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COLUMN

学生3大駅伝の2戦目! 「第54回全日本大学駅伝」3つの見どころを紹介。

2022.11.02
Shun Sato

画像:日本陸上競技連盟公式サイトより

10月、大学駅伝の初戦である出雲駅伝は、駒澤大学が制した。その結果を踏まえて、11月6日に開催される全日本大学駅伝の見どころは、3つポイントがある。

まず1つめは、「駒澤大学をストップするのは、どこの大学か?」ということだ。

今年の駒澤大の目標は、「3冠達成」である。そのひとつである出雲を制し、幸先の良いスタートを切った。しかも内容的にも完璧に近いものだった。全6区間中、1、2、4区で区間賞。3、5、6区は2位だった。エースの田澤廉(4年)を筆頭に、出雲では鈴木芽吹(3年)が故障から復活し、強い3年生が揃いつつある。また、ルーキーの佐藤圭汰(1年)も出雲2区で快走し、区間賞を獲得。各学年の戦力バランスがよく、隙のないオーダーが組めそうだ。また、駒澤大は全日本に滅法強く、これまで14回優勝し、現在は2連覇中だ。全日本の戦い方を知る大八木監督の下、大会3連覇、そして3冠に向けての2つ目を取りにいくモチベーションも高い。選手層が厚く、勢いがある駒澤大を止めるのは、容易ではない。
では、止められる可能性があるチームは、どこか。青学大、国学大、中央大、東洋大だろうか。

東洋大は、全日本大学駅伝の予選会が2位、高速駅伝の出雲駅伝では9位ともうひとつの出来だった。もともとロングに強さを見せるチームだけに、箱根にはしっかりと調整してくると思われるが、その前哨戦ともいえる全日本で存在感を示すことは箱根で優勝を争うためには必要なこと。エースの松山和希(3年)を欠くなど、苦しい懐事情だが、主将の前田義弘を始め4年生、3年生ら上級生の奮起が実現すればメンバー的に十分に戦える。

国学大は、出雲駅伝2位と駅伝シーズン、上々のスタートを切った。主将の中西大翔(4年)が今季、非常に調子がよく、出雲でも4区区間賞でチームを引っ張った。主将の好調にチームはいいムードが漂い、戦える雰囲気作りができている。平林清澄(2年)、伊地知賢造(3年)、とロング区間に強い選手がおり、ここにくるまでに上位から離されずについていければ面白い展開になる。平林が4年になった時にチャレンジできるチーム作りをしてきているが、この段階で戦えるチーム作りをしてきた前田監督の手腕の見せ所になる。

中央大は、今、いちばん勢いがある。前回の箱根駅伝で7位となり、箱根駅伝のシードを獲得。出雲でも3位に入り、全日本でも上位争いが期待できる。そのチームを引っ張るのが3年の吉居大和だ。前回の箱根駅伝は1区で序盤から飛び出し、区間新を出し、流れを作った。出雲駅伝も1区を任され、区間賞を獲得した。吉居の1区は、中央大の戦術の核になっているが、全日本も1区でスタートダッシュを決めれば、その流れに乗り、中央らしいレースを戦うことができる。課題は、中間区間でまとめていければ、5位内はもちろん優勝争いにも絡めるだろう。

青学大は、出雲駅伝では4位と力を発揮できなかった。ただ、全日本は、全区間、そつなくタイムを持つ選手を置くことができる青学大のようなチームが有利になる。出雲には出走しなかった岸本大紀(4年)らが戻ってきているのもプラス材料だ。これまで青学大は8区のアンカー勝負に敗れて優勝を逸している。7区、8区に岸本、近藤幸太郎(4年)という2枚看板を置いての勝負になりそうだが、狙いとしてはそれまでにトップを維持し、逃げ切る展開に持ち込みたいところだろう。

2つ目のみどころは、「ルーキーの走り」だ。

今回の全日本大学駅伝のエントリ―には、多くの1年生が登録されている。すでに出雲駅伝でデビューした選手もおり、今大会も1年生の出走が多く見られそうだ。注目は、1500m、3000m、5000mと3つの高校記録を持ち、出雲では2区区間賞に輝いた佐藤圭汰(駒大1年)だろう。1500mから5000mに主戦場を移し、10キロまでは学生トップレベルの走りができる自信を持っている。箱根駅伝の20キロの距離については、「まだ不安がある」と語るが、そのポテンシャルは底知れない。今大会でも佐藤が区間賞レベルの走りをみせれば駒大の優勝がグンと近づく。

中央大の吉居駿恭も大物ルーキーのひとりだ。トラックシーズンでは、ホクレン網走大会の1万mで28分27秒06のセカンドベストを出し、出雲ではアンカーを走り、3位に貢献した。兄の大和(3年)とともに、中央大の中核を担う存在になってきており、全日本でもロング区間でその強さを見せてくれるはずだ。さらに溜池一太も注目の選手だ。出雲駅伝では5区2位と快走し、ルーキーとは思えない堂々とした走りを見せた。長い距離も苦にせず、全日本でも結果を出せば箱根駅伝でも主要な区間を担うかもしれない。

国学大の青木瑠偉も注目の選手だ。出雲駅伝では、そのスピードを高く評価されて1区を駆け、7位とレースを作った。青木自身は「満足していない。もっと早く襷を繋ぎたかった。」と悔しさを見せており、全日本で出雲を挽回できる走りを見せてくれるかどうか。他にも出雲で4区7位の創価大の石丸惇那、3000mSCが主戦場でスピードが持ち味の青学大の黒田朝日の走りにも注目したい。

3つめは、「予選会上がりのチームの戦い」である。

全日本大学駅伝の予選会は、6月に行われ、神奈川大がトップ通過を果たした。流れを作る1組目、ルーキーの宮本陽叶が2位に入り、勢いをつけた。その予選会に出走した8人は全員、全日本大学駅伝にエントリ―されている。箱根駅伝の予選会では11位となり、本戦出場を逃したが、全日本で箱根に出られない悔しさをぶつけて大きな風を吹かせてほしい。

予選会3位の創価大は、4年生が強い。フィリップ・ムルワは、出雲駅伝のエース区間である3区で区間賞、葛西潤は2区区間新で5位、嶋津雄大はアンカーで5位となり、総合6位に貢献した。全日本の予選会1組を5位で流れをつくった横山魁哉もメンバー入りしており、上級生に石丸ら1年生が絡むと、上位争いには絡んできそうだ。

トップ通過も期待された東海大は、予選会4位だった。だが、エースの石原翔太郎(3年)が夏前のホクレン千歳大会の5000mで13分29秒91を出し、復活をアピール。主軸が戻ってきたことで軸は固まりつつあるが箱根予選会では9位と苦戦。吉田響(2年)が意地をみせ、鈴木天智(1年)らの快走があったが、全日本では、どこまで上位に喰らいついていけるか。松崎咲人(4年)ら上級生のがんばりが不可欠だろう。

見どころをいくつか挙げてきたが、全日本大学駅伝は箱根駅伝の前哨戦でもある。どの選手の調子が良く、どの区間に配置されるのか。また、チーム全体の仕上がり具合はどのくらいなのか。各大学の今季の姿がようやく見えてくるレースになる。

Shun Sato
佐藤 俊
北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て93年にフリーランスに転向。現在はサッカーを中心に陸上(駅伝)、卓球など様々なスポーツや伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)など多数。
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