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COLUMN

2022年のレースシーンを振り返る Vol.03 「にしおマラソン」

2023.05.24
MASAHIRO MINAI

にしおマラソンは
同日開催の東京マラソンとともに
ランニングイベントの復活を感じさせた!

数々のランニングイベントが再び開催されるようになった2022年を振り返るコラムの第3弾は、「にしおマラソン」をピックアップ。「東京マラソン」と同日開催ながら、愛知県内で男性が参加できる公道を走るフルマラソンは初めての開催ということもあり、高い注目を集めて全国から数多くのランナーが参加。日本における大規模ランニングイベント復活を強く印象付けるレースとなった。

愛知県で開催されるフルマラソンといえば、真っ先に思い浮かぶのは「名古屋ウィメンズマラソン」で間違いないだろう。2012年に第1回が開催されて以来、人気のロードレースとして確固たるポジションを築くことに成功。第1回大会には13,114人がレースに出走して、世界最大の女子マラソンとして「ギネス世界記録」に認定され、2018年の第7回大会では21,915人が参加し、記録を更新している。一方で、愛知県には男性が参加できる公道を走るフルマラソンがないという事実はあまり知られていなかった。ちなみに、全国47都道府県でこうしたフルマラソンが開催されていなかったのは、2022年3月時点で三重県と福井県のみ。2022年12月18日に「みえ松阪マラソン」が開催され、2024年3月31日に「ふくい桜マラソン」が開催予定で、フルマラソン空白県はなくなることになる。

話を「にしおマラソン」に戻すと、この大会は、前身が55回という長い歴史を誇った「一色マラソン」で、それを受け継ぐ形で開催されたという経緯があり、自分も中学1年と2年時に3km中学男子の部を走った思い出深い大会である。高校までを過ごした街を走ることができるだけに、記念すべき第1回を走ることができることは、本当に嬉しかった。前週、2022年2月27日の「第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会」の一般部門が中止となり、エリートのみの実施となったために、「にしおマラソン」の開催も危惧されたが、同大会と「東京マラソン」は決行。今思い返してみると、これ以降、日本における大規模ランニングイベントの開催に勢いがついたことは間違いない。

スタートは西尾市文化会館であり、着替えなどは屋内のホールで行えるのはありがたい。天気予報では雨の心配はなかったが、スタート1時間ほど前にはパラっと雨が降った。「せっかく地元を走るのだから、雨は勘弁してほしい」と思っていると、スタート時には雨はすっかりやんでいた。フルマラソンは9時15分から9時30分までウェーブスタートにより、ランナーは西尾の街へと駆け出して行った。しばらく走ると名鉄西尾駅の脇を走り、西尾市役所へと向かう。子供の頃からの思い出がいっぱいの街を走ることができるのは、他のマラソンでは体験できない楽しさがある。中学時代に部活動の練習試合のために自転車で向かった他校までの距離以上を、自らの足で走って移動しているのはなんだか不思議な気がした。

愛知県西尾市は2011年に幡豆郡吉良町、一色町、幡豆町の3町と合併したが、矢作古川の橋を渡り、しばらく走ると旧吉良町の地区へと入る。途中農道を走るエリアでは、沿道で応援してくれる人たちとの距離が近く、ダイレクトに元気をもらえる。順調にラップを刻み、旧一色町の地区に入ると、若干風が強くなってきた気がした。そして特に難所に感じたのが一色大橋。高低差がかなりあるのと、向い風の影響を受けて明らかにペースが落ちる。今回はできれば当時の自己記録である3時間52分00秒をクリア、最低でも4時間切りを目指してkm/5分20秒前後でラップを刻んだが、20kmを過ぎたあたりから強い向かい風もあり、ラップがkm/5分50秒まで落ちる。海沿いのコースの北西の風は強烈で、平均風速12m、瞬間最大風速は軽く20mを超えるほど。前に進むことが本当に困難なレベルであり、ここで心が折れたランナーが数多くいたのは想像に難くない。自分は「自己記録更新は無理でもサブ4は達成しよう!」と30km前後までは粘ったが、矢作川沿いの横からの強風には抗うことはできず、km/7分台までラップが落ちて万事休す。それからはとにかく完走を目指してストライドを重ねた。

中村 健 西尾市長による開会のあいさつ。ゲストランナーは野口みずき、糟谷悟、エリック ワイナイナの3名。イベント中のランナーとの交流も好評だった。

スタート前の西尾信用金庫の有志による和太鼓の演奏でテンションが上がる。

フルマラソンの開始は9時15分から9時30分までウェーブスタートで実施された。

途中ほとんどすべてのエイドに立ち寄り、ゴールまでの距離はエンジョイして走ることにしたが、矢作川の堤防の強風から解放されると、自分だけでなく、他のランナーも幾分余裕のある表情へと変化したように見えた。西尾市は抹茶の生産量が日本一の自治体ということもあり、40km過ぎには抹茶を供するエイドも設置されており、ここでゆっくり休んでいるランナーも少なくなかったが、自分は休むことなくゴールを目指す。この抹茶エイドを過ぎるとゴールの西尾公園総合グラウンドまでは2kmを切る距離だ。子供の頃から見慣れていた風景であることもあり若干ペースアップすることができ、西尾城跡地に整備された西尾市歴史公園が右に見えたら、フィニッシュラインはすぐそこ。土の陸上トラックを半周ほどしてゴール。手元のGPSウォッチ、公式タイムともに4時間13分35秒。サブ4は達成できなかったが、途中で歩くことも無かったので満足。強風が吹いていた箇所でフォームが崩れたまま走り続けたために、いつものフルマラソンよりも脚部に疲労が残ったものの、生まれ育った街でのフルマラソンを無事に完走できたことで、走り終わったあとはとても清々しい気持ちになった。

ランナーの後ろに見えるのが一色大橋。ここのアップダウンと強い風が、このレースにおける最初の難所といえた。

バラエティー豊かなエイドでも話題となった「にしおマラソン」。特に人気だったのは、うなぎの蒲焼が供された「一色さかな広場」のエイドステーションだ。

瞬間風速20mを軽く超える強風のなか、防波堤を走るランナー。

一難去ってまた一難。矢作川の堤防でも向かい風や横風に悩まされた。

矢作川の堤防を走る筆者。横からの強い風が理解できると思う。

地元愛知県西尾市出身で、駒澤大学時代に箱根駅伝でも活躍した糟谷悟氏。コース各所でランナーを激励してくれた。

西尾城跡地に整備された西尾市歴史公園が右に見えたら、フィニッシュラインはすぐそこだ。

「にしおマラソン」の完走メダルは抹茶の里らしいデザインを採用。

ゴール後にメダルを受け取り、西尾文化会館内で着替えをしたが、ランナー同士の会話はもっぱら海岸沿いや矢作川堤防エリアの強風のこと。「あの強い風で記録は諦めた」「これまでの人生であそこまで凄い風は経験がない」といった感じで、各々のランナーが強風のことを話題にしていたが、話している表情は、みな明るい。「あの強風を経験できたことは、必ずやいい思い出になるはず!」と話す壮年ランナーのコメントが代表していると思うが、参加したランナーの間で、後年ポジティブな意味でも、あの強風は語り草になると思う。

2023年は諸事情によりスキップするかたちとなったが、2024年1月21日(日)に「第2回にしおマラソン」が開催されることになった。開催時期は3月上旬から1月下旬へと変更され、コースも第1回とは全く異なるルートとなる。特に注目が集まるのは新コースとなったことだ。西尾市役所をスタートし、反時計回りに矢作川、三河湾沿いを走り、今回は旧一色町、旧吉良町だけでなく、旧幡豆町エリアもコースに含まれるのは地元ランナーには嬉しいところ。予定される募集人数も前回より大幅に増えているので、東海地区のランナーはもちろんのこと、日本全国のランナーにぜひともエントリーしてほしい。

「第2回にしおマラソン」の詳細は下記よりチェック!
https://nishio-marathon.jp/

Masahiro Minai
南井 正弘 フリーライター、ランナーズパルス編集長
1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。「フイナム」「価格.comマガジン」「モノマガジン」「SHOES MASTER」「Beyond Magazine」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」「人は何歳まで走れるのか?」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間50分50秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。
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