサントの本気をお見せできるような体制も整っているので、そういった部分で他社に負けないプロダクトを発表していくことが、この後の大きな戦略となります。それに向かって、着々と準備を進めているというのが今お話しできる情報です。

林 亮誠(はやし りょうま)
愛知県生まれ。小学4年生でサッカーを始め、プロサッカー選手を目指す。しかし、高校2年時に自分の実力の限界を知り、サッカー部を退部。夢をサッカースパイク開発に切り替える。人の感性を基に開発を行うことで有名な信州大学感性工学科に入学。工学博士となり、2010年に新卒で株式会社デサントに入社。2年目からアンブロのMDとなり、2014年ワールドカップ時のガンバ大阪・遠藤保仁選手のスパイクを担当。高校時代からの夢を叶える。その後、ルコックスポルティフ、イノヴェイトのMDを経て、現在、デサントシューズの企画開発担当として日々邁進している。


 

DESCENTE TRIATHLON SERIES
NEW RUNNING SHOES
“DELTA LD”

“DELTA LD” FOR 42.195km
17,600円(メーカー希望小売価格・税込)

DELTA LD
NAR [ネイビー/レッド](JPN 22.5cm~28.5cm, US 3.5~11, EUR 35~45)
 

DELTA LD
REW [レッド/ホワイト](JPN 22.5cm~28.5cm, US 3.5~11, EUR 35~45)
 

DELTA LD
BLO [ブラック/ソレイユ オレンジ] (JPN 22.5cm~28.5cm, US 3.5~11, EUR 35~45)
 




 

DESCENTE TRIATHLON SERIES
2021 SPRING & SUMMER
APPAREL SELECTION

DNMRGA50/ TRANSITION H/S SHIRT 7,590円(税込)
DNMRGA80/ UTILITY ELITE RUNNING PANTS 9,350円(税込)
 

DNMRGB30/ TRANSITION JACKET 41,800円(税込)
DNMRGA50/ TRANSITION H/S SHIRT 7,590円(税込)
DNMRGA20/ TRANSITION BAG 21,780円(税込)
 

DNMRGB31/ DR STRUCTURE PARAHEM/ HOODIE JACKET 24,200円(税込)
 

After the Interview
First Impression of DELTA LD
Masahiro Minai(Runners Pulse)

インタビュー取材を終えての雑談中、林氏から南井氏に出来上がったばかりの最終サンプルを試して欲しいとの声が上がった。今回は、足入れする南井氏とのリアルなやり取りを併せて紹介する。


林 : 最初は硬い感じがすると思うんですけど、数キロ走っていただくとアッパーが馴染んできますので。

南井: 
明らかににラストは10キロ用よりも広いですね。

林 : 
はい。長い距離を走るために作ったラストで、LSDと言います。


南井: 画的にも見た目がかっこいいですね。お世辞じゃなくて、シルエットがいい。

林 : 
色々な方に前回よりかなり形が良くなったねっていうのは言われました。

南井: 
履いたときのフィーリングは、まず言えるのが縦寸と横寸のバランスが、日本人の足に向けて作っていると思うので絶妙ですね。足の一部みたいな感じで、広過ぎない。結構、海外のブランドだとつま先が余ったりするんですよ。

林 : 
はい。若干、前を長くしています。長い距離を走っていくとどうしても足が前に膨張するので、それを解消するために、不快じゃないように、本当に最低限の範囲だけ伸ばしています。


南井: フィットは本当にすごいです。まだ走っていないんでクッションとか推進力の部分は分からないんですが、フィットに関しては履いた瞬間に分かりますね、これ。フィットに関してはもう素晴らしいですね。日本人ってただ単に幅広いって思われているんですけど、実は最近は若い子や、自分もどっちかというと細い方なんですけど、そこまで広い人って少なくなっているんですよ。だから、そういった人が履いても多分これはぴったりだと思うし、日本人のランナーに特にオススメできる靴ですね。

林 : デサントらしさというところで、いわゆるシンプルで、中に閉じ込められた本質的な部分というのを大事にしていきながら商品を作っていきたいなと思っています。

南井: 
意識しているのはオンとかホカ オネオネ、多分そっちだろうなって思いますね。少なくともアシックスじゃないんだろうみたいな。靴の作りとしてはサロモンの靴に近い。次の日にダメージが残らないみたいな。靴の作りもそうですけど、足の保護や快適性という部分がサロモンのバイブを搭載したシリーズにちょっと似ているんじゃないかなって思いますね。

INFORMATION
DESCENTE TOKYO
03-6804-6332
www.descente.co.jp

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