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COLUMN

2022年のレースシーンを振り返る Vol.02 「ロンドンマラソン」

2023.02.27
MASAHIRO MINAI

ロンドンマラソンは6大マラソン随一の
豪華なコース設定が魅力的!

数々のランニングイベントが復活した2022年を振り返るコラムの第二弾は、ロンドンマラソンをピックアップ。このロードレースは、世界で最も名高く大規模な6つのマラソン大会(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティマラソン)で構成されている、アボット・ワールドマラソンメジャーズ(Abbott World Marathon Majors)において、日本人ランナーの参加が最も少ないといわれているレース。それだけに他の5つの大会と比較して情報が少なく、ベールに包まれている存在である。そんなロンドンマラソンに南井編集長が参加。その魅力を伝える。

 

ロンドンマラソンとは?

前述の通り、ロンドンマラソンはアボット・ワールドマラソンメジャーズのひとつであり、現在の正式名称はTCS LONDON MARATHON。第1回は1981年3月に行われ、2022年10月に第42回が開催された。タイトルスポンサーとなっているTCSとは、ムンバイに本社を置くインド最大手のITサービス企業で、インド最大財閥タタ・グループの中核企業。TCSはニューヨークシティマラソンのタイトルスポンサーとしても知られている。ちなみにスポーツ部門のスポンサーはニューバランスで、これもニューヨークシティマラソンと同様である。参加方法は他の6大マラソンと基本的に大きな違いはなく、下記のようになっている。
招待・各国連盟からの推薦
チャンピオンシップ枠
タイム資格枠(英国内居住者のみ)
海外旅行会社ツアー枠
ブリティッシュ・アスレティクス・クラブ枠
チャリティ枠
スポンサー枠
メディア枠
一般抽選

しかしながら、ロンドンマラソンはチャリティ枠の比率が高く、それゆえに一般抽選の枠が非常に少ない。海外在住者がこの方法で出走権を得ることは、かなり難しいと言わざるを得ない。これは近年、日本からの一般抽選当選者が増えているニューヨークシティマラソンとは対照的である。自分は数多くのランナーの知り合いがいるほうだと思うが、日本人ランナーで、一般抽選枠で当たったという者は一人もいない。このことは、いかにロンドンマラソンの出走権を得ることが狭き門であるかを証明している。さらにいうと、ベルリンマラソンやシカゴマラソンではポピュラーな、オフィシャルツアー枠も僅少。募集と同時に売り切れてしまう。というわけで、日本人ランナーがロンドンマラソンを走るにはチャリティ枠での参加が現実的といえるだろう。「児童虐待防止」「小児がん」「視覚障害」「脳疾患」等々、数多くのチャリティ団体が多少の英語力は必須で、東京マラソンのチャリティ枠よりもかなり高額な寄付金(団体によって異なるが、日本円にして約40万円程度)が必要となるが、自分の周囲でもチャリティ枠によって出走に成功したランナーは何人かいるので、ぜひトライしてほしい。





 

ゼッケンを受け取るために
ロンドンマラソンEXPOへ!

ロンドンマラソンのEXPOは、ロンドン東部のテムズ川北岸に建てられた巨大展示場「ExCeL London」で開催される。このエリアは東京でいえばお台場のような雰囲気で、そういった意味では「東京ビッグサイト」にあたる存在と思えばわかりやすいかもしれない。エクスポ内は、まずゼッケンの引き取りカウンターが並び、そこを過ぎるとアボット・ワールドマラソンメジャーズのコーナーがあり、今回のロンドンマラソンで6大会制覇を迎えるランナーはここで登録を済ませ、その旨を告知するビブを渡され、当該ランナーはそれを身に付けて走る。しばらく歩くと、スポーツ部門のオフィシャルスポンサーであるニューバランスのブースが現れ、ロンドンマラソン限定のフットウェアやアパレル、アクセサリーetc.が発売され、世界中から集まった数多くのランナーが買い物を楽しんでいたが、フレッシュフォームX 1080v12が160ポンド(約25,000円)、ハーフジップのロングスリーブで75ポンド(約11,800円)と、いずれのアイテムも日本からのランナーには、現在の円安状況ではかなり割高に感じられた。ニューバランスの売り場を過ぎると、ニューバランス以外のオフィシャルブランド、そしてチャリティ団体、オフィシャル以外のギアブランドetc.へ。シューズブランドではOn、HOKA、ALTRAといった勢いのあるブランドが出展しており、現在販売良好なブランドだけあって、買い物を済ませたランナーの姿を多く見つけることができた。チャリティ団体のブースは、かなりの面積を占めており、この大会のかなりの割合がチャリティランナーであることを証明していた。







 

6大マラソン随一の豪華なコース設定!

ロンドンマラソンのスタートエリアは、ロンドン南部のグリニッジパーク内に設けられる。参加ランナーはレッド、グリーン、ブルー、イエローの4カラーに区分され、待機場所はそれぞれ異なる。待機エリアは、トイレはあるもののニューヨークシティマラソンやボストンマラソンで見られた、スポンサーによるフードやドリンクなどのサービスは見当たらない。この点は少し残念だった。スタートはウェーブ毎に行われるので、混雑は感じられない。沿道には地元の人々が陣取っており、彼らの応援が嬉しい。日本では声での応援の自粛が求められているが、こちらではすでに解禁されていて、見知らぬ人からでも”You’re great! ”と言われるのは本当に嬉しいものである。自分はグリーンの区分でスタートしたが、3キロ付近で別々だったスタートレーンのランナーも合流し、大規模レースの雰囲気がより一層感じられた。5km手前で急な下り坂が訪れる。ここが最大の高低差であり、これ以外は概ねフラットなコース設定である。ロンドンマラソンはコース上の随所に有名な観光スポットが現われるなど6大マラソンのなかでも最も豪華なコースであることが知られているが、最初の著名なスポットが世界遺産のマリタイム グリニッジ内のカティサーク。カティサークとは、19世紀中の好景気により急激に増えた茶の需要に対し、中国からの輸送を迅速に行うために建造された大型の快速帆船のこと。この名を冠したライトでスムースなブレンデッド・スコッチウイスキーが全世界で広く愛されているので、その名を聞いたことのある人は多いはずだ。そして、20km手前で渡るのがタワーブリッジ。ロンドンを訪れたことのない人も、その名を聞いたことがある人は少なくない観光名所で、ここでの歓声は特に凄かったし、ここからの眺めも本当に素晴らしかった。一方で、30km近辺のドッグランズと呼ばれる大規模ウォーターフロント再開発地域、東京でいえばお台場のようなエリアもコースに設定されていることで、まだまだ発展を続けるロンドンという街の現在を確認できたことも嬉しかった。35km過ぎからはロンドンのランドマークのオンパレード。ウェストミンスター宮殿、ビッグベン、バッキンガム宮殿、ヴィクトリア記念堂というように、誰もが知っている観光スポットを走ることができるのである。特にバッキンガム宮殿は、子供の頃に見た衛兵の交代式の印象が強く、「まさかバッキンガム宮殿を走れるとは…」と感慨もひとしおだった。ここまで豪華なコース設定は、客観的に見ても6大大会で随一であると思う。あまり知られていないが、ニューヨークシティマラソンは、セントラルパークや、その南の59丁目を除くと、著名な観光スポットはコース上にない。バッキンガム宮殿を過ぎるとセントジェームス公園のゴールまではすぐそこ。本来は2020年4月に走るはずが、コロナ禍のために2年半も待たされただけに、ゴールの瞬間は本当に嬉しかった。黒を基調としたメダルはスタイリッシュで他では見られないカラーリング&デザイン。そして、今回の完走でアボット・ワールドマラソンメジャーズの6スターフィニッシャーとなったわけで、その特別なメダルも専任スタッフから授与された。正直言うと、ロンドンマラソンを実際に走るまで、ここまで素晴らしい大会だと思っていなかった。300万人を超える沿道の応援で知られるニューヨークシティマラソン、120回を超える歴史を誇るボストンマラソンが、これまでで一番感動的な42.195kmであったが、このロンドンマラソンは、この2大会に勝るとも劣らない大会である。前述の通り、6大マラソンで最も参加のためのハードルが高いと言われているが、ぜひとも走ってもらいたいと思うロードレースである。













 

ロンドンマラソンで活躍したランニングギア

NEW BALANCE FuelCell SuperComp TRAINER


WA(世界陸連)の厚さ規定を超えるスーパークッショニングシューズ。極厚ミッドソールは抜群のクッション性を誇るが、ある程度の安定性も確保しているのが嬉しいところ。FuelCellとENERGY ARCを組み合わせたことにより、スタートからゴールまでスーパーボールが弾むような推進力を提供してくれ、その優れた衝撃吸収性により、レース翌日に疲労感や脚部の痛みがほとんどなかったのも嬉しかった。ちなみに陸連登録していない一般の市民ランナーは、各ロードレースでこのシューズを履いても失格にならないので、安心してほしい。

NEW BALANCE AT PRINTED N VENT SHORT SLEEVE T SHIRT


独特なパターンがプリントされたニューバランスのランニングトップス。吸汗速乾性に優れているのはもちろんのこと、サイズ感がカスタムオーダーしたかのように自分の体型にフィットしていたので、ゴールまで快適な着心地をキープしてくれた。スタートエリアで何人かの地元のランナーに「Beautiful shirt!」と声をかけられたが、実はイギリス国内でも販売されているということを教えると、「I’ll purchase!」と、いずれのランナーも嬉しそうに微笑んでいた。

2XU MCS RUN COMP SHORT


ゴールドコーストマラソン、東京レガシ―ハーフマラソンではショートタイツを履いたが、ロンドンマラソンもショーツではなく、ショートタイツを選択した。今回セレクトしたのは、2XU。現在のようなショートタイツ人気をリードしてきたコンプレッションウェアのトップブランドである。カラーに関しては、トップスのオレンジと相性のよいネイビーを選んだ。ショートタイツが嬉しいのは、フィット感が高いことと、その着圧により骨盤をしっかりとサポートしてくれ、フォームが後半になっても崩れにくい気がすることだ。吸汗速乾性にも優れたマテリアルを使用しているので、気温が上昇した後半も快適性を失うことはなかった。

ciele ATHLETICS ALZCap SC Standard Stripes – Akalaka


ロンドンマラソンの当日は、天気予報を覆し、時折太陽も顔を出す絶好のマラソン日和。そんなこともあり、キャップを被っていないランナーはレース中かなり辛そうだった。7月のゴールドコーストマラソンではキャップは被らなかったが、雨を想定してロンドンマラソンでは被ることに。これが結果としては正解だった。今回セレクトしたシエル アスレティックスのキャップは、通気性に優れたCOOLwickメッシュを採用することで、長時間の着用でも快適性を失わない。デザインやカラーリングも◎なので、ゴールエリアで「Nice cap!」と声をかけられた。

COROS PACE 2



去年の「北海道マラソン」から使い始めたGPSウォッチ。これまで数十のGPSウォッチを使用してきたが、PACE2は、そのどれよりも軽く世界最軽量の29gというライトウェイトで、まるで何もつけていないような感覚。30時間にも達する高精度GPSの稼働時間も凄いが、日常での使用であれば20日間持つというロングバッテリーライフは、最初は「本当かな?」と信じられなかったほど。耐摩耗性と引張強度に優れた高強度のシリコンバンド、銀ナノ粒子抗菌技術を採用した、軽量でフィット感抜群のファブリックバンドが用意されており、自分は前者をセレクト。フルマラソンのような長時間の運動時でも快適な着け心地をキープしてくれた。ロンドンマラソンでも着用したランナーを多く見かけたが、特にホワイトを身に付けたランナーが多かった。専用アプリは扱いやすく、距離、運動時間、平均ペースはもちろんのこと、有酸素持久力ゾーン、乳酸性閾値ゾーンetc.といったデータも表示。ランデータを分析することで、パフォーマンスアップをサポートしてくれるはずだ。

2XU MCS COMP CALF GUARD


ふくらはぎを包むカーフガードは、自分にとってはマストアイテム。ロングタイツを履くと膝の可動域を妨げられる気もするが、ショートタイツとカーフガードの組み合わせなら、その心配は無し。2XUのこのカーフガードは、段階着圧もしっかりと効いていて、走行中もゴール後も本当に快適。ふくらはぎは第二の心臓と呼ばれるほど血流には重要な部位であるが、その適切な着圧でサポートしてくれるのは嬉しいところ。ショートタイツと同様に吸汗速乾性に優れたマテリアルを使用しているので、42.195kmの長丁場でも快適性をキープ。

FEETURES MERINO10 CUSHION QUARTER


フィーチャーズのソックスといえば、その足との高いフィット性が知られるが、今回セレクトしたメリノウールを使用したクォーターソックスは、柔軟な素材を使用したことによる肌触りのよさ、メリノウールならではの汗冷えしにくいという特性をプラス。ソックスの選択を誤ると黒爪や爪の割れなど、足のトラブルにつながるが、このソックスを履いたことによって、きれいな足のままゴールできたのは有難かった。そして、メリノウールは防臭性に優れている点も嬉しいところだ。

naked Running Band


2019年1月に購入以来、ほとんどすべてのロードレースで愛用している逸品。デニムと同じように1インチ(約2.54cm)刻みでサイズ展開されることで、身体にピッタリとフィットし、走行中もほとんど揺れないので走りを妨げない。収納力も充分にあり、スタートぎりぎりまで着ていたアウターも無理なく収めることも可能だ。2019年の東京マラソン、ボストンマラソン、そして今回のロンドンマラソンと、SIX STAR FINISHERSになることに大きく貢献してくれた優れモノである。ちなみに現在はロゴが大きく配されたバージョンにモデルチェンジされている。

MAURTEN GEL100 & GEL100 CAF100


2018年7月のゴールドコーストマラソンでドリンクタイプを使用して以来、ロードレースで愛用しているモルテン。このときは7年半ぶりに自己記録更新に成功。レース後半でも脚力が落ちなかったのが印象的であった。ジェルタイプのGEL100が登場してからは、7km毎に摂取するようにし、カフェイン配合のGEL 100 CAF100がリリースされると、28kmと35kmのタイミングでは、こちらを摂るように。今回のロンドンでもスタートからゴールまでエネルギー切れとなることなく走り切れた理由のひとつだと思う。

OAKLEY CUSTOM RADAR EV


「レースの際はコレしか考えられない!」というほど絶対的な信頼を置いているアイウェアが、オークリーのレーダー。掛けていることを忘れてしまうほどの比類なきフィット感。レース中の紫外線から眼を守ってくれる。今回は「オークリーストア 渋谷」でカスタム。フレームはオレンジ、それに相性の良いネイビーのイヤーソックを選び、レンズはロードレースに最適なプリズムロードをセレクトした。

2XU POWER RECOVERY COMO TIGHT


今回のロンドンマラソンは、セレクトしたギアが自分に本当にマッチしていたので、レース後、レース翌日もほとんど疲労感はなかったが、レース後に就寝する前3時間ほどを、この2XUのリカバリータイツを着用し、ホテルの部屋でリラックスしたのも疲労回復に大きく貢献してくれたと思う。このタイツは、スポーツ時に着用するロングタイツとは着圧を変更してリカバリー機能に特化しているといい、帰国後も疲労感があるときは、時々着用している。

SIXPAD Powersuit Core Belt


ボディラインや姿勢を保つために大切な腹筋や脇腹、背筋へと同時にアプローチし、体幹を鍛えることができるEMSギア。使うようになってから腹筋がくっきりと割れるように。そして見た目だけでなく、体幹を鍛えることができたことから、ランニングフォームのブレが減ったような気がする。2種類のトレーニングモードがあるので、当日のコンディションによって使い分けができるのも嬉しいところだ。

Masahiro Minai
南井 正弘 フリーライター、ランナーズパルス編集長
1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。「フイナム」「価格.comマガジン」「モノマガジン」「SHOES MASTER」「Beyond Magazine」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」「人は何歳まで走れるのか?」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間50分50秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。
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