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ランニングを「脳トレ」化する技術。

2019.02.15
Daisuke Watanabe
渡邊大介
1982年生まれ。サイバーエージェント社にて広告企画、新規事業、人事責任者を経て、リクルートとの合弁会社「ヒューマンキャピタルテクノロジー」起ち上げ、経営に参画。スモーカー兼ワーカホリックから突然ランナーに転身。仕事の傍らロングディスタンスをメインとしたトレイルランニングに没頭し、年間20以上のレースに参戦。仕事とスポーツ活動の両立を目指すビジネスアスリートチーム「DOUBLE SURVIVOR(ダブサバ)」部長。フルマラソンベストは2時間47分(勝田全国マラソン2019)。
前回アイデア製造機としての帰宅ランをテーマに色々と述べてみました。要約すれば、アイデアを生み出すことに対して現代ビジネスパーソンが足りていないのは、思考の「集中」と「持続」であり、その二つを同時に補ってくれる夢のような装置が「帰宅ラン」である、というお話でした。
 
しかし、帰宅ランを含む、いわゆるLSD(Long Slow Distance)と言われるような「長時間のランニング」は「アイデア製造機」に留まるわけではありません。
 
そもそも新しいアイデアを生み出すにあたり、製造機=脳みそ自体のスペックを高める必要があるわけですが、長時間のランニングはまさに「脳トレ」ということができると思います。
 
従いまして、今回のタイトルは「ランニングを『脳トレ』化する技術」と題して展開していきたいと思います。
 
脳トレ、と聞くと難解なパズルを解いたり、百マス計算をしたり、、、みたいなことが思い浮かぶ(浮かびますよね?)と思うのですが、これらは別途空き時間を作らねばならず、効果実感がなかなか得にくいため長続きしません。僕もこの辺りは興味があるので毎朝10分くらい3ヶ月くらいやったことがあったのですが、特段効果を実感できず、習慣から外してしまいました。
 
ランニングもそうですが、継続は力なり、であり、あらゆるトレーニングやサプリメントなどは「続けられるか」という視点が大切。そういう意味ですでにJOGやLSDが習慣になっている人は、その習慣にこれからご紹介する方法を上乗せするだけで実施が可能なので、継続可能性が高く、サステナブルな施策と言えるでしょう。
 
さて、それはなんなのか。少しもったいつけてご紹介すると、LSDを「脳トレ」の道場に変えてくれるツールは二つあります。
 
一つめはYouTube Premium、そして二つめはGLOBIS知見録、です。
 
YouTube Premiumにはいくつか優れた機能があるのですが、ここで取り上げるのは「ローカル再生」「バックグラウンド再生」です。このアプリに課金をすると、youtubeのあらゆる動画がダウンロードでき、バックグラウンド再生が可能となります。(ソフトバンクのウルトラギガモンスターと組み合わせるとさらに最強です)
 
その環境で、何をバックグラウンド再生するのか。それはグロービスが主催し、オープンに公開してくれている「GLOBIS知見録」の各種ディスカッションです。これがもう本当に面白い。
 
本を読み上げてくれるオーディオブックも良いのですが(これはまた別で書きます)、著者ではないプロのナレーターが語るオーディオブックはなかなか「思考の格闘」がしづらく、「脳トレ」には使いづらい。(記憶とかには向いているので別途)
 
そう、鍛えるにはやはり格闘が必要なんです。何事もそうかもしれませんね。フリースタイルバトルはヒップホップにおいてあまり重要でないかもしれませんが、言葉の瞬発力を鍛えまくってくれると思うし、そもそも議論というのは「思考の格闘技」です。欧米の教育がディスカッションを幼少期から取り入れているのは比較的知られていることですが、兎にも角にもアイデア製造機としての思考を鍛えるためにランニングを活用するためには、走りながら「議論」という思考のバトルに参加する必要があるわけです。
 
GLOBIS知見録の内容は忖度感がほとんどなく、それぞれがそれぞれの立場できちんと主張、時にはバトルしており、「自分はどの人の支持か?」「自分ならどう切り返すか?」を考えながら「格闘に参加」するのは本当に頭が鍛えられます。(格闘といっても想像上の格闘ですよ?)
 
 
いくつかサンプルを。僕が一番好きなのはこのセッションです。
 

リーダーシップについての議論なのに、東大の池上教授がそのリーダーという存在自体を否定する。「まず、リーダーシップっていらないですよね」と入り、会場をざわつかせます。続けて「中心を抜く、ということが大切です、『こいつだから信用できる』みたいなことがないようにしていかなければならない」と続けます。
 
その真意は「大切なのはそいつ(リーダー)が信用できるかどうかじゃなくて、政策やアイデアそのもの。その政策やアイデアそのものの評価が『そいつが信用できるか否か』によって歪められるのはおかしい。多様性が担保されるのは世界が計算式で証明されるからであって、そいつ(リーダー)のキャラクターによって左右されてはならない。リーダーが存在し、中心になってしまうと偏りができるし、弱点を作ってしまう。」みたいな主張を展開し、それがまた説得力があります(この教授はたぶん賢すぎて議論が飛んでしまうところがあり少しもったいない)。
 
そこに対する小泉進次郎の返しも秀逸です。彼はリーダーシップは必要であり、さまざまな型がある、というようなスタンスを取っていたのですが、教授のこのやり取りに対して「一部賛同」し、一方で議論を政治家に限定して進めます。本当にうまい。
 
まず最初に池上教授の話を「一人のリーダーに偏ることのリスク」と言い換えから入り、異なる主張、利害関係がある中で、大切なのは「一貫性」であり、最後に「しょうがない、お前になら任せる」と言わせるのはまさにリーダーシップそのもの。リーダーシップは政治の世界においてはやはり重要である。というような論を展開し、あっぱれ!なわけです。(ちなみに小泉さんの序盤の話は若干滑ってる感がある)
 
僕が議論につけ加わるのであれば、正しい政策、というものは置かれている環境や立場によって受け取り方が違うため、その利害の調整作用が必要であり、その利害を「滅殺」とか「買収」とかで解決するのではなく、より高次元のビジョンなどで解決するのがリーダーなんだろうなぁ、みたいな思考が出てくるんだと思うんです、例えば。こんな論理の甘い主張をしたら会場からぶち殺されそうですが、そんな思考を回しながら走っているといつのまにか数時間が立っているのです。
 
格闘に参加しても、ぜんぜん勝てないこともあるわけですが、単純にインプットとしても優れているコンテンツであるため、本当にオススメです。そしてまた、格闘の中で新しいアイデアをひらめくこともしばしば。例えが良くないですが、戦争が技術革新を悲しくも生み出すように、議論は新しいアイデアを生み出します。
 
ぜひ長いランニングの時間を、思考の「脳トレ」の場に。
 
刺激的な議論を他にもいくつかご紹介して、今回は終わりにしたいと思います。
 

 
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