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BLOG

2014 Ultra-Trail du Mont-Blanc参戦記

2014.09.10
Satoru Tachishita
舘下 智 FULLMARKS HOUDINI担当
1976年生まれ、富山県出身。現在は札幌から横浜へ転勤。北欧アウトドアブランドHOUDINIの営業マンとして全国各地とスウェーデンを駆け回る日々を過ごしている。「誰よりも楽しむ事」をモットーに2014年はウルトラトレイル・ドゥ・モンブラン168㎞(45時間9分)、グランレイド・レユニオン172㎞(54時間)で完走。

こんにちは

8/29~8/31にフランス、シャモニーで開催された Ultra-Trail du Mont-Blanc に参加してきました。この大会はフランスのシャモニーを出発してイタリア、スイスそして再びシャモニーに戻ってくる 距離168km 累積標高9700m以上、制限時間46時間というかなり過酷なトレイルランニングの大会である。モンブラン山系を中心に回るそのコースは圧倒的な山の景色とそのハードなコースからトレイルランニング世界最高峰の大会とも呼ばれています。念願叶って、出場することができたのでその報告を兼ねて参戦記を。読みづらい文章、長文なのはお許しください。

 

2014 Ultra-Trail du Mont-Blanc参戦記

どうせやるならいつか最高の舞台に立ってみたい!遅くてもゴールに辿り着く根性さえあれば自分でもその舞台に立つ資格を得られると思い立ったのが2011年のこと。とりあえずどうやったら出場できるのか調べてみると、対象レースを完走しポイントをゲットしなければならないということだった。ポイントも距離や累積標高により1ポイント~4ポイントまであるようだ。必要なのは3レースで7ポイント(2015年からは8ポイントに改定されているようです)。
2012年は、道志村トレイルで2P、おんたけウルトラトレイル100Kで3P、信越五岳110Kで3Pをなんとか完走し必要ポイントをゲット。2013年のエントリーに申し込んでみた。残念ながら抽選に外れてしまい夢は2014年に持越し。
2013年はUTMF(ウルトラトレイルマウントフジ)を45時間で完走。えびの高原エクストリームトレイル、信越五岳などを完走しました。ポイントの有効期限はたしか2年だったので、一応2015年までの資格はゲット。UTMBのいいところは、1回目の抽選に外れた場合、翌年のエントリーでは当選確率が高くなる。僕の名前が2つ抽選箱に入るようなイメージ。そして連続で2回外れちゃった場合は3年目のエントリーでは優先的に出場できるという部分です。この制度こそモチベーションを維持できる一番の理由かもしれません。
そんなこんなで、運良く2度目の抽選で2014UTMBのエントリーに成功!2014年1月のことでした。大会は8/29~8/31、半年近い準備期間があるので冬も雪の上を走りながら練習を積み重ねました。
順調にトレーニングを重ねてきた6月中旬、疲労の蓄積からかギックリ腰になり約1か月満足のいくトレーニングが出来ないまま7月のえびの高原エクストリームトレイル60Kに出場、散々な内容でゴール。UTMBに向け不安だけが募る。レース後のリカバリーを終えて8月に突入。
出発は8/23なのでガッチリトレーニングをできるのは3週間。レース時の荷物の重さを考えて普段から荷物を背負って走る事にしました。ホーマック(北海道のホームセンター、本州でいうところのコメリやカインズホーム的な)で4㎏の砂袋を購入しそれを背負って山を上り下り。重さに耐えられなかったザックを一つ昇天させました。泣
とにかくほぼ毎日、疲労を溜めすぎないように気を付けながら走り、歩きました。8/23に出発してからレースまでは1日も走りませんでした。ジョグすらしていません。

いよいよレース編へ

8/29 17:30
それまでは毎日普通に寝付けていたのに、前日は興奮からかなかなか寝付けませんでした。でもスタート直前までしっかり休息をとり、良い感じでスタート会場に入ることができました。
スタートに合わせるかの様に雨が強くなる中、現地時間17:30 憧れのレースUTMBがスタートした。ゲートをくぐったすぐ横にニューハレの芥田さんが居て、『タッチー絶対に帰って来いよ!』と力強く手を握ってくれた!

『絶対に戻ります!』と言ってゲートを後にした。

スタートは街のど真ん中で、左右にはレストランやスポーツ店などが並ぶメインストリートを走っていく。沿道にはビッシリと応援する人が居て『ブラボー!』『アレ!アレー!』『ジャポーン』『ガンバレー』などの声援が響き渡る。憧れの舞台に立てた感動からか、このメインストリートを過ぎるまではずっと足元がフワフワした不思議な感覚だった。
まずは8km地点のLES HOUCHES(標高1008m)から一つ目の山 Le Delevret(標高1764m) へ756mの上りだ。途中の私設エイドでおにぎりを配っていたのでありがたく頂く。ゆかり(紫蘇のふりかけ)を混ぜたこのおにぎりが今回のレースで一番美味しかった食べ物でした。
スキー場の林道を上りきり、山頂から一つ目の街SAINT-GERVAIS(標高818m)を目指して下っていくものの足元はドロドロで完全に泥んこレースになっていて何度も転びかけた。転ばない様に踏ん張るから余計に疲れてしまう。すってんころりんすることなく、21km最初のエイドステーションSAINT-GERVAIに到着3時間15分ほど経過していた。ドラム隊がズンドコやっていたのでドラム隊の前でレッツダンシング!ドラム隊もノリノリ俺もノリノリなかなか楽しいセッションだった~
エイドではとりあえず食べなきゃって事でパン(固い)、オレンジ(酸っぱい)、を頬張る。温かいスープに手を出すものの、熱っっ!!しょっぱ!!なんじゃこりゃー∑(゚Д゚)殆ど飲めず…二口程飲んでギブアップ水で薄めて飲めばよかった。チーズ、サラミには見向きもせず。
関門閉鎖まで1時間を切っていて、ゆっくりする時間もないので足早に出発。雨はかなり強く降っていた。既にケツまでびしょ濡れだったけど、特に寒くもなかったのでレインパンツは着用せず。次のエイドまでは10km(335mの緩い上り)、が、ここもドロドロで急な登り坂はズルズル滑って全然前に進みません…シューズのソール全体を身体の真下で押し付ける様にしてグリップを効かせる。バックカントリースキーのシール歩行でも大事なコツである。意外な所で役に立つものだ。

どーにか、こーにか、前に進み、2つ目のエイド31km地点のLES CONTAMINS(標高1153m)に到着5時間経過。いやーキツイ…まだ31kmなのにこの脚の張り具合は何なんだ。こんなんじゃ完走なんて難しいんじゃないかと思わせてくれるのに十分な辛さでした。そしてここから標高差1286mの上り区間がスタートするのである。雨も上がっていたのでレインウエアを脱ぎ、TEEシャツの下にACLIAMのWOOLNETを着用し、今回の秘密兵器ともいえるACLIMAのウールの腹巻も着用。お腹の冷えは食事が摂れなくなることに繋がり兼ねず、食べられなくなることはウルトラ系のレースにおいては致命的だと思う。胃腸は比較的強い方だと思ってはいるが、念には念を入れて今回のレースに持ってきたのである。
Norte-Dame de la Gorgeという山岳地帯への入り口に場所に焚火があったので火の前でポールをグルグル回してファイヤーダンス風ダンスを踊る。ゼッケンをみたオジサンが『サトル〜』と呼んでくれ、テンション上げて登りスタート。ここからは足元が泥から岩に変化していて歩き易くなっていてホッとした。それでもキツイことに変わりはないケド。。。

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3つ目のエイド39km地点 LA BALME(標高1703m)に到着6時間45分経過。関門閉鎖まで1時間15分と、ここまでの区間で少しだけ貯金を作ることが出来たがまだまだ時間に余裕はないのでパンとスープを食し足早に出発。
斜度はどんどんキツくなり、Col du bonhommeを通過し山頂のCrolx du bonhomme(標高2439m)では腰の張りが辛くて仕方なかった。振り向くとヘッドライトの明かりがずっと続いていて綺麗だった。

ヘッドライト

登りのペースは上がらないものの、ヤバイと感じていた脚の張りが少し緩くなっていて下りはそこそこ走れる状態になっていた。一緒に参加している知り合いにも会うことが出来て元気も出たので次のエイドを目指して気持ちよく下る。目の前で石に滑った外国人ランナーが思いっきり岩の上に尻餅をついて「ゥオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシッツ!」というトンデモナイ絶叫をあげていた。見ていたこっちが痛くなる程の勢いだった。

4つ目のエイド49km地点 LES CHAPIEUX(標高1554m)に到着9時間程経過。ここはノリの良い音楽が流れていて、ドリンク係のおネーサンもノリノリだった!到着は午前3時過ぎで、関門制限は4:45なので1時間40分ほど余裕があったので20分ほど休憩することにした。とは言ってもそんなにバクバク食べる感じでもなく、靴の中に入った砂を出したり、トイレに行ったりしているとあっという間に20分が過ぎていた。
さて、ここから前半で最も高い山Col de la Seigne(標高2502m)の山頂まで948mの上り区間だ。初めは緩いロードの上りをダラダラと歩く。途中、小さな川を渡ったところから山道へ。上っても上っても遥か上に見えるヘッドライトの群れ。振りかえるとこれまたヘッドライトの群れ。もう少しで山頂かなと思えるところまで来たとき、ふと見上げるとそこには満天の星空が!思わずヘッドライトを消して夜空を見上げました。
「うわ~なまら綺麗じゃん!すげぇ~」と驚いていると、前にいた外国人も「ワォ!ビューティフル」とリアクション。そしてついに標高2502mフランスとイタリアの国境でもある山頂のチェックポイントに到着。12時間19分経過。下ったところにあるエイドを目指して気持ちよく走る。下りは走れる。絶好調。途中、山の向こうが朝焼けで綺麗だったので何度か止まって写真を撮った。
5つ目のエイド64km地点 LAC COMBAL(標高1970m)に到着約13時間経過。時刻は朝6:30だった。パン、スープ、オレンジ、チョコを食べて少し休んで近くにいた日本人の方に写真を撮ってもらう。このエイドを出た直後、陽が昇り始めた時間帯が一番冷え込んで寒かった。今回用意したアームカバーが手の甲部分までカバー出来るタイプで厚手だったこともありとても快適だった。
エイドを出発して平坦な砂利道をジョグする。風もなく道の左右にある池に映る山がとても綺麗で何度も足を止めて写真を撮ってしまうほど、ここは素晴らしい場所だった。

少し歩いたものの靴の中の砂がどうにも煩わしい。砂を出そうと思って靴を脱いだら両足ともソックスの親指のところに穴が空いていた。そこからソックスの中に入っていたようだ。面倒だけどソックスを脱いで砂を出した。すっきりして再び上り開始。しばらく歩くと何となくチェックポイントぽい場所が見えた。標高2417mのArete du Mont-Favreだ。スタートから69km、前半の3つ続く2400m級の山越えの最終地点。日本人スタッフの方が「目の前に見えるのがモンブランですよ~写真を撮るといいですよ」と、それまでそこに鎮座するのがモンブランだと気付いていなかった。。。絶景ポイントという事もあり、写真を撮るためのスタッフも配置されているとはさすがUTMBである。外国人スタッフにお願いして動画を撮ってもらう。ここはダンスだ!モンテビアンコ!モンブラン!最高だぜーーー!ヘリまで飛んできて空撮してるぜ!笑

イタリア側から見たモンブランは岩っぽくて荒々しいけど、薄くのっている雪がガトーショコラにかかっている粉砂糖のようで一流パティシエが作ったスイーツの様に美しくとても美味しそうでした。

モンテビアンコ

さぁ、クールマイユールまで標高差1240mの下りだ!意気揚々と下り始める。面白いように足が動く、ランナーズハイだなぁと感じながらクールマイユールまで駆け降りた。途中のウォーターエイドでは合唱団の歌声にウットリ。そこからクールマイユールまではオジサンに喰らい付かれながらすっ飛ばして下った。ロードに出たときに後ろに付いていたオジサンに話しかけられ「いいペースで走ってるな。幾つだい?」

えっと「38歳です」
「俺は54だ!ガハハハ」
と陽気なイタリア人おじさんとクールマイユールまで走った。恐るべし54歳だ。
6つ目のエイド77km地点、COURMAYEUR(標高1195m)に到着。77km地点16時間経過。UTMBで最大のエイドで、着替えなどを入れたドロップバッグが届いている。ここまでかなりタイムを稼いだので大休止。近くにあるベンチに腰掛け穴の空いた靴下を脱ぐと、あれま!右足の中指と薬指の間にでっかい水ぶくれができていた。ハサミで潰して絆創膏を貼ってからPRO-TECのToe-Capを被せておいた。左足の同じ場所にも水ぶくれが出来そうだったので予防の為に被せておいた。これ、今回初めて使ったけど最高だった!なんなら最初から被せてもよかったかも。ワセリンもしっかり塗っていたのに水ぶくれできてるもんなー。消費した分のジェルなどを補充して、二階へ移動して食事にありつく。ペンネを一皿、オレンジ、スープ、パンを食べた。ペンネに粉チーズをタップリかけられたが、これはちょっとキツかった。チーズ要らないって言えばよかった。。。
モタモタしてしまい、出発したのは1時間と少し過ぎたころだった。休み過ぎた。
クールマイユールを出てロードを少し走ったら結構な急登。クールマイユールまでの飛ばし過ぎがここから襲いかかってくる。全然足が動かない。。。あ、ヤバイかも。と思った時は既に手遅れ。ここから30km近く辛い地獄の時間が続くのであった。
REFUGE BERTONE(標高1979m)から次のREFUGE BONATTI(標高2015m)は小さなアップダウンをひたすら繰り返して行くのである、下りはまだ少し足は動くものの緩い上り、平らな場所では走れずほとんど歩く。太陽は本領を発揮し暑さに弱い僕を容赦なく照りつける。気温はそれほどではないと思うけど、標高が高いだけあって陽射しは強い!暑さと疲れといつまで続くのか分からないアップダウンに僕の気持ちはすっかり萎えていました。ここも素晴らしい景色だったのが記憶の片隅にあるけどあんまり覚えていません。

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どうにか7つ目のエイド95㎞地点、イタリア最終地点ARNUVA(標高1786m)に到着21時間40分経過。パンとスープを食しすぐに出発。UTMBコース中、最高到達点2525m、世界一美しい谷と呼ばれるフェレの谷を有するGrand col Ferretを目指すのであります。腰、足の付け根付近はもう終わっちゃった感満載でしたけど、知り合いにも会えて元気をもらってここからひと踏ん張り!でもそんな元気はすぐになくなり、登りでも足に力が入らないような感覚がしてきた。UTMBの特徴としては森の中というよりも高山植物の生えるようないわゆる森林限界を歩くため遠くまで見渡せてしまうので、実際ここの上りでも遥か遠くの稜線を歩く選手の群れが下から見えていて、「あそこまで登らなきゃなんないんだ。。。」と何度か気が遠くなったのを覚えています。何度も振り返り、フェレの谷を眺めて気を紛らわし少しずつ前進。よ、ようやく山頂っぽいところが見えてきた。。やっと着いたぁぁ。ついにスイスに突入したのでありました。次のエイドまでは標高差925m約10㎞の下り。ここの下り区間も素晴らしく気持ちの良いコースなのですが、踏ん張れない足にはただの苦行区間なのです。MTBで楽しそうに遊んでる若者たちを横目に進みます。個人的にはここの区間が最も気持ち的、身体的に辛かった区間です。もう嫌!ってなるほどの細かいアップダウン、いつまでたっても現れないエイド、カウベルが鳴り響くのでエイドが近いかと思ったら牛の群れ。。。もうエイドだろうと思っていた時、最後に現れた上り坂を見たときは失笑しました。人間最後は笑っちゃうんだなーって。

フェレの谷
散々に打ちのめされてようやく8つ目のエイド108㎞地点 LA FOULY(標高1600m)に到着。25時間45分経過。時刻は19:17。気が付けばスタートから丸一日経過していた。そしてこれから2回目の夜に突入する。ヘッドライトを用意して、足をほぐし、パンとスープ、バナナなどを食べて出発!しようと思ったけど、ちょっとだけ便意があったのでここはすかさずトイレへ。が、トイレが一つしかなく前に3人待っている状態だが、ここは一応並んでおくか。10分近く待たされようやくスッキリ!ついでにワセリンも塗っておいた。20分ほど経過した19:39出発。ヘッドライトを点けて森の中を進み、ダラダラとジョグをする。一番辛いと思われる区間を乗り越えたからかここからまた少しだけ足が動くようになった。小さな村に差し掛かったとき、コーヒー、紅茶、水、チョコなどを振舞っている民家があった。なんと嬉しい!この私設エイドにはマジで元気付けられた!コーヒーと紅茶を飲んで先へと急ぐ。住宅地を抜け、山道へ。ここを上ったところに次のエイドCHAMPEX-LAXがあるかと思うと少し元気が出てきた。前後を外国人に挟まれ7人くらいの小さな集団のちょうど真ん中。総じていえるのは外国人は上りが速い。足が長いから?なんなのかとにかく速い。追い越してもらおうかと考えたけど、一人だとズルズルペースが落ちていきそうだったし、早くエイドについて休憩したいという思いもあり思い切ってこの速いペースに乗ることにした。
コバンザメ作戦が功を奏し、気が付いたら9つ目のエイド122㎞地点、CHAMPEX-LAC(標高1465m)に到着。29時間16分経過。時刻は22時48分。ここの関門閉鎖は午前1時30分なので、おおよそ2時間30分ほどの余裕がある。ペンネ(粉チーズは要らないと言った)、オレンジ(ここのオレンジが一番甘くて美味しかったのでスゲー食べた)、スープ、コーラなど食べまくって飲みまくった。終盤の一番大きなエイドという事もあり、スタッフも美人揃いだったのでついつい食べ過ぎた感は否めない。で、少し仮眠しようかと仮眠スペースへ行ったけど満床で順番待ち的な感じになっていたので仮眠を諦める。なんだよーちくしょう。
参ったなぁと思案に暮れていると、僕より先行していた友人が仮眠から起きてきて椅子に座っていた。聞くと「ここで辞めようと思う」と。
札幌から参加している朝ランのメンバーのアマちゃんもエイドに到着し三人で休憩する。なんとか友人に頑張ってもらおうと思ったけど、ここから次のエイドまでは17㎞もあり、時間も真夜中。動けなくなった時のリスクも大きい事から無理に連れて行くこともできず、胃薬を渡して午前0時、僕とアマちゃんは残る三つの山越えに向けてスタート。空には天の川までバッチリ見えるほどの満天の星空が。テンションを上げて山岳地帯へ突入。
地図上では標高419mの上り区間だが、なんとまぁトラバース気味の平行移動が多い事か・・・稜線を超えるとまたまた遠くにヘッドライトの明かりが見える。後半部分は偽ピークが多く精神的に本当に疲れました。La Giete(標高1884m)のチェックポイントを過ぎ(34時間経過、時刻は3:34)、チェックポイントにいるオネーサンと一緒に踊って少し眠気を覚ます。

睡魔に襲われつつ10番目のエイド139km地点、TRIENT(標高1303m)に到着。35時間経過。時刻は4時41分。眠気がやばかったので、エイドのベンチで少し横になったけど全くスッキリしない。スープとコーヒーを飲んで、パンとサラミを食べて5時21分出発。
標高2034mのCatogneを目指して歩くけど、睡魔がヤバイ・・・そしてついに幻覚デビューをしました。綺麗な絵画が見えたので「あぁ綺麗な絵だなぁ」と、近づいてよーく見ると石だったり木の皮だったり。おぉ!これが幻覚ってやつか!眠気覚ましに歯磨きしたり、フリスク食べたり、魔法の合言葉「うんこちんちん」も唱えたけど、全く効果なし!フラフラ歩きながら時々左側に大きくフワッと一歩踏み出して、完全に居眠り歩行状態。右は崖なのですが、本能なのか崖側にはふらつくことなく必ず山側へふらついていたと後ろを歩いていた知り合いから後で聞いた。夢遊病状態だったので、ここの上り区間はほとんど記憶がありません・・・チェックポイントを過ぎたのが38時間程、時刻は7時24分。空も明るくなり何とか2回目の夜を乗りきった。
最終エイド149km地点、VALLORCINE(標高1270m)到着。39時間10分経過。時刻は8時40分。ここに来る下り区間、かなりお腹が減っていたのでパンにサラミを挟んだものを三つほど食べた。スープ、コーヒーを飲んでしばし休息。周りには結構日本人ランナーが多くいた。途中のエイドで何度も顔を合わせた方も多く、「あと少しですね。頑張りましょう」と声を掛け合った。
20分ほど休憩し、午前9:04最後の山越えに向けてスタート。時間はよっぽどの事がない限り大丈夫そうだ。でも油断禁物、早歩きで進みました。やはり最後の山とあってか、不思議と身体に力がみなぎっていた。どうしてこれを途中で発揮できないのか不思議で仕方ないがまぁ人間なんてそんなもんだろう。とても雰囲気のいい山だった。向こうからは休日を楽しむハイカーやトレイルランナーが走ってくる。徐々にシャモニーに近づいているのだと感じた。

最後の山 LA TETE AUX VENTS(標高2127m)に上っている最中は雲の中で景色は見えなかったけど、山頂のチェックポイントに近づくとエギーユ デュ シャルドネ、エギーユ ヴェルト、といったモンブラン山系のお出迎えでした!そして稜線の向こうにはシャモニーの街が!あと少し、いよいよあと少しでこの長い旅も終わり。ここの景色は本当に素敵で写真を撮っていたら思いのほか時間をロスしていました。
最終ウォーターエイドLA FLEGERE(標高1863m)に到着。43時間16分経過。ここで15分ほど休んで出発することに。途中、ずっと食べたいと思っていたポテチがあったので、むさぼるように食べたらこのあと少し気持ち悪くなった。あとはシャモニーまで8㎞の道を標高差828mの下りを残すのみ、トレイルもようやくフカフカした土になり気持ちよく早歩きで進むのだが、石や木の根っこにつま先をぶつけまくった。自分が頭の中で思っているより実際は足が上がっていない状態。気持ちと身体がリンクしてない状態。これが本当にツライ、マジで痛いんです。
林道も終わり、いよいよシャモニーの街に入る直前、目の前に勢いよく流れる水場を発見!!!!俺にもっと走力があって時間に余裕があればドボンしながらこのレースを楽しめるのに・・・ドボンする余裕のない事がどれだけ辛かったことか。が、今、僕の目の前にはドボンではないがジャブジャブできるポイントがある。時間も大丈夫だ。44時間以上着続けた服は、ほんのり酸っぱい、かぐわしい香りを漂わせている。迷うことは無かった、ザックを下し前進で水を浴びた。氷河の雪解け水は火照った筋肉をキンキンにアイシングしてくれて、ここまでの疲れを吹っ飛ばしてくれるには十分だった。続々と下りてくるランナー達が笑顔で通り過ぎていく、近くで見ていたおじちゃんは「Good Job!!」と笑っていた。
ゴール用に背負っていたTRAIL EZOのTEEシャツに着替えていよいよシャモニーの街へ入っていく。道を歩く多くの人が祝福してくれる。小さな子供から老人までハイタッチ&ダンスしながらゴールゲートへと向かった。なんかもう頭が真っ白!何も考えられなかったです。ゴールゲート前、なんちゃってカズダンスでフィニッシュ!

168.7㎞ 累積標高9,796m 45時間9分15秒

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UTMBは今まで出場した中で間違いなく最高の景色と最高の辛さだったと思う。憧れ続けたレースに出場そして怪我もなく無事に完走できたことが一番だ。足と腰が痛くて痛くてどうしようもない時は本気でリタイアしようと頭をよぎったけど、この辛い時間を乗り切ればまた復活できるハズ!と根拠のない気持ちだけで歩き続けました。結果、辛い、楽しい、辛い、楽しい、という波が交互にやってきてなんとか最後までたどり着けた。キツイレースになればなるほど、レース中に起こる大小様々な出来事(靴擦れ、筋肉痛、道具の故障、食事が摂れない等)をどうやって乗り越えていけるかが168㎞という長距離レースを完走する大きなポイントだと思う。

 

 

 

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