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COLUMN

「寒い日に走るとこんなに良いことがあるよ」と自分に言い聞かせるためのエビデンス

2026.01.25
GO KAKUTANI

アメリカ・カリフォルニア州に在住し、同州の高校でクロスカントリー走部のヘッドコーチを務める角谷剛氏による連載コラム。今回は、冬の寒い日にランニングに出かけると受けられる恩恵を、エビデンスを交えてご紹介します。「今日は寒くてイヤだなー」と思うときは、ぜひこちらをご一読ください。

寒くなって、朝のジョギングに出るのがつらい季節がやってきましたね。なんて始めると、「お前は暖かい南カリフォルニアに住んでいるじゃないか。贅沢を言うな」とお叱りを受けるかもしれませんが、それでも一応は冬でして、寒いことは寒いのです。雪は降りませんし、池や川に氷も張りませんが、朝は吐いた息が白くなる程度には気温は下がります。

冬の朝に玄関先でランニングシューズの紐を結ぶとき、「寒そうだなあ。今日は走るのやめようかな」と思ってしまうことはしょっちゅうです。同じ思いをしているランナーは多いのではないでしょうか。

そんなとき、皆さんはどうしますか? 「甘ったれるな。根性出せ」と自分を叱咤することもひとつの方法ですけど、やはり人間、嫌々何かをやり続けることには長い目で見ると無理が生じます。精神力はけっして無限ではありません。

それよりむしろ、「寒いけど、今日走っておくと、こんなに良いことがあるよ」と自分に言い聞かせるための材料をストックしておく方法も有効ではないでしょうか。寒さを我慢して走るのではなく、寒いときに走ることによって得られるものも、実はけっこうあるのだということをお伝えしたいと思います。

「寒い日に走るとこんなに良いことがあるよ」と自分に言い聞かせるためのエビデンス

代謝が上がる ― 寒さが体を「燃焼モード」にする。

まず知っておきたいのが、寒い環境に体がさらされると代謝が高まること。これは体が体温を維持するためにエネルギーを多く使うからです。

例えば、アメリカ国立衛生研究所(NIH)がまとめた研究(*1)では、人が寒い環境に長くいると、体内の“褐色脂肪(brown fat)”の量と活動が増え、それに伴って代謝が向上することが示されています。

褐色脂肪は熱を生み出す脂肪です。単にエネルギーを貯蔵するだけではなく、熱を産生することでカロリー消費に寄与する組織として知られています。別の研究(*2)では、褐色脂肪を多く持つ人は、そうでない人より約15%多くカロリーを消費することが示されています。

つまり、温かい家から寒い屋外に一歩足を踏み出すだけで、代謝が活性化され、体は“燃焼モード”になるというわけです。

寒いなかを走るとダイエット効果が増加する。

寒い環境では、ただじっとしていても、体温維持のためにエネルギーが消費されるというわけですが、そのうえ走ると体はどのように反応するでしょうか?

結論から申し上げますと、寒い日に走ると痩せます。脂肪の燃焼効率が高まった状態で運動をすることで、消費するカロリーも自然に増えるからです。

もちろん「寒ければ寒いほどダイエットに良い」という単純な話ではありません。いくら脂肪を余分に燃やしても、その後で多く飲み食いしてしまっては台無しですし、そもそも極端に寒いといつもと同じ距離や時間を走ることは難しくなるからです。

それでも適度な寒さの中でのランニングは、脂肪燃焼を後押ししてくれることは確かです。痩せたいから走るというダイエット志向のランナーは、「う~ 寒い」と思うくらいの日はむしろチャンスなのです。

寒さは心肺機能も刺激する。

寒い空気は呼吸活動にも負荷を与えます。浅くなりがちな呼吸を意識して深くすることで、心肺機能を高めることにも繋がります。

ある研究(*3)では、寒い環境でのランニングは心肺機能の持久力を高め、酸素利用効率を向上させると述べています。体が体温を保つためにより大量の酸素を必要とし、それを効率的に体内へ取り組む機能が鍛えられるという理屈です。

もちろん、これについても良き面と悪い面があります。冬になると咳が出る人が増えることでも分かりますが、冷たく乾燥した空気は、必ずしも健康面でポジティブな効果だけがあるわけではないのです。

極端な寒さはやはり避けるべきですし、人によってはフェイスマスクなどで鼻と口の保温・湿度調整をするべきときもあるでしょう。

メンタルヘルスへの効果。

寒い日に走ることの効果は身体的な範疇に収まらず、精神面にもポジティブに働くことがあります。

冬になると、日照時間の減少や気温低下で気分が落ち込みやすい人がいます。これは「冬季うつ」と呼ばれる季節性情動障害(SAD)の一部として知られています。

寒い日に外に出ること自体が、太陽光を浴びてエンドルフィン(幸福ホルモン)を分泌させ、気分を高める効果につながります。さらに、それと運動を組み合わせることで、メンタルヘルスに良い効果が期待できるのです。

ある研究(*4)では、季節・天候変化が、うつ症状と身体活動に与える影響をモバイル健康データで解析しました。その結果、 気温や日照時間がうつ症状(PHQ-8スコア)に影響し、それが身体活動量(ステップ数)にも関係することがわかりました。 寒い季節や日照不足などの気象要因は、うつ症状を強めて活動量を下げる可能性があり、逆に身体活動がメンタルにポジティブな影響を与える可能性を指摘しています。

私自身も冬のランの途中で見える澄んだ青空や、走り終えた後のすっきり感には、何度も助けられてきたように思います。

寒い日に走り出すときのアドバイス。

「寒い日に走るとこんなに良いことがあるよ」と自分に言い聞かせるためのエビデンス

寒い日に走ると良いこともある。私がでっち上げているのではなく、ちゃんと科学的な研究によるエビデンスがあることを上で述べてきました。「寒さ」が代謝を活発にすること(*1)、カロリー消費を促進すること(*2)、心肺機能を刺激すること(*3)、そしてメンタル面のリフレッシュ効果もある(*4)ことが示唆されています。

今朝は寒いな~と感じたら、「走るのはつらいけど頑張ろう」ではなく、「こんな日に走れるのはラッキーだ」と思考を転換してみようではないですか。

むろん、それなりの対策は必要になります。防寒に気をつけることは言うまでもありませんが、足元にも注意を向けてください。路面が完全に凍っていなくても、滑りやすくなっているときがあります。

走ると体は温まりますが、それには時間がかかります。寒いときは筋肉が縮こまっていますので尚更です。もし可能であれば、屋外に出る前に室内でウォームアップをするのもひとつの方法です。簡単な体操をしてもよいですし、私は走る前に熱いシャワーを浴びることもあります。

朝早くから家の中でバタバタしないで、と言われてしまう人は、仕方ありません。ウォーキングから始めるとか、走り始めのペースは普段より遅めにすることをオススメします。

参考文献:
1. Cool Temperature Alters Human Fat and Metabolism.
https://stagetestdomain3.nih.gov/news-events/nih-research-matters/cool-temperature-alters-human-fat-metabolism

2. People with brown fat may burn 15 percent more calories.
https://www.endocrine.org/news-and-advocacy/news-room/2020/people-with-brown-fat-may-burn-15-percent-more-calories

3. Exercise in cold: Friend than foe to cardiovascular health.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0024320523005581

4. Assessing seasonal and weather effects on depression and physical activity.
https://www.nature.com/articles/s44184-025-00125-x

Go Kakutani
角谷 剛
アメリカ・カリフォルニア州在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持ち、現在はカニリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務めるほか、同州ラグナヒルズ高校で野球部コーチを兼任。また、カリフォルア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に電子書籍『ランニングと科学を斜め読みする: 走りながら学ぶ 学びながら走る』がある。https://www.amazon.co.jp/dp/B08Y7XMD9B 公式Facebook:https://www.facebook.com/WriterKakutani
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